アラクサラが発表した
新スイッチ「AX2530S」の中身
今後の社内LANは信頼性がカギ
アラクサラネットワークスがINTEROP TOKYO 2010に出展する注目製品の1つは、「スマートリンクスイッチ」とも呼べるディストリビューションスイッチ「AX2530S」だ。同社はこれを今年中に発売する。
アラクサラネットワークスがここ数年、特にこだわっているのはネットワークの信頼性向上だ。企業では、全社的なシステム統合の進行により、社内ネットワーク全体の信頼性や可用性の確保が重要なテーマとして浮上している。つまり企業では全社的に、社内ネットワークのコアを経由して社内データセンターに置かれたサーバ群を利用するようになってきたため、社内ネットワーク全体がいつでも高速に利用できなければならなくなっている。今後社外クラウドサービスの併用が進めば、さらに信頼性と可用性確保の必要性が高まっていくことが予想できる。システム統合や社外クラウドサービスの利用の広がりは、同時に社内ネットワークのフラット化も促進している。現在、新たに構築される社内LANの主流はレイヤ2ネットワークだ。
レイヤ2ネットワークの信頼性向上に当たって重要なテーマは、スパニングツリープロトコル(Spanning Tree Protocol:STP)からの解放だ。STPは、スイッチを意図的にループ状に構成しておき、あるスイッチの特定ポートを通常はブロックしておくことで通信のループが発生することを回避しておいて、障害発生時にはブロックを解除するという仕組みだ。これによって、1台のスイッチや接続に障害が発生した場合にも、迂回路を確保してネットワークの継続的利用を実現する。
STPは、障害対策のためのプロトコルとして長年ハブやスイッチに実装されて使われてきたが、安定的なネットワークを構築するために十分とはいえないことが知られている。障害発生からネットワーク構成(トポロジ)の変更による復旧まで数十秒はかかり、その間は通信ができなくなる。停電などの影響で不要な切り替えが起こり、しかもSTPのやり取りがうまくいかずにネットワークが停止してしまう現象も発生している。
STPからの解放を目指してアラクサラがまず行ったのは、LANのコア部分におけるフォールト・トレラント・スイッチ(FTスイッチ)「AX6700S」「AX6600S」「AX6300S」の投入と、FTスイッチから下流スイッチへのネットワークインターフェイスまたぎのリンクアグリゲーション(複数の回線を束ねて1本のように使う)接続だ。FTスイッチはハードウェア的に二重化されたスイッチであり、それ自体が従来のようにVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)などの冗長プロトコルで2台のスイッチを結ぶよりもシンプルに、1台でネットワークの信頼性を確保できる。このFTスイッチを下流のレイヤ2スイッチとリンクアグリゲーション接続することで、STPを使わずに冗長的なネットワークが組める。
ただし、これだけでは大規模なネットワークへの対応が十分とはいえない。上記のような二段構成では、接続できる端末数は限られてしまう。もちろんFTスイッチをもう一段挟み、その下にエッジスイッチとしてのレイヤ2スイッチを接続すればポート数を増やすことが可能だが、コストは高くなってしまう。
そこで、コスト効率の高い大規模な高信頼性ネットワーク構築のために、アラクサラが今回投入するのがディストリビューションスイッチAX2530Sだ。
大規模ネットワークの全体的な信頼性を向上
AX2530Sはコアスイッチとエッジスイッチの間に配置する。2台をペアで用い、下流のエッジスイッチ2台とたすきがけに接続して、リンクアグリゲーションを用いる。エッジスイッチとの間でSTPを用いるのではなく、AX2530Sがスプリットマルチリンク(Split Multi Link:SML)という仕組みを持つことでループを回避し、1台に障害が起こっても他方により接続を維持できる。
SMLは、パケット転送情報を2台のスイッチ間で相互に交換する仕組みだ。これにより、1台のスイッチであるかのようにふるまう。平常時には、この2台から下流の各スイッチへの接続が装置またぎのリンクアグリゲーションによってまとめられるため、帯域幅は2倍になる。つまり、スタンバイ方式のような回線の無駄は発生しない。
SMLはレイヤ2の回線冗長に特化したプロトコルで、2台のスイッチは相互にリンクアグリゲーション情報を交換しているだけなので、STPなどの冗長プロトコルに比べて仕組みと動作がシンプルなことが大きな特徴だ。このため、障害発生時にもすばやく切り替えができ、安定した通信を継続できる。また、それぞれのスイッチはもう一方を意識することなく動作するので、バージョンアップの作業も、他方との接続をまったく考えることなく実施できる。ネットワークを止めることなく、一方のスイッチに新バージョンのソフトウェアを導入してリブートし、このスイッチが再び動作し始めたら、いつでも他方のスイッチに対するバージョンアップ作業に取り掛かれる。
シンプルさはコスト効率にも直結する。大規模ネットワークで、ディストリビューション層にそれなりの台数のスイッチが必要とされる場合でも、SMLスイッチであるAX2530Sなら安価に信頼性の高い構成が組める。競合他社ではスタック型のスイッチでこうした機能を提供しようとしている例があるが、レイヤ3対応の製品が必要とされることが多い。AX2530Sは、そのようなレイヤ3のスタック型スイッチに比べても安い。
AX2530Sは、環境性能の点でも、新たな世代のスイッチだ。まずこの製品は、既存製品「AX1240S」に搭載された「ダイナミック省電力機能」を搭載している。具体的には、リンクダウンしているポートを自動的に待機状態にする「未使用ポート省電力機能」、そして装置全体を待機状態にする「装置スリープ機能」がある。装置スリープ機能はスケジュール設定によって待機状態にするというもの。一方AX2350Sではこの機能が進化し、指定したポートのリンクアップ検知、あるいはWake on LANパケットの受信などによっても、待機状態からスケジュール外の復帰ができるようになった。 このスイッチは、ギガビットスイッチでありながら24ポート版は空冷ファンを持たず、48ポート版も準ファンレス、つまり筐体内温度が一定値以上に上昇した場合にのみ、ファンが動作する。この点でも消費電力を大幅に抑えている。
Interopで「STPフリー・ネットワーク」を体感してほしい
FTスイッチと、今回投入されるAX2530Sの組み合わせにより、アラクサラは企業の社内ネットワーク全体をSTPの呪縛から完全に解き放ち、機動性、信頼性、効率性を確保することができる。なによりもこれらをシンプルな仕組みで実現すること、これがクラウド対応の次世代ネットワークインフラの条件だ。
アラクサラは、2010年6月8日から12日にかけて、幕張メッセで開催される「Interop Tokyo 2010」で、この次世代ネットワークインフラ構築製品を紹介する。ぜひ、Interopでは、アラクサラのブース(4M33)にお立ち寄りになり、ご自身の目で確認していただきたい。
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提供:アラクサラネットワークス株式会社
アイティメディア 営業企画
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2010年6月30日