IT化が進み、業務アプリケーションをネットワーク経由で利用するのがトレンドとなっている。しかし、WANを経由するアプリケーション利用はLANに比べて遅いのが現状だ。今日の日本企業が抱えている課題は何なのか、今後、どのような技術が求められているのか。日本市場でWAN高速化/最適化製品を展開する代表的なベンダ4社に率直な意見を聞いた。
座談会参加者(50音順) | |
伊藤 信氏 | リバーベッドテクノロジー株式会社 マーケティングマネージャー |
中村 真氏 | ジュニパーネットワークス株式会社 マーケティング部 ソリューションマーケティング マネージャー |
村田 眞人氏 | ブルーコートシステムズ株式会社 SEディレクター |
山村 剛久氏 | シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 マーケティング本部 ネットワークプロダクト担当部長 |
三木 泉(司会) | アイティメディア株式会社 @IT編集長 |
左から) 伊藤氏、村田氏、三木(司会)、中村氏、山村氏 |
三木:WANの高速化は、古くはチューニングが行われ、1990年代後半には帯域管理という手法が導入されました。現在、ユーザーはどのような点で課題を抱えているのでしょうか。
伊藤 信氏 |
伊藤氏:ユーザーからは「WAN内を通るプロトコルが遅い」という声が寄せられます。具体的には業務で利用しているアプリケーションやファイル共有、電子メールなどです。ベンダ各社はHTTPのインターフェイスを利用することで通信を高速化させていますが、それ以外のプロトコルを使ったアプリケーションへの対応がまだ十分とはいえないのが現状です。
中村氏:ユーザーから「遅い」といわれますが、原因を調べてみると遅延だったり、アプリケーションそのものの振る舞いが遅かったりとさまざまなのです。例えば、海外との通信は遅延が顕著に出ます。電子メールに添付ファイルを付けると配送が遅くなったり、会社のポータルサイトを見るだけなのに何分もかかったりというケースなどです。しかし、回線を増強しても遅延が解消されるわけではありません。その点にユーザーが気付いてきたので、この2〜3年の間でWANの高速化を求める声が高まってきています。
村田氏:帯域管理は、回線が細い時代には高い効果を得られました。しかし、回線が太くなっても同じような効果があるかといわれると、実はそうでもないのです。なぜなら、トラフィックを圧縮しても往復のプロトコルは変わらないので、遅延の影響を受けることになるからです。
山村 剛久氏 |
山村氏:これは、昔からあった課題です。しかし、最近になって特に問題が顕在化しているのは、ファイルを1カ所にまとめたり、生産拠点が分散して設計図などのデータをやり取りしたりすることが増えたことが背景にあります。また、サーバの集約化は確実に進んでいます。
伊藤氏:セキュリティや内部統制の観点から、企業の上層部が主導して統合が進められています。しかし、社内で共有する「データ」は共有しやすいのですが、DNSやDHCPのような基幹系アプリケーションの統合は難しいといわれています。今後はそれを解決していくことが課題でしょう。
三木:HTTPを使うWebであれば、それほど問題となっていないのですか。
山村氏:一般的なWebブラウザであれば、クライアント側に圧縮を解く機能が備わっているため問題が少ないように思います。ユーザーが主にWebベースなのか、それともCIFSなどのファイル共有サービスを使っているのかによってフィットするWAN高速化製品が異なるでしょう。
村田氏:最近のアプリケーションはWindows系プロトコル+Webが圧倒的に多くなっています。HTTPというプロトコルを使って、ユーザー自身がアプリケーションを作ることもあります。一般的には、HTTPはおしゃべりが少なく、CIFSはたくさんしゃべるといわれますが、ユーザーのアプリケーションの作り方によっては必ずしもこれに当てはまらないアプリケーションが登場しています。
三木:WANの最適化を行い、アプリケーションデリバリーを高速化したことで得られるメリットにはさまざまなものがあると思いますが、それを具体的な数値などで分かりやすく説明できますか。
中村 真氏 |
中村氏:ユーザーには、回線を増強するのか、それとも増強せずにWANの最適化を行うのかという選択肢があります。後者を選べば通信コストの1割程度が削減できることが多いと思います。企業の規模が大きくなればなるほど削減される金額も大きくなるでしょう。
しかし、アプリケーションの通信が多くなれば、いずれ回線の増強を行わなければいけなくなります。そのような投資は回避できないものの、いかに増え続けるアプリケーションの通信を最適化して抑えるかという視点からWANの高速化は求められているのではないでしょうか。
伊藤氏:WAN高速化の1つの手法に差分転送という技術があります。実際に送信できるデータは50MB分であっても、ユーザーの体感的には150MB分のデータ転送となります。また、転送速度についても体感速度が改善されるため、WAN最適化を導入したメリットが可視化しやすいと思います。
村田氏:ユーザーの要望には、「アプリケーションが早くなって欲しい」と「帯域を減らして欲しい」という2つがあります。後者は費用対効果が簡単に出せますが、どちらかといえば前者の方が強く要望されることが多く、ユーザー企業の上層部に生産性向上という目に見えないコスト削減を説明するのが本当に難しいです。
山村氏:WAN高速化技術によって得られるメリットにモバイル環境の高速化があります。モバイル環境は、帯域が細いうえ、従量課金なのでコストメリットが見えやすいかもしれません。
三木:企業におけるアプリケーションデリバリーの今後の課題は何でしょう。
中村氏:高速化したうえで、セキュアに伝送できるかどうかという部分が挙げられます。例えば、CADデータなどは送信側で暗号化したうえで送らなければならないし、受信側で復号できなければなりません。
村田 眞人氏 |
村田氏:コントロールをもっと細かくやりたいというニーズも残されていると思います。いままでのようなポートやIPアドレスでの制御だけでなく、もう少し踏み込んで認証と組み合わせて、「この部署のユーザーは早くしたいけど、あの部署のユーザーにはいらないよ」といった使い分けができるといいかもしれません。
また、認証と組み合わせると「誰がどういったことをやっているのか」ということが見えるようになります。つまり、ポリシーをいかに柔軟に設定できるのかという切り口の1つとしての認証ですね。
伊藤氏:いま、話題になっているSaaSですが、個人的にはあまり流行しないのではないかと思っています。エンタープライズである以上、社内のIT管理者の管理下において各種サーバが運用され、任意のサービスが企業内に提供される、あるいは取引先の企業に対して、自社内のアプリケーションへのログインインターフェイスを提供するような形が望ましいのではないでしょうか。
山村氏:さまざまなWAN高速化/最適化製品が登場してきましたが、いざ導入となると製品の面白さだけでは受け入れられないというのも課題の1つです。導入を誰が手掛けるのかというところで止まってしまうのは避けたいですね。
三木:1時間という短い時間でしたが、率直なご意見を伺うことができました。どうもありがとうございました。
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提供:シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
ジュニパーネットワークス株式会社
ブルーコートシステムズ株式会社
リバーベッドテクノロジー株式会社
(50音順)
企画:アイティメディア 営業本部
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2008年7月24日
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シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
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