ソーシャルアプリ向けにリンクが新提案
クラウドから専用サーバへ“お帰りなさい”
2010/11/25
クラウドブームが一巡し、クラウド環境から専用サーバへ戻ってくるケースが増加しているという。急なアクセス増が予想しづらく、高いスケーラビリティが求められるソーシャルアプリは、いち早くクラウド利用が進んだ分野だが、クラウドにまつわる“使いづらさ”から専用サーバへの回帰が起こっている。その背景にはクラウドの良さを取り入れて進化した専用サーバサービスがある。そうしたサービスの1つ、「at+link アプリプラットフォーム」が11月17日にスタートした。
クラウド破産、その前に
IaaS型のクラウドサービスは、インスタンスの起動が早く、アプリやスクリプトからも増減が容易にできる。このため、初期費用を抑えつつ、負荷に応じて自動的にスケーリングさせるといったソーシャルアプリに好ましいインフラの設計・運用が可能だ。
一方で、クラウドサービスは従量制課金であるため、帯域課金が想定以上にかさむという盲点がある。もともと利便性や運用管理の手間の削減こそがクラウドの本質。同じサーバリソース、回線リソースを想定した場合、コスト的には専用サーバのほうが総じて安く済むのが現実だ。クラウドはトータルコストが予測しづらく、特別に安いというわけでもない。このため予想以上にコストが跳ね上がり請求額に驚くという“クラウド破産”という皮肉な言葉も生まれているほどだ。
初期費用0円、サーバ追加は90分
at+linkが11月17日に開始した「at+link アプリプラットフォーム」は、「クラウドと専用サーバのいいところどり」(同社ディベロッパーサポート マネージャー 文屋宏氏)のサービスだという。例えば、素早いスケールアウトがそうだ。
「従来の専用サーバだと、サーバを追加してくださいといっても3週間程度、早くても1週間かかるのが普通でした。新サービスでは90分でサーバが追加可能です」(文屋氏)
初期費用が0円というのもクラウド的。Webサーバ追加は日割りで1050円/日だ。一方、クラウドと違ってデータ転送量の従量課金はなく、冗長化された国内の2Gbps共有回線を利用できる。
ソーシャルアプリのホスティングを念頭に、アプリ公開後5日間は5台までの追加を無償で提供するという、かゆいところに手が届くサービスでもある。
「ソーシャルアプリ事業者の方々に聞くと、だいたいアプリ公開直後には多くのアクセスが来て、その後しばらくすると落ち着くといいます。スタートダッシュのためにクラウドが利用されているわけですが、専用サーバでもこのニーズを受け止められればと考えています」(文屋氏)
超高速SSD“ioDrive”でMySQLも劇的に高速化
アプリプラットフォームの月間利用料は31万5000円と、個人がスモールスタートで始めたいというニーズに合致するものではないが、すでにソーシャルアプリをいくつか提供している事業者にとって嬉しいのは、国内の安定した回線とハイスペックなXeonサーバが利用できること、さらにHDD型SSDより高速な“ioDrive”が利用できることではないだろうか。
アプリプラットフォームのパッケージにはWeb(アプリ)サーバが5台、DBサーバが1台含まれる。Webサーバのスペックは、Xeon L3426(1.86GHz)4コア、4GBのメモリに500GBのハードディスク。
Webサーバのスペックも高いが、注目はDBサーバだ。
6コアのXeon(2.66GHz)と24GBのメモリ、それにFusion-io社の「ioDrive 160GB」が利用できる。ioDriveはPCI-Expressに接続する NANDフラッシュ搭載の高速半導体ストレージだ。一般的なノートPCで利用されるHDD型SSDはSATAに接続するため、ここがボトルネックになるが、PCI-Express x4に接続するioDriveは、シーケンシャルリードで770MB/秒、同ライトで750MB/秒という、SAS接続のHDDと比べて10倍以上、一般的なSSDと比べても3〜7倍というケタ違いの速さを叩き出す。HDD型SSDは書き込み性能が低めだが、ioDriveはスペック容量以上のフラッシュメモリを搭載し(160GBモデルで200GB程度)、時間のかかるメモリクリアの動作を常に行っておくことで高いライト性能と信頼性を実現しているという。
ioDriveの使い方に特殊なことはない。MySQLのストレージとしてioDriveを指定すれば、アプリやDB自体に変更を加える必要はなく、ディスクI/Oによるボトルネックの解消が可能だ。ディスクI/Oが速くなりすぎて、今度はCPUがボトルネックになり始めるためにCPUを6コアにしているというから、このDBサーバのクエリ処理能力がいかに高いかがうかがえる。もちろん、そこまでの性能は不要、あるいは従来通りの組み方が良いということであれば、より安価なSAS搭載のDBサーバのプランもある。
大規模サービスでは、DBを分散管理する必要があるが、アプリの作りやすさや管理の容易さを考えれば、DBサーバを集約できるメリットは大きいだろう。もちろん、より大規模にスケールアウトさせるなら、オンメモリのキャッシュサーバを並べるなど異なるアプローチを併用することになるだろう。at+linkでは、年明けにもオープンソースの分散KVSを追加サービスとして投入する計画があるという。この方面でも期待できそうだ。
ソーシャルアプリ向けの監視も新開発
モバゲーやmixi、GREEなどのソーシャルプラットフォームに対してアプリを提供する場合、例えば「3分間に5秒以上のタイムアウトが1000回以上あるとメニューから削除される」など、ダウンタイムや応答遅延に対する要件が厳しくなっている。メールなどによる通知を見て、そこからサーバを復帰させていたのでは、機会損失が大きい。
このためat+linkアプリプラットフォームでは、監視間隔をユーザの希望通り任意で設定できるようにしたという。また、応答時間も計測できるほか、ノード単位の監視ではなく、より現実の「アプリの応答時間」の計測のために、「バーチャルIP単位で任意のセッション数を指定できる」(同社ディベロッパーサポート シニアエキスパート 前佛雅人氏)ようにするなど、ソーシャルアプリ運用のニーズに応えるものにしたという。
徹底してソーシャルアプリ開発者のニーズに耳を傾けて企画したサービスという印象だが、実際、at+linkの強みは顧客との距離の近さにあるという。24時間365日のオンサイト保守、技術サポート、専任担当者による導入・運用のコンサルティングをしっかり行うため、ソーシャルアプリ事業者はインフラ周りを任せてアプリ開発に注力できそうだ。このようにインフラ専門の技術者たちが心強いパートナーとしてバックアップしてくれるのも、合理化を追求したクラウドサービスにない魅力となるのではないだろうか。
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掲載内容有効期限:2010年12月24日