エネルギアコミュニケーションズ
サーバ・ネットワークの一元管理による運用負荷の削減――クラウド事業者が導入したシスコ新世代サーバの実力
2012/07/30
従来のサーバ機とはまったく異なる発想に基づいて設計されたシスコシステムズの「Unified Computing System(UCS)」。その「まったく異なる発想」は、トータルコストと運用負荷の大幅な削減と、ITインフラ運用の柔軟性やスピードという形で、直接的なメリットをもたらす。クラウドサービスのためにUCSを採用したエネルギアコミュニケーションズが、これを証言する。
中国地方をはじめ、
日本全国の法人ユーザーに向けたクラウドサービス「EneWingsクラウド」
広島市に本社を構える株式会社エネルギア・コミュニケーションズ(以下、エネルギアコム)は、中国地域一円の個人ユーザーおよび全国の法人ユーザーを対象に、インターネット接続や広域WANなどの通信サービスを提供している企業だ。また近年では、情報システムの構築やIT機器の販売・レンタル、データセンターサービスといった情報サービスにも力を入れており、これら法人向けサービスを「EneWings」(エネウィングス)というブランドでさまざまな業界の法人に提供している。
昨年末、このEneWingsのサービスメニューに、新たにクラウドサービス「EneWingsクラウド」が加わった。クラウドサービスの提供開始は、EneWingsの既存ユーザーからの強い要望に応えたものだったという。エネルギアコム 営業本部 法人営業部 企画総括チーム サブマネージャー 原田謙氏は、次のように説明する。
「弊社はもともと主に通信サービスを提供する企業でしたが、それだけに留まらずさらに一歩進んで、お客さまの構内ネットワーク設備やサーバ機器の提供も行ってきました。そうした流れの中で近年、『サーバ機器を所有したくない』という相談をお客さまから受けるようになってきました」
EneWingsクラウドは、こうした法人顧客からの要望に応える形で始められた。その内容は、仮想化したサーバやストレージのITリソースをネットワーク経由で提供する、いわゆる「IaaS」と呼ばれるサービス形態だ。ただし、Amazon EC2などのような個人ユーザーでも気軽に使えるパブリッククラウドとは異なり、EneWingsクラウドのユーザーはエネルギアコムの既存の通信サービスを利用している法人ユーザーがほとんどだ。従って、サービス内容も自ずと法人ユーザーを前提としたものになる。エネルギアコム 通信技術本部 伝送設備部 システム技術チーム マネージャー 武田洋之氏は次のように述べる。
「すでに弊社ではV-LANサービスや専用線など、セキュアな広域ネットワークサービスを法人のお客さまに提供してきました。EneWingsクラウドでは、こうしたクローズドネットワークの上にIaaSサービスを構築して、サーバ環境をセキュアかつ効率良くお客さまに使ってもらうことを狙いました」
2011年12月24日にサービス提供が開始されたEneWingsクラウドだが、わずか半年足らずのうちに当初予想をはるかに上回るユーザーを獲得し、早くもサーバリソースが不足してきているほどだという。
サーバの拡張性と管理性を重視した結果
「Cisco UCS」を採用
このEneWingsクラウドのシステム基盤を支えているのが、シスコシステムズ(以下、シスコ)の製品群だ。それもネットワーク機器だけでなく、サーバ基盤にもシスコのサーバ製品「Cisco UCS」を採用しているのが大きな特徴だといえる。通信サービスを長く手掛けてきたエネルギアコムにとって、シスコのネットワーク機器は慣れ親しんだ製品のはずだが、一方でサーバにもシスコ製品を採用した理由はどこにあったのだろうか。武田氏は、「拡張性と管理性がポイントでした」と振り返る。
「EneWingsクラウドは、最適なシステム規模にて構築し、ビジネスの状況を見ながら順次システム規模を拡張していく計画でした。従って、採用するサーバ製品には柔軟、かつ効率的な拡張性が求められていました。しかし、さまざまなメーカーのブレードサーバ製品を比較検討したものの、どれも管理をエンクロージャ単位で行う仕様になっており、シャーシを増設してシステム規模を拡大していくにつれ管理作業が複雑化することが予想されました。その課題に対してシスコのUCSは、管理機能をエンクロージャから引き離してスイッチ上に置き、シャーシをいくら増設しても管理ポイントが増えることがないため、ネットワーク機器と同じように集中管理できます。この点について弊社のようなネットワークの専門家は非常に扱いやすいと感じました」(武田氏)
一方原田氏は、Cisco UCSの物理的なメンテナンス性の高さも高く評価したという。
「シスコのパートナー企業のセミナーでCisco UCSのことを初めて知りましたが、ネットワークインターフェイスが仮想化・集約されており、物理的な回線数が極めて少数で済む点は、サーバラック背面のメンテナンス性の点でメリットが大きいと感じました」(原田氏)
またストレージ装置には、メンテナンス性や管理性を考慮した結果、SANを新たに構築するのではなく、既存ネットワークとのシームレスな運用性を踏まえNAS方式を選び、ネットアップ製品を採用した。
さらに、今回クラウドサービス用のネットワーク基盤を一から構築するに当たって、シスコのデータセンタースイッチ製品「Cisco Nexus 7000」を新たに導入した。これは、Cisco UCSと同様にシステムの拡張性を何より重要視した結果の選択だったという。
「ネットワークのスケーラビリティや、将来的なデータセンター相互接続によるDR(災害対策)などのソリューション提供を想定するとNexus 7000の機能は有効です」(武田氏)
こうして、シスコのサーバ製品にネットワーク機器、さらにネットアップのストレージ製品の採用が決まった。構成は、シスコとネットアップが共同で提供する事前検証済みのデータセンターソリューション「FlexPod」と同様だ。さらに、仮想化ハイパーバイザとしてVMware vSphereを採用したが、これも「FlexPod for VMware」としてシスコ、ネットアップ、ヴイエムウェアの3社が共同で提供する事前検証済みソリューションである。このように、あらかじめベンダにより動作保証された製品の組み合わせを導入するメリットは非常に大きかったと武田氏は言う。
「Cisco UCSの導入を検討する際に唯一気になったのが、他製品に比べ稼働実績が少ないことでした。しかし、FlexPodのように製品メーカー間の相互接続・運用性が担保されていれば、稼働実績同様に安心して導入できると考えました」
一方、原田氏は、「逆に後発ならではの強みもありました」と指摘する。
「長くサーバを作っているメーカーの製品は、古いアーキテクチャを引きずっている面がありますが、その点Cisco UCSは後発である分、思い切った斬新なアーキテクチャを採用しています。これは、実績が少ないことを逆に強みに変えているのだと感じました」(原田氏)
順調に完了した構築作業
こうして製品選定が完了した後、パートナー企業を交えての設計とテストの作業が開始された。完全に一から新たに構築するシステムだけに、論理設計とテストは極めて慎重に行われたが、非常に技術力の高いパートナー企業と組むことができたおかげで、作業は非常にスムーズに運んだという。
それとともに、シスコが提供する技術サポートも非常に充実していたという。特に、シスコ東京本社に設置されたCPOC(Cisco Proof of Concept)ラボで行ったテストのことは、強く印象に残っていると武田氏は言う。
「CPOCに弊社の本番環境とまったく同じ環境を構築して、入念にテストを行いましたが、これだけの設備と環境の中で作業できることはそうそうありません。弊社の技術運用部門の関係者全員をCPOCに連れて行きましたが、関係者全員驚いていました。このような経験は、頻繁にできるものではないと思います」(武田氏)
さらに、テストが終わった後の構築作業も、驚くほど順調に完了した。ここでものを言ったのが、Cisco UCSのシンプルなケーブリングだった。
「UCSは物理ケーブルの数が本当に少ないので、構築作業に掛かる手間をかなり省くことができました。『本当にこんなに簡単でいいのか?』と驚くほどのシンプルさでした」(原田氏)
こうして安定的、かつ順調に構築されたEneWingsクラウドのサーバ基盤は、サービス開始当初はシスコのブレードサーバ製品「Cisco UCS B200 M2」を格納したシャーシ「Cisco UCS 5108」複数台により構成された。一部ブレードサーバは異なるシャーシ間でHA構成をとるなどサービスメニューに応じた構成となっている。
またネットワーク機器としては、新たに導入したCisco Nexus7000とともに、すでにほかのサービスなどで導入済みだったシスコのエッジルータ製品「Cisco ASR 9000」の技術利用にもこだわったという。
「V-LANサービスという広域イーサネットサービスを提供してきたサービスプロバイダとして、複数レイヤーVPNサービスを接続するため、多様なプロトコルを変換して連携するゲートウェイとして、Cisco ASR 9000の技術には注目していました。IPアドレスやトポロジの制限を受けずにお客さまのシステムをシームレスに接続できることをサービスの優位性としているので、その点についてはクラウドサービスでも継続したいと考えていました」(武田氏)
Cisco ASR 9000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータ
「Cisco UCS Manager」がもたらす高い管理性と拡張性
システム規模を比較的抑えたスモールスタートで開始したEneWingsクラウドだったが、サービス提供開始からわずか半年間で当初の予想をはるかに上回る数のユーザーが集まり、今ではシステム増強の必要性に迫られているという。そのため、先にも紹介したCisco UCSの拡張性の高さが早くも効いてきているという。ここで効力を発揮するのが、Cisco UCSの管理ツール「Cisco UCS Manager」だ。
「シャーシを増やしていっても、Cisco UCS Managerでそのすべてを一元的に管理できるので、当初の目論見通り高い拡張性が維持できると考えています。さらに欲を言えば、1シャーシ当たりのブレードサーバ搭載数などで、さらなる高密度化ができるとベストでしょう」
また運用管理の現場では、Cisco UCS Managerの「サービスプロファイル」の機能が大いに重宝されているという。
「サーバの設定を利用者ごとにプロファイルとして管理し、自動適用できるので、とても便利だと感じています。サーバの設定作業が簡素化できるだけでなく、ネットワークの世界ではもともと利用者ごとのプロファイル管理というのは当たり前のように行っていたので、弊社のようなネットワークの専門家にとって非常に親和性が高い方法です」(武田氏)
さらにエネルギアコムでは、EneWingsクラウドのサービス拡大とともに、今回シスコ製品をベースに構築したクラウド基盤をベースにして、次なるビジネスプランも検討中だという。
「現状ではIaaS型サービスの提供のみですが、将来的にはPaaSやSaaSのサービスも提供できればと考えています。また何社かのお客さまからは、EneWingsクラウドと同じ仕組みを使って、自社内にプライベートクラウド環境を構築できないかという相談もいただいています」(原田氏)
シスコ ユニファイド コンピューティング システム(Cisco UCS)の考え方
Cisco UCSの設計思想――サーバ、ネットワーク、ストレージアクセス、仮想化環境をひとつに統合し、シンプルに接続することで、データセンター全体を1つの大きなコンピュータへと進化させようとしています。
ユーザープロフィール
株式会社エネルギア・コミュニケーションズ中国地域一円の個人ユーザーおよび全国の法人ユーザーを対象に、インターネット接続や広域WANなどの通信サービスを提供。「もっと輝く、確かな明日へ」をキーコンセプトに、生活、ビジネス、社会のあらゆる場面で心の通う、より良いコミュニケーションづくりを支援する。
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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2012年09月05日
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