仮想化で立ち止まっている企業は、
なぜ仮想化の先へ行くべきなのか?
仮想化からプライベートクラウドへ
その本当のメリットを語ろう
2012/03/01
業務単位のサーバ仮想化はさまざまな企業で進んでいるが、その先まではまだ想像できていない場合も多い。なぜ仮想化の先へ行くべきなのか、プライベートクラウドの本当の実力(メリット)とはどのようなものか。ストレージと仮想化ソフトが緊密に連携することによってどのような世界が実現するのか。関連技術だけでなく、顧客における実際の導入状況に非常に詳しい2人、EMCジャパン グローバル・サービス統括本部 テクノロジー・ソリューションズ本部 技術部 マネジャーの竹内博史氏とヴイエムウェア プロフェッショナルサービス本部 本部長の野崎恵太氏に、@IT担当編集長の三木泉が聞いた。
なぜ全社的なIT統合に向かうべきなのか?
――仮想化は普及しましたが、全社レベルのIT統合までは進めていない企業があります。まず、なぜ全社的なIT統合に向かうべきなのかについてお伺いします。
ヴイエムウェア
プロフェッショナルサービス本部 本部長
野崎恵太氏
野崎恵太氏(以下、野崎氏):プライベートクラウドを目指す背景は大きく2つあると思います。1つはスピード。市場の要求に合わせてビジネスを早く進めるために、ITにもそれに追いつけるスピードが必要になってきました。もう1つはコンシューマの世界でのクラウドの普及です。ユーザーがコンシューマの世界でクラウドの便利さを知ってしまったことが大きい。自分でボタンをクリックするとすぐに使えるという状況が日々の身の回りにあるので、誰かに頼んでできるのを待つという今までのIT部門の対応に我慢できなくなっています。この2つを実現するITの形として、プライベートクラウドが必要とされていると考えています。それをブレークダウンすると、運用の自動化、セルフサービス、マルチテナント、コストが自動で付加される課金の仕組み、非常に安いコストでという要件が出てきます。
竹内博史氏(以下、竹内氏):コストの話が出ましたね。EMCはサーバ仮想化が登場する前から、ストレージ統合を訴えてきました。その第1の目的としては、業務上重要なデータの管理や利用をストレージ統合によってまとめ上げることで、データの保存とその利用の品質の全体的な底上げを図るということがありました。コンピュータに内蔵のディスクドライブなどで業務システムごとにばらばらにデータを管理していると、性能や信頼性の確保を個別に行わなければならないため、コストがかかるだけでなく、場当たり的な対応になってしまいがちです。しかしストレージ統合によってデータをできるだけ一括管理することで、その重要度に応じて体系的かつ効率的な保護や性能確保が可能になるのです。
野崎さんの言われるように、最近ではITインフラにかかるコストをなるべく抑制したいというニーズも高まっています。従来は、安全性や確実性のために、結果的に必要以上のデータ保護をしているとか、サーバのスペックを上げているといったケースがありました。そういう部分を抑制できる点が、クラウド化のメリットの1つとして重視されるようになってきました。個々のデータ群に対してサービスレベルを決めて、適切な予算でそのサービスレベルに即した適切なITを提供することが可能になりますので、IT投資にメリハリをつけることができます。後で触れる機会があると思いますが、本格的ストレージ製品ではこうした機能を搭載してきましたし、近年ではさらに強化してきています。
――大規模統合環境の運用には、どのような機能が求められるでしょうか。
EMCジャパン グローバル・サービス統括本部
テクノロジー・ソリューションズ本部
技術部 マネジャー 竹内博史氏
竹内氏:適材適所でリソースを割り当てる作業を、自動化する必要があります。どの部門やシステムでも、それぞれの担当者はこれは重要だと主張するでしょう。皆が納得するようなある種の基準で、ITインフラが自動的に最適化するのが理想です。
野崎氏:プライベートクラウドでは、ポリシーに基づいて自動運用を行うことが重要だと考えています。ヴイエムウェアの場合は、さまざまなレイヤでポリシーを定義できるようになっています。例えばクラウドの基盤部分では、仮想マシンレベルはもちろんストレージやネットワークの設定をホストプロファイルとして定義します。リソースが足りなくなって新しいハードウェアを追加した場合は、この定義がコピーされ、自動的に適切なストレージにつないで使えるようになる機能があります。
ストレージ関係では、ストレージのクラスタを定義しておき、仮想マシンに特定のストレージクラスタを使うように設定すると、そのクラスタ内で自動的に負荷分散したり、自動的に容量に余裕があるストレージに仮想マシンが作られるといったことができるようになっています。Storage vMotionやStorage DRSという機能です。
――複数のストレージを1つのまとまりとして捉えて、容量消費を平準化しながら使えると。
野崎氏:空き容量だけでなく、I/O遅延が大きくなったら負荷が高いと判断して割り振ります。これを手動でやろうとすると、数が多い場合は非常に管理負荷が高くなります。それを自動化するための仕組みとして、ストレージ側から自らのスペック、性能をホスト側に伝えてもらう機能を搭載しています。その内容をもとにした割り振りが可能です。
竹内氏:プライベートクラウド化するためにストレージ側がやらなければいけないことは、ストレージの扱いを簡単にすることだと考えています。Storage DRSの話が出ましたが、その第一歩となっているのは2010年に発表したFASTVP(Fully Automated Storage Tiering with Virtual Pools:自動階層化機能)です。これは筐体内部でストレージを階層化し、ポリシーに基づいてデータを自動的に配置するというものです。あらかじめ指定したポリシーに基づいて、この領域は必ず性能を確保するという場合は高速なフラッシュドライブ、この領域はアーカイブ用なので性能はあまり必要ないという場合は低速の大容量ストレージというような割り振りをします。高速なストレージ媒体は一般に高価であり、低速な媒体は一般に廉価ですから、データの利用ニーズに応じて最適な配置を自動的に実行できれば、面倒な管理作業なしにストレージへの投資効率を高めることができます。
EMCのストレージ製品の差別化要素は?
――自動階層化機能を備えたストレージは他社製品にも見られるようになってきましたが、EMCのストレージにおける自動階層化機能にはどのような特長がありますか。
竹内氏:単にフラッシュドライブを上位にするといったことではなく、非常に高速な領域、性能よりもコストを重視した領域、その中間という3階層を、きちんと定義しています。これによりお客様の投資効率を最大化します。また、最適化する際に使う性能統計値の項目数は非常に多く、これまで蓄積された情報をもとにアルゴリズムを作っていますので、最適化についてはストレージベンダとして一日の長があると自負しています。単純なアクセス頻度に基づく移動ではありません。
さしてパフォーマンスが必要でないデータが高価なドライブを使ってしまうことがないので、コスト削減という効果があります。しかしユーザーに一番評判がいいのは、ポリシーに合わせて自動的にデータのレイアウトや再配置がされることです。ユーザーがデータ配置を設計したり、日常の細かな運用をするといった負荷をなるべく減らすのが、ストレージ側のアプローチです。
――EMCのVNXは、SAN、NASのさまざまなプロトコルに対応したユニファイドストレージですね。
竹内氏:EMC VNXをユニファイドストレージとして設計したのは、できるだけ多様なデータの利用方法に対応することで、一括管理のメリットを極大化することが大きな目的です。ただし、その先に目指しているのは、プロトコルが何であるかや、どうやって接続するかを、お客様が考えずにすむようにすることです。
――物理的なものを論理化できる技術がさまざまな方面で進化したことによって、ユーザーは技術的な詳細に日常的に関わらずに、やりたいことをやれる方向に向かっているということでもありますね。
野崎氏:それは間違いないと思いますね。例えば10GBの仮想マシンを作りたい時、ストレージのプロトコルやハードウェアを理解したうえで、どこに入れるか選ぶなどということを、ユーザーはやりたくないでしょう。セルフサービスを可能にするには、そういう部分はマスクしなければなりません。
――個々の業務システムの運用を考えるとどうしても例外があるので、やはり共通基盤には載せられないというケースもありそうですが。
野崎氏:これまでの経験から、課題は突き詰めるとスケーラビリティ(拡張性)、パフォーマンス、可用性という3つの軸に整理できると考えています。スケーラビリティについては、今のテクノロジとハードウェアを使うと、もうほとんど問題ありません。通常のお客様が使われているアプリケーションの99.9%をカバーできるスケーラビリティは、無理なく実現できます。残るはパフォーマンスと可用性ですが、これはいくつかのサービスレベルを定義すれば、ほとんどのお客さまで95%くらいのアプリケーションをクリアできます。残りの5%は、誰が作ったか分からないので怖くて触れないといったものだったりします。
話を聞く@IT担当編集長の三木泉
決め手は、できるだけ少数のサービスレベルを定義するということです。パターンが多すぎると、運用が楽になりませんから。パフォーマンスと可用性について、必要かつ十分なサービスレベルを設定するという方向に考えがいけば、ほぼ問題ありません。もはや、プライベートクラウドにはこのアプリケーションが載るとか載らないという話ではないと考えています。
竹内氏:ストレージとしては、先ほどの自動階層化機能をうまく使っていただくことと、もう1つのアプローチとしてはQoSがあります。基本的にはネットワークのQoSと同じ考え方で、上限や目標値を設定して特定アプリケーションからのレスポンスタイムやスループットを維持します。機能としては従来からありましたが、最近になって注目され始めています。
プライベートクラウドへ向かう最大のメリットは?
――プライベートクラウドのメリットを最大化するポイントは何でしょう。
竹内氏:まず、ストレージの内部構造やアーキテクチャ、ボリュームのレイアウトといったことを意識せずに使っていただけることが大前提となります。そのためにFASTVPやQoSといった機能を提供しているわけですが、それに加えて管理インターフェイスの部分が重要になりますね。ストレージのことを知らなくても気にせずに、ボリュームのプロビジョニングができたり、構成変更ができるということが、今後のキーとなるでしょう。
今までは、ストレージやネットワークといったインフラの管理とサーバ管理は、それぞれ別のスペシャリストが行っていました。しかし、もうそういう時代ではない。ITにスピードが求められているますので、人のやりとりのオーバーヘッドは無視できません。そこで、サーバ管理者でも使える管理インターフェイスを用意するといった機能の実装を、ストレージ側でも行っています。
VMware vSphereとの連携で代表的な機能は、EMC Virtual Storage Integrator(VSI)です。vSphereの管理者自身がvCenterからEMCのストレージを管理できるようなインターフェイスになっていて、特にクラウドサービスプロバイダなどでは必要な機能と評価していただいています。
もちろん、性能監視などはストレージ運用者にお願いすることになります。しかしそれについても、管理ツールでの連携により、ストレージ管理者以外がリソースの逼迫に気付いて、早い段階で手当てできるといった運用が可能になると思います。情報をさまざまなところで共有・連携させていくことが、インフラ全体の運用にとってのメリットになってくるはずです。
野崎氏:例えば、EMCストレージのシンプロビジョニング機能を使っていて、このストレージの物理的な容量がフルになったことに誰も気がつかなかったとしても、ストレージとvSphereの間のAPI連携により、Storage vMotionが自動的に起動し、容量に余裕のある別のストレージに仮想マシンを移すといったこともできます。エンドユーザーはどこで何が起きたか分からないが、必要な容量が確保されて使えるようになる。そうことが実現できるのは、非常に重要だと思います。
竹内氏:ストレージベンダとしても、ビジネスのスピードやエンドユーザーのニーズに応えるべく、自動的に、意識せずに使えるというところを目指して、細かい機能を積み重ね、開発を行っています。従来は、お客様がストレージを比較する際に、機能や対応プロトコルの数に目が行きがちでした。しかしこれからは、意識せずに使えるストレージかどうかが注目されるようになっていくと考えます。
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提供:EMCジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2012年3月31日
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