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デスマーチからの脱却! 工事進行基準セミナー

 @IT情報マネジメント編集部主催の「デスマーチからの脱却! 工事進行基準〜いまから準備すべきこと〜」が、8月7日に都内の青山ダイヤモンドホールで開催された。

 日本の会計基準を国際会計基準に合わせるコンバージェンスが進む中、システム・インテグレータ(SIer)や受託ソフトウェア開発会社は、これまでの工事完成基準から、新たに工事進行基準への対応が求められる。工事進行基準の適用が始まるのは2009年4月で、時間はない。各社はどう考え、どのように工事進行基準に対応すべきか。セミナーでは多くの提言が行われた。

 基調講演ではベリングポイントのシニアマネージャーで公認会計士の山田和延氏が、工事進行基準を適用するうえで重要になる3つの条件、「工事収益総額」「工事原価総額」「工事進ちょく度」を説明し、「この条件がそろわない場合はいままでどおり工事完成基準でもよい。しかし、3つの条件がそろわない企業はプロジェクトの管理体制が問われることになるだろう」と指摘した。

 山田氏は各社がいまから準備すべきこととして、プロジェクト原価を把握するための「実績集計」と、数多い見積もりに対応するための「承認体制」、プロジェクトの遂行を効率化し、リスクを低減するための「契約書のひな形」を説明した。そのうえで、「どうしても1つだけを準備するなら承認体制」と語った。

 基調講演後は、日本電気(NEC)、日揮情報システム、日本CAと、奈良先端科学技術大学大学院の情報科学研究科 ソフトウェア工学講座 助教の森崎修司氏が講演した。

セミナーレポート インデックス
工事進行基準に向けたマネジメントを支援するプロジェクト管理ツール
――NEC
30年以上の工事進行基準対応ノウハウを凝縮
――日揮情報システム
赤字プロジェクト撲滅。進行基準を義務から機会へ〜SIビジネスの信頼性と競争力強化
――日本CA
工事進行基準時代のソフトウェア計測――商用開発での計測事例をまじえて
――国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学

                                   
セッション1:NEC
工事進行基準に向けたマネジメントを支援する

 NECの開発環境技術本部 主任 菊地誠氏は、工事進行基準への対応を進めるうえで、プロジェクトの管理強化が重要になると指摘した。具体的には企業は、分割契約の促進や仕様変更ルール、別契約化の確立、工事進行基準を考慮した契約書の採用などが求められると説明した。このような対策は、組織が運用によって対応できる「人間系によるプロセス改善」だ。

NEC 開発環境技術本部 主任 菊地誠氏

 だが、それだけでは不十分というのがNECの考え。同時に作業プロセスの標準化や詳細な見積もり、実際発生原価の自動集計、原価比例法による進ちょく度の計算、これらITシステムやツールによる対策も必要になると訴える。

 NECの「ProcessDirector」はこのような工事進行基準に対応したプロジェクト管理を支援するツールだ。NEC社内のプロジェクト管理ツールとして生まれ、社内で約7500プロジェクトへの適用を経て、2003年度から外販している。最新版では工事進行基準への対応を進めている。

 ProcessDirectorの特徴は、個別のプロジェクト管理だけでなく、全社を意識した組織的管理の機能を備えていることだ。個別プロジェクト管理では、進ちょく、品質、成果物、課題など基本的な機能を備える。組織的管理では案件管理や、開発プロセスの定義、審査実施記録、テンプレートや事例などの資産管理、CMMIに基づくプロセス計測、ワークフロー機能などを備える。これら個別プロジェクト管理の機能と、組織的管理の機能はそれぞれ連携し、一元的に管理できるようになっている。また、日本流のプロジェクト管理方法にマッチしている点、ユーザーに対して、あらかじめ定義されたWBSを厳格に守らせる点も大きな特徴だとする。

 ProcessDirectorを使うことで、工事進行基準の適用がどう効率化されるのか。菊地氏は「会社・組織単位で標準プロセスを定義し、個別プロジェクトに適用できるようになる」と話す。これによってプロジェクトごとの作業のばらつきが少なくなり、作業プロセスを標準化できる。また、 ProcessDirectorは定義したWBS単位での見積もりや、作業単位での工数積み上げと集計が可能で、工事進行基準で必須となる正確な見積もりが可能になる。

 工事進行基準では、総原価に対して使った原価の割合によってプロジェクトの進ちょく度を測る原価比例法が使われることが多い。ProcessDirectorは、実際に発生した原価を自動集計する機能があり、この原価比例法をサポートする。売り上げや見積もり原価、実際発生原価などのデータをExcelに出力し、原価比例法によって進ちょく度を計算できる機能もある。

 菊地氏はProcessDirector導入の効果として「組織プロセスの定義と浸透」「プロジェクト成果物の蓄積・再利用」「管理負荷の軽減」の3つを挙げた。組織プロセスの定義と浸透では、プロジェクトごとの品質のばらつきがなくなると同時に、開発プロセスの選択に悩む必要がなくなり、作業者は実務に専念できるというメリットがある。

 プロジェクト成果物の蓄積・再利用では、過去の資産を採用することで生産性の向上が期待できる。標準プロセスに則った成果物が自動蓄積されるため、属人的な開発を避けることができ、社内外のメンバーとの協力がやりやすくなる。また、管理負荷の軽減は、作業工程と管理工程が一体化することで、作業者の進ちょくの度合いや内容の把握が簡単になるというメリットがある。

 菊地氏によるとProcessDirectorは、2008年7月末現在で、国内に約150社のユーザーを持っているという。その内訳は、大手SIerや大手製造業系のソフトウェア開発部門もあるが、最近1年ほどで組み込みソフトウェア開発企業などのユーザーも増えているという。工事進行基準の話題がホットになるとともに引き合いが増えているそうだ。そうしたことから菊地氏は、今後もプロジェクト管理ツールを導入する企業が増えそうだと見ている。

本セッションで取り上げた製品に関連した資料をダウンロードできます。

                                   
セッション2:日揮情報システム
30年以上の工事進行基準対応ノウハウを凝縮

 工事進行基準の適用において、SIerの先輩となるのが建設業界やエンジニアリング業界などの企業だ。これらの企業は工事進行基準に対応しながら、世界中で大規模なプロジェクトを行っている。セッションを行った日揮情報システムの親会社で、エンジニアリング大手の日揮もその1つだ。

 日揮情報システムのソリューション本部 副本部長 宮本健一氏は、同社のプロジェクト管理製品「J+Project会計」について、「日揮時代を合わせて30年以上の工事進行基準対応ノウハウを凝縮した」と強調する。

日揮情報システム ソリューション本部 副本部長 宮本健一氏

 日揮情報システムは、プロジェクトマネジメントに定評がある日揮を出自とし、さらに建設業や受注型製造業、SIerなどのプロジェクト型企業向けに財務会計などの基幹システムと、個別原価管理を中心としたフロントシステムを数多く構築してきた。このような経験がJ+Project会計にも生かされているという。

 J+Project会計は、前身のプロジェクト型事業支援システム「Just-Stage@Pro」をベースに進化させた製品。Just-Stage@ProはSIer業を中心に、多数の導入実績がある。J+Project会計はこのJust-Stage@Proをベースにアーキテクチャを一新し、工事進行基準対応およびほかのシステムとの連携機能などを強化した。

 宮本氏は工事進行基準で要求される管理体制について「営業が受注した情報の管理から現場での予算計画、原価実績管理、調達、会計までの一気通貫の情報管理・統制」と指摘する。つまり、工事進行基準では、営業部門の案件情報管理、受注管理にはじまり、プロジェクト実行部門の実行予算管理、原価実績管理と、経理・財務部門の会計管理まで、「シームレスな業務情報の管理が可能になることが重要」なのだ。

 J+Project会計はSIerなど工数管理が中心の業種向けに、WBS単位でのプロジェクト実行予算管理の機能を持つが、同時に工事進行基準で求められるプロジェクト収益総額、原価総額、進ちょく度についても一元的に管理できる。進ちょく度については原価比例法をサポートし、出来高の進ちょく率によって売上高を計上する出来高法(EVM法)にも対応する。

 また、オープンなアーキテクチャを採用し、財務会計などのほかのシステムとの連携も容易だ。プロジェクト実行予算のデータを活用し、部門採算や稼働率データを算出することもできる。アーキテクチャは「イントラマートフレームワーク」を採用し、標準で会計パッケージの「J+統合会計」や、NTTデータ システムズの「SCAW 財務会計システム」と連携可能。汎用的なインターフェイスが用意されており、既存の会計システムのほか、人事・給与システムとの連携も視野に入れている。

 さらに、営業・案件管理機能を備えたプロジェクト管理パッケージ「SmartPMO」と連携し、プロジェクトのQCD(品質、コスト、納期)をサポートできるという。

 宮本氏はJ+Project会計のメリットについて「プロジェクト収益・原価見とおしの可視化によりマネジネント判断が迅速化する」と説明した。また、「売上仕訳と売上根拠データの提供により、決算業務の現場負荷が軽減する」ことも説明。SmartPMOとの組み合わせにより組織的な開発プロセスの整備が進み、「赤字プロジェクトの撲滅が実現する」と強調した。

 日揮情報システムは2008年7月にJ+Project会計の出荷計画を発表した。8月にはデモ版をリリースし、10月には限定的に出荷開始する予定だ。正式出荷開始は12月になるという。

本セッションで取り上げた製品に関連した資料をダウンロードできます。

                                   
セッション3:日本CA
赤字プロジェクト撲滅。進行基準を義務から機会へ
〜SIビジネスの信頼性と競争力強化

 「工事進行基準を単なるコンプライアンス対応の義務としてとらえるのではなく、機会としてとらえて競争力の強化につなげることが重要だ」。日本CAのPPM・システムマネジメント・ソリューション営業部 シニアコンサルタントの澤野信彦氏は、セッションでこう強調した。工事進行基準はSIerやソフトウェアベンダにとって、いままの開発プロセスを大きく変える可能性がある。しかし、同時に開発のQCD向上につながるのも確実だ。澤野氏は「工事進行基準の真の目的を考えるべき」と話した。

日本CA PPM・システムマネジメント・ソリューション営業部 シニアコンサルタント 澤野信彦氏

 工事進行基準の目的は「財務報告の透明性および即時性を高め、会計期間におけるより正確な収益を認識し、実態に近い会計報告を実現すること」と澤野氏は指摘する。そのために各社は「精度の高い見積もり」「コストの監視」「進ちょくの把握」が求められるが、実はこれらの要件を満たすことで、同時に赤字プロジェクトの撲滅も可能になると強調する。「工事進行基準対応と赤字プロジェクト撲滅の取り組み。結局やることは同じです」(澤野氏)

 そのため、澤野氏は「義務を機会ととらえ、この機会に企業体質を強化し、競争力を高めませんか?」と訴える。日本CAが販売する、プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントソリューションの「CA Clarity」は、ITプロジェクトの全プロセスの基盤として機能し、工事進行基準に対応した“あるべき姿”を実現する。

 プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントとは、効率的なITプロジェクトの選択と優先順位付けを行い、人的資源や知識など企業の資本を適切に割り当てて、コントロールする考え方。ITプロジェクトを企業全体の事業目標に合致させてビジネスとの整合性を高めることが目標だ。澤野氏は「CA Clarityは全プロセスの基盤となる」と話す。

 具体的にはCA Clarityは工事進行基準に対応した「見積もりプロセス」「プロジェクト管理の標準化」「リソース管理」「プロジェクト原価管理」の機能を持つ。見積もりプロセスの機能では、過去のWBSやリスク、期待できる利益などから企業にとって利益が最大になる案件の組み合わせを決定できる。デスマーチになるような危険な案件を事前に避けられるのだ。

 プロジェクト管理の標準化では、WBSの標準化を徹底しながらプロジェクトを設定できる。プロセスごとに“ゲート”を設けて、品質やコストを確認しながらプロジェクトを進めることが可能。チーム内外のメンバーとの情報共有の機能もある。

 リソース管理はプロジェクトのどの工程にどのようなメンバーを割り当てると最適なのかを、メンバーのスキルや経験を考慮しながら決めることができる。開発中は各メンバーに対する負荷を監視し、必要ならほかのメンバーを投入するなどの調整も可能だ。また、プロジェクト原価管理の機能では、ある時点までの原価を把握できるとともに、このままプロジェクトを続ける場合にどの程度の原価の推移になるのかも分かる。原価比例法による進ちょく度の確認に役立ち、赤字プロジェクトの削減にもつながる機能だ。EVM法にも対応する。

 澤野氏によると、CA Clarityは世界で800社以上が採用しており、米国ではSaaSによる展開もしているという。澤野氏はCA Clarityが企業に受け入れられている理由として、カスタマイズの容易さやモジュール構成による拡張性の高さ、APIを用意しており、ほかのシステムと連携可能なこと、などを挙げた。CA Clarityは国内では新日鉄ソリューションズが採用し、プロジェクト情報データベースとして利用しているという。

本セッションで取り上げた製品に関連した資料をダウンロードできます。

 

                                   
特別講演:国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学
工事進行基準時代のソフトウェア計測
――商用開発での計測事例をまじえて――

 奈良先端科学技術大学院大学の助教 森崎修司氏は「工事進行基準時代のソフトウェア計測」と題して講演した。ソフトウェア計測とは、ソフトウェア開発の生産性や信頼性についてのデータを計測し、そのデータを基にユーザー企業とSIer、もしくは開発プロジェクト内部で情報共有を行う考え方だ。

奈良先端科学技術大学院大学 助教 森崎修司氏

 計測データをベースにすることで、見積もりや品質予測、テストなどを客観的に行えるようになり、「お互いが納得感のある意思決定をできるようになる」というメリットがあるという。実証データに基づくソフトウェア工学として、「エンピリカルソフトウェア工学」などの研究が進んでいる。森崎氏は「計測データを使って開発状況をオープンにする動きが、工事進行基準をきっかけに生まれるのでは」と語った。

 ソフトウェア計測の基になるデータは「相関ルール分析」によって導き出すという。相関ルール分析とは、対象データに含まれる「AならばB」という相関関係をすべて列挙し、意味のあるルールを探る考えだ。システム開発のプロジェクトでは、例えば「3階層アーキテクチャの機能拡張プロジェクトではテスト工数比率が高くなる」というルールを導き出すことができ、このようなプロジェクトではテスト工数を多く見積もることで、混乱を回避できる。

 森崎氏らの研究チームではSIerから開発プロジェクトの実データの提供を受けて、ソフトウェア計測の研究を進めている。

 また、ソフトウェア計測の1つとして、ソフトウェアのレビューやテストにおける「リスクベースドレビュー」についても森崎氏は説明した。ソフトウェアのレビューは的外れな指摘があると、開発者のモチベーションが低下する危険がある。森崎氏は「一般的には品質向上を目的とする指摘が多いが、顧客のリスクを低減するような指摘をすべき」と語り、顧客にとってのリスクが大きくなる不具合から順に指摘するリスクベースドレビューを説明した。

 ソフトウェア計測はSIerにとって、まだなじみがないだろう。しかし、森崎氏は「工事進行基準で重要になる見積もりを正確に行うために、ソフトウェアの管理データから傾向を抽出して仮説を立て、開発プロセス体制を改善していくことは重要だ」と訴えた。

日本CAのブースではプロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントソリューションの「CA Clarity」の説明を行っていた NECのブースではプロジェクト管理を支援するツール「ProcessDirector」の解説やデモを行っていた

 

提供:日本電気株式会社
日揮情報システム株式会社
日本CA株式会社

企画:アイティメディア 営業本部
制作:@IT情報マネジメント 編集部
掲載内容有効期限:2008年09月30日

セミナーレポート インデックス
工事進行基準に向けたマネジメントを支援するプロジェクト管理ツール
――NEC
30年以上の工事進行基準対応ノウハウを凝縮
――日揮情報システム
赤字プロジェクト撲滅。進行基準を義務から機会へ〜SIビジネスの信頼性と競争力強化
――日本CA
工事進行基準時代のソフトウェア計測――商用開発での計測事例をまじえて
――国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学

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プロジェクト管理と組織的管理のコラボレーション
で工事進行基準対策も万全
日本電気

施行が間近となった工事進行基準に対応するには?単なる進ちょく管理機能だけではない、統合型のプロジェクト管理システムが求められている。



工事進行基準対応ノウハウを凝縮した
プロジェクト管理手法
日揮情報システム

30年以上にわたってノウハウと実績をためてきた日揮情報システムが、工事進行基準対応のコツと対応ソリューションを紹介する。




工事進行基準対応を
赤字プロジェクト撲滅の機会に変える!

日本CA

工事進行基準への対応に頭を抱えているSI企業は多いだろう。しかし、それを契機に、赤字プロジェクトの原因を根本から撲滅させることができるかもしれないのだ。




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