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日本ヒューレット・パッカードは2008年9月、「サーバ仮想化環境に最適なサーバ」を発表した。x86サーバブレードで国内トップシェアを維持しているサーバベンダにふさわしく、同社のHP BladeSystem c-Classのブレードという形をとっている。ではサーバ仮想化環境に最適とはどういうことなのか。新製品「HP ProLiant BL495c G5」を解剖する。 |
サーバブレードを使ってサーバ仮想化を推進する企業が増えている。日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は2007年第3四半期から4四半期連続で国内のx86サーバブレードにおいてナンバー1※のシェアを獲得しているが、サーバブレードを購入する企業でサーバ仮想化を併せて検討・導入するケースが目立つという。
※出荷台数 IDC Worldwide Quarterly Server Tracker, Q2 2008
なぜサーバブレードでサーバ仮想化なのか。それは両者とも、IT統合がもたらす各種のメリットを極大化するために欠かすことのできない技術だからだ。
なぜサーバブレードで仮想化なのか |
最近では、企業におけるサーバ購入の約7割が新規導入ではなく既存サーバの更改だ。そして更改で必ず検討テーマとなるのがIT統合である。多くの企業は、IT統合により、スペースや電力を含めたコスト削減、そしてシステム拡張や変更の迅速化、管理作業の効率化を達成しようとしている。
サーバブレードはまず、高密度実装と高い電力効率でコスト削減に貢献する。また、サーバブレードではサーバの追加が、ブレードをエンクロージャ(シャーシ)の空きスロットに差し込めばよいため非常に簡単で、短時間に実施できる。日本HPのサーバブレードは、さらに最先端の管理機能を搭載している。例えばエンクロージャの前面にはInsight Displayという小型の液晶画面でシステムの動作状況を表示。トラブルが発生した場合は、HPがプリンタの開発で培ってきた技術情報を活かし、対処方法をアニメーションで分かりやすく示すようになっている。もちろん、遠隔的に統合監視を行うこともできる。
一方、x86サーバの仮想化技術は、サーバブレードだけではできない、サーバのより効率的な利用を可能にしてくれる。サーバブレードでは、一般的なサーバ1台をブレード1枚に縮小できるわけだが、サーバ仮想化技術を使うと、ブレード1枚をあたかも複数のサーバ機であるかのように利用できるからだ。サーバ仮想化はさらに、サーバのハードウェアを、OSおよびアプリケーションと切り離す効果をもたらす。これが意味することは、例えば利用しているアプリケーションで既存のサーバの能力が不足してきたと感じたら、より高速なサーバ機を手配して、そのアプリケーションの稼働を止めることなく新しいハードウェアに乗せかえられるということだ。
このように、サーバブレードとサーバ仮想化は、非常に相乗効果の高い技術なのだ。
しかし、それでもサーバ仮想化を検討する顧客のなかには、サーバブレード用のブレード1台1台の拡張性が劣るとして、ラックマウント型のサーバをまず考えようとするケースがある。そこで日本HPでは、ラックマウント型サーバにも真似のできない、非常に拡張性の高い“仮想化環境に適した”サーバブレードの「HP ProLiant BL495c Generation 5」(BL495c G5) を提供開始した。
仮想化への最適化はどう実現されているか |
BL495c G5は「HP BladeSystem c-Class」に組み込むことのできるサーバブレードだが、一般的なブレードと異なるさまざまな特長を備えている。
BL495c G5はハーフハイトというサイズからはうかがい知れない拡張性を備えている |
その筆頭に挙げられるのがクアッドコアAMD OpteronTM プロセッサの採用だ。同プロセッサは単一のダイに4つのコアを収めたネイティブなクアッドコアで、CPUコア、キャッシュ、浮動小数点演算に大幅な改良を加えたもの。デュアルコアAMD OpteronTM プロセッサに比べてパフォーマンスは平均57%向上した。それでも消費電力は低く抑えられ、結果としてワット性能は大幅に向上している。
クアッドコアAMD OpteronTM プロセッサでは、デュアルコアAMD OpteronTM プロセッサから搭載されているサーバ仮想化支援機能「AMD-VTM」(AMD-VirtualizationTM)がさらに強化されている。新たに加わったのは「ネステッドページング」という機能。これまでハイパーバイザが行っていた仮想OSのメモリアドレス空間の物理メモリへの割り付け作業を、プロセッサが実行できるようになった。サーバ仮想化支援機能を有効にすると、無効の場合と比較して94%のパフォーマンス向上が見られたケースもある。
このように、クアッドコアAMD OpteronTM プロセッサはサーバ仮想化に要求されるパフォーマンスと、低い消費電力を両立させたプロセッサなのだ。 BL495c G5では、これを最大2個、合計8コアを搭載可能だ。
2番目の特長は、16個のメインメモリスロットの搭載である。すべてのスロットを8Gbytesメモリモジュールで埋めれば、最大128Gbytesものメモリ容量を実現できる。だからといって実際に128Gbytesを搭載するケースがそれほど多いとは思われないが、メモリスロットの数が多いということは、メモリコストの削減に大きく寄与する。なぜなら、メモリモジュールは、容量の大きなものほどバイト単価が高いからだ。つまり、8Gbytesメモリモジュール1つよりも、4Gbytesモジュール2つを購入するほうがかなり安い。この価格の違いは、ブレードに搭載するメモリ量が32Gbytes、64Gbytesとなってくると大きく響いてくる。
具体的にいうと、本記事執筆時点におけるBL495c G5用のメモリモジュールの標準価格は、8Gメモリキット(4Gbytes×2)が26万2500円、16Gメモリキット(8Gbytes×2)は73万5000円だ。64Gbytesのメモリをブレード搭載したい場合、8スロットしかないと16Gメモリキットを4キット購入するほかに選択肢がないため、メモリ価格だけで294万円となる。だが、メモリスロットが16あれば、8Gメモリキットを使えるため、210万円になる。つまりブレードでメインメモリ64Gbytesの構成を組もうとすると、メモリスロットの数の違いが84万円の価格差につながる。さらにこの構成のBL495c G5をHP BladeSystem c7000に12本搭載すると、メモリの価格差だけで1000万円と、膨大な差になってくる。
第3の特長はハイパーバイザ用のブートディスクとして半導体ディスク(SSD)を採用していることだ。仮想化環境では、ハイパーバイザを迅速かつ安定的にブート、リブートできることが重要だ。ハードディスクのように駆動部分を持たないSSDは、故障率が少なく、メンテナンスの手間が省け、システム全体の可用性向上に貢献する。SSDは、消費電力量がハードディスクより大幅に低く、音も静かだというメリットもある。
BL495c G5は最新のSSDを搭載。SASドライブに比べ15倍の読み取り性能を発揮する。平均故障率は25%低下し、消費電力に至っては80%もの低減効果がある。
第4の特長はネットワークI/Oの充実だ。サーバ仮想化では、しばしばネットワークI/Oがハードウェア構成における重要なポイントになる。仮想マシンのネットワーク・トラフィックが、サーバ・ハードウェアのネットワーク・アダプタに集中するからだ。特に最近ではiSCSIストレージを仮想マシンの格納用に使うケースが増えている。この場合はストレージに対するアクセスもネットワーク経由で行うため、ネットワーク・アダプタの負担はさらに大きくなる。BL495c G5はオンボードで10Gbpsイーサネットを2ポート標準搭載。現在のサーバ機の大部分が1Gbpsイーサネットを使っているのに比べて伝送能力が大きく上回っている。
BL495c G5は、このようにラックマウントサーバを上回る拡張性を、ハーフサイズブレードに凝縮している。ブレードの内部を見ると非常に高密度な実装であることが分かるが、それもHP BladeSystem c-Classの高度な冷却性能が活用できるからだ。HP BladeSystem c-Classは、システム全体として省電力性、省スペース性に優れ、100V電源に対応するなど、柔軟性が非常に高いことも重要な特長だ。
サーバ管理ツールと仮想化ソフトウェアの統合 |
こうしたサーバ仮想化環境に最適化されたサーバブレードの価値を大きく高めるのが、物理的なサーバ・ハードウェアと仮想サーバをまとめて管理できるツールの存在だ。
日本HPのサーバには、「HP Systems Insight Manager」(SIM)というサーバ管理ソフトウェアがあるが、これを拡張する形で仮想環境の管理を行えるツール、「HP ProLiant Essentials Virtual Machine Management Pack」(VMM)も用意されている。これを使えば、サーバ仮想化ソフトウェアを、SIMコンソールから制御することができる。つまり1つの管理環境で、物理サーバと仮想サーバを関連付けた管理が可能になる。CPUやメモリ、ディスクの利用レベルが高い仮想サーバや物理サーバを簡単に特定でき、仮想サーバを稼働中に別の物理サーバへ移動したり、バックアップしたりすることができる。サーバの消費電力を監視し、これに基づいてサーバ仮想化の運用を最適化することも可能だ。もう1つのツール、「Server Migration Pack」を使えば、物理サーバから仮想サーバ、仮想サーバから別の仮想サーバ、仮想サーバから物理サーバへの変換作業が大幅に自動化できる。
サーバを仮想化したからといって、物理サーバとの統合管理が十分に行えないと、そのメリットを十分に生かした安定的な運用は望めない。サーバ仮想化を強く意識して設計されたBL495c G5とSIM、VMM、そしてServer Migration Packは最強の組み合わせだ。
提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア 営業本部
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2008年11月28日