IBMが提唱する基幹データの新たな生かし方
ビッグデータ? 中堅企業にはいますぐできるBIがある
2011/11/18
「ビッグデータ」という言葉以前に、一般的な中堅企業は、ビジネスの競争力強化に役立てられるデータを、基幹システムをはじめとしてすでに蓄積している。本質的な課題は、データをエンドユーザーが機動的に、楽に分析できるような手段を提供することだ。しかし、その手段を提供するためのシステムがIT全体を複雑にし、運用負荷が大きくなることでサービス・レベルが落ちてしまっては本末転倒である。この点で、日本IBMはどんな支援ができるのか。日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部のキーマンに聞いた
すでに手にしているデータを活用するということ
「ビッグデータ」が話題になっている。これまで分析することを考えなかったような大量のデータを分析できるようになったことで、さまざまな業界のビジネスに新たな手法を見出せるのではないかという期待がその根底にある。しかし、特に中堅以下の企業にとっては、それ以前にできることがたくさんある。
すでに手にしているデータを活用することだ。企業の業務システムには、日々大量のデータが蓄積されている。その活用の仕方を工夫することで、経営判断の迅速化とその精度の向上や、競争力の強化につなげられる可能性がある。
「昔からそんなことはやっている」と思う人は多いに違いない。いわゆる「EUC (エンド・ユーザー・コン ピューティング)」で、メインフレームから定期的に取得したデータを加工し、それをファイルサーバに置いてExcelなどで各人が好みのやり方で見るということは、たしかにはるか昔から広く行われている。だが、ビジネスの状況を大まかに把握することしか行われていない場合も多い。できるだけリアルタイムの詳細なデータを、ビジネス上の次のアクションにつながる形で分析する、このことがいま、求められている。
豊富な実績がありながら、とっても新しいBIツール
上記のような、ビジネスに直結する中堅企業の機動的なBIのために、日本IBMが提唱しているソリューションの1つに、「IBM i」と「IBM DB2 Web Query for i」の組み合わせがある。日本IBMはこれに無償サービスを加えて、これを推進している。
DB2 Web Queryは、Webブラウザからリアルタイムに基幹業務のデータを照会・分析できるBIツールだ。その名のとおり、DB2に対して問い合わせし、レポートを簡単に作成して自動的にエンドユーザーに提供できる。レポート作成にはSQLや特殊なレポート言語などを覚える必要はない、すべてマウスの操作でグラフィカルに行える。エンドユーザーも専用端末を使う必要はなく、ユーザーのPCにクライアントソフトウェアを導入する必要もない。
誰でも、セキュリティ要件が許す限り、どこからでも簡単にデータを取り出すことができる。いったんレポートを定義してしまえば、IT部門がエンドユーザーからの個々のリクエストに応じて情報を用意する作業は不要で、エンドユーザーが必要に応じて自らデータを取り出せるため、タイムラグが生じることはない。また、これまで予算やシステムの制限によって一部のユーザーにしか提供出来なかった情報も、広く提供できるようになる。
DB2 Web Queryでは、既存のDB2に対する問い合わせ(データベースクエリ)を生かしながら、レポートを定義できる。標準搭載の「レポートアシスタント」「グラフアシスタント」を使って、クロス集計を含むさまざまな表/グラフ表現を定義できる。パラメータつきレポートを作成すれば、開発者が作成したレポートについて、エンドユーザーがプルダウンリストや数字入力でパラメータを入力し、複数の角度からデータを見ることができる。Excel上で直接レポートを作成する機能もある。Microsoft SQL Serverなどの他のデータベースからデータを定期的にロードして、レポートに組み込むことも可能だ。
日本IBM
システム製品事業 パワーシステム事業部
IBM i営業推進 部長
伊藤博文氏
レポートはWebサーバ上に置いてWebブラウザを使いアクセスさせることができる。また、ExcelやPDFなど、複数の形式でレポートを作成し、定期的に自動配信することも可能だ。ユーザーの職務や立場に応じて異なるレポートを提供することも可能。オプションの「DB2アクティブ・レポート」を使うと、ユーザーはオフラインでソートやグラフ作成などの作業ができるようになる。DB2上のデータをリアルタイムに使用して、ドリルダウンも行える。
「経済環境が厳しいなか、自社のどこがどのように弱点となっており、強化すべきなのかを、経営レベルで見るための有効なソリューションとして使える。製造業では、最近小ロットで高い品質を求められるケースが増えている。製造情報について、10年以上のトラッキングが中堅企業に求められるケースもあり、ある企業では、製造設備にシステムを直結し、生産管理で活用することで、不良品情報や稼働情報をリアルタイムで確認できるようになっている」と、日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部 IBM i営業推進 部長の伊藤博文氏は説明する。
IBM iを活用することのメリットとは
DB2 Web Queryは新しい製品ではなく、すでに広く使われている実績に優れたツールだ。そして、IBM iだけでなく、さまざまなプラットフォーム上で提供されている。では、なぜIBM iとDB2 Web Query for iの組み合わせを日本IBMでは推進しているのか。
その理由を、日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部 理事 事業部長の高橋信氏は、もともとパワーシステムとIBM iの組み合わせは運用負荷が非常に軽いからだと説明する。
通常、BIのシステムを導入しようとすると、多数のサーバが必要になる。ETLサーバ、データベースサーバ、レポートサーバ、Webサーバ、OLAPサーバなどだ。サーバハードウェアが最初から多数必要だと、初期導入コストが大きくなってしまう。データ分析のために多大なコストを正当化するのは難しい。
日本IBM
システム製品事業 パワーシステム事業部
理事 事業部長
高橋信氏
一方、IBM iでは、1台ですべてをまかなうことができる。1台のIBM i上で、DB2からメタデータサーバ、Webサーバ、レポート配布サーバまで、あらゆるプロセスが動作する。Webアプリケーションサーバについても、このプラットフォームに統合されているものを使うため、コストを抑えられる。ソフトウェアライセンスの観点でも、基本機能のみでスタートし、オプション機能を後で追加していくことが可能だ。利用の拡大に合わせてユーザー数を増やしていくこともできる。
AS/400の流れをくむ堅牢さを保ちながら、POWER7という最新のプロセッサを搭載したIBM iを1台使うだけでいいということは、すなわち、最近よく聞かれる「アプライアンス」を真の意味で実現しているともいえる。
この1、2年、特定用途のソフトウェアを(通常1台の)サーバハードウェアに組み込んで構成済みとし、「○○アプライアンス」と名付けた製品が出回るようになってきた。しかし、こうした製品は、ハードウェアの数こそ1台にまとめられたとしても、一般的なPCサーバに求められる複雑な運用管理作業が軽減されることはない。
IBM iはこの点で一般的なPCサーバとまったく異なる。運用管理を特別に意識しなくても、半ば自動的に稼働し続けるような製品であることは、多くの実績が証明している。データベースを含め、管理者がいなくても動いているケースは多い。PCサーバだと、ときどき再起動しなければならないことがあるが、IBM iでは、例えば1年以上リブートせず無停止で稼働し続けているといったことは当たり前だという。こうしたことは、TCOに直接影響を与える。
セキュリティについても同じことがいえる。「IBM iではこれまで、例えば仮想化機能であるPowerVMに、ぜい弱性は1件も発見されていない」(高橋氏)。外部から許可なくシステムに侵入することは非常に困難で、IBM iを対象とした重大なセキュリティ事件はまったく報告されていない。PC端末はすべてウイルスに感染し、IBM iだけが感染せずに残ったという例もある。セキュリティ確保を最優先課題とする企業にとっては、この強固なセキュリティだけをとっても、非常に大きなメリットだといえる。
さらにいえば、IBM iを基幹業務用に使っている企業なら、データはDB2に保存されているはずだ。従って、同一のIBM i上でDB2 Web Query for iを動かせば、文字どおりリアルタイムにデータを引き出して、新鮮なデータを随時分析対象とすることができる。定期的にデータを引き出すような仕組みで生じるタイムラグは発生しない。
IBM iを使いこなしている人にも、「未体験」の人にも
日本IBMでは、「IBM Power 720 Express」と「IBM DB2 Web Query for i」 をパッケージした「IBM i for Business Intelligence」を提供している。このパッケージでは、「IBM i for Business Intelligenceスタートアップ支援サービス(2日間)」 が無償で提供される。システム導入や初期設定の支援、レポート作成研修などが含まれていて、このシステムを即座にビジネスに生かせるのが大きな特徴だ。
では、IBM iを使ったことのない企業にとって、IBM iとDB2 Web Query for iの組み合わせはどのような意味を持つか。前出の伊藤氏は、「まずBIで、IBM iの堅牢性や高い管理性を体験できる」と話す。
旧来の国産メインフレームを使い続けている企業は、例外なく高いメンテナンスコストに苦しんでいる。この状況から脱するべく、移行を検討している企業は多い。だがいきなり移行しようとしてもリスクが高く、なかなか進まない。「いきなりではなく、日々の経営に使えるデータをつくるシステムとして、IBM iをまず使ってもらいたい」という。BIシステムとして使いながら、プラットフォームの信頼性や管理性を確認し、さらにCOBOLのコンバージョンテストを進めるなど、リスクを抑えた段階的な移行が可能だというのだ。
基幹業務を支えるサーバとして、IBM iは大きなメリットを備えている。パートナーによるサポートのシステムが出来上がっており、これまでの実績によるとハードウェアの保守期間は10年超のケースもあり非常に長い。保守期間が短いとアプリケーション改修や検証に大きなコストが掛かり、TCOを大きく押し上げることになる。
一方、すでにIBM iを使っている企業はどうか。すでに基幹業務にIBM iを使っているなら、災害対策を目的としてこのパッケージを導入するシナリオが考えられるという。
事業継続計画(BCP)を検討する企業は急増している。ところがすでにBCPを策定している企業でも、データをバックアップテープから復旧するテストを実施していないケースが非常に多い。コンプライアンス上、テスト環境を備えることが求められていても、実現できていないことがよくある。そこで、IBM i for Business Intelligenceを予備機として導入し、普段はBIシステムとして有効に活用しながら、テープからデータを戻すテストを実施することができる。
ビジネスにかかわるすべての人が、それぞれの立場で改善や的確な判断を行うために参照できる、確実な情報を提供してくれるツールとなるのがIBM iとIBM DB2 Web Query for i によるIBM i for Business Intelligenceだ。ITシステムにつきまといがちな設定や運用の面倒さとは無縁。文字どおりビジネスのためのツール(道具)として使える。これが、市場によく見られるひとりよがりなBIソリューションとの、決定的な違いだ。
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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2011年12月17日