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@IT > Webサービス時代のプラットフォームの条件(1) |
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第1回 次世代プラットフォームはWebサービスで決まり
ビジネスのスタイルが経済や社会情勢に応じてダイナミックに変貌していくのと同様に、コンピューティングのパラダイムも、インフラストラクチャとなる技術の変遷によって変化していく。コンピュータが高価であった時代は、メインフレームでのバッチ処理かダム端末ベースのオンライン・システムがすべてであった。パソコンとLANが普及すると、クライアント/サーバ・システム全盛の時代がやってきた。Web技術がイントラネットでも広く使われるようになった現在の主流は、データベース・サーバ、アプリケーション・サーバ(ビジネスロジック)、Webサーバ/Webブラウザ(ユーザーインターフェイス)の3要素で構成される3階層システムである。 そしてまもなく到来するのが、Webサービス時代だ。WebサービスはSOAP(Simple Object Access Protocol)を通してXML(eXtensible Markup Language)メッセージを交換するプロセス間通信の方式であり、具体的な方式こそ異なるものの、その目的とするところは、RPC(Remote Procedure Call)、CORBA(Common Object Request Broker Architecture)、DCOM(Distributed Component Object Model)などと同じだ。SOAPはHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)またはSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)をベースにしているため、ファイアウォールなどのセキュリティ機構を容易に通過することができ、Web技術を利用した現在のBtoBなどによる企業間通信の実現には、最適なメカニズムとなる。
Webサービス時代を迎えて、3階層システム内でビジネスロジックを担当しているアプリケーション・サーバの役割は、イントラネット(企業内)からインターネット(企業間)へと拡大されることになる(図1)。その結果、Webサーバ(HTTPサーバ)からデータやコントロールを受け取って、WebコンテナやEJB(Enterprise Java Beans)コンテナに処理を引き継ぐという根本的な役割は変わらないものの、その役割をどう果たすかについては、新たな条件(前提事項)が加わることになった。
まず第1の最低限の条件として、Webサービス時代のアプリケーション・サーバは、ほかのアプリケーション・サーバと正しくメッセージをやりとりできなければならない。理屈としては、SOAPやUDDI(Universal Description, Discovery and Integration)に準拠していれば通信は成立するはずなのだが、現実には必ずしもそうではないことは、現場の技術者ならだれもが知っていることだろう。最も安全で確実なのは、市場シェアの高い製品を選ぶことだろう。 2番目は、アプリケーション・サーバのスケーラビリティが、十分に高くなければならないということだ。Webサービスでは、人間が操作をするWebブラウザではなく、ほかのコンピュータ上で動作するプログラムから直接メッセージが送られる。このため、非常に短い時間に多数のトランザクションが発生する可能性があり、パフォーマンスの高さと非同期メッセージング(メッセージ連携)への対応が欠かせない条件となる。 そして第3の条件がセキュリティだ。インターネットは基本的に非セキュアなネットワークなので、ビジネスデータのやり取りには、認証と暗号化の仕組みが不可欠となる。セキュリティ確保の具体的な方式は、ユーザーや業務ごとに異なるので、この機能の交換が容易なプラグイン方式になっていることが極めて望ましい。
このような条件を満たすソフトウェアの1つとして挙げられるのが、日本アイ・ビー・エムのIBM WebSphereソフトウェア・プラットフォームである。全体で170を超える製品群は、“リーチとユーザー・エクスペリエンス”“ビジネス統合”“基盤とツール”の3つの領域で「Dynamic e-business」(Webサービス対応のeビジネスを、アイ・ビー・エムではこう呼んでいる)を具現化した(図2)。必要なものを組み合わせて使うスタイルになっているので、ビジネスのニーズや規模に応じて構成は自由に変更できる。
“リーチとユーザー・エクスペリエンス”には、ユーザーインターフェイスに関する製品が集められている。具体的にはポータル、パーソナライゼーション、パーベイシブ(いわゆるモバイル)、ボイス(音声による操作)といった機能だ。 2番目の領域は、“ビジネス統合”のエリアである。Webサービスに代表されるオープンかつ自由度の高いシステム連携と並行して、システム間の緊密な結合が要求される業務も数ある。このアプリケーション統合のエリアを代表する製品に「IBM MQSeries」があったが、新たに「WebSphere MQ」としてWebSphereプラットフォームの重要な一角を担うことになった。WebSphere MQには、ほかにワークフローやビジネス・インテグレーションを実現するための製品群も含まれており、BtoBコマースの心臓部として機能する。 3番目の領域、“基盤とツール”には、J2EE 1.2完全準拠のアプリケーション・サーバのIBM 「WebSphere Application Server V4.0」と開発ツール群が含まれる。WebSphere Application Serverには、アドバンスド・シングル・サーバ版、アドバンスド版、エンタープライズ版の3エディションがあり、Webサービスの利用が可能だ。
さきほど掲げたWebサービス時代のアプリケーション・サーバに求められる3つの条件を、WebSphere Application Serverはすべて備えている。 まず、有利なのは世界的にも日本国内でも非常に高い市場シェアを持っているという事実だ。前述したように、企業内で使用するだけなら別だが、Webサービスでほかの企業と接続するのであれば、世の中で広く受け入れられている製品を採用するに限る。 処理性能については、ServletとJSP用の出力キャッシュとなるDynaCacheやマルチ・サーバでのクラスタリング・サポートでしっかりと確保している。オープン系では、AIX、Solaris、HP-UX、Linux、Windows 2000/NT、メインフレームではiSeries、z/OS、OS/390と対応プラットフォームも多く、必要なパワーに応じてハードウェアを使い分けることも可能だ。非同期メッセージングには、WebSphere MQのほか、エンタープライズ版に装備されたMessage BeansとJMS Listener機能が活躍する。セキュリティ対策では、ユーザー独自のものをカスタム・ユーザー・レジストリとしてプラスできる点が魅力的だ。 開発ツールについては、2002年初めにリリースされた新製品「IBM WebSphere Studio Application Developer
for Windows V4.02」に、SOAP、UDDI、WSDLなどのWebサービス対応機能が組み込まれた。この開発ツールの詳細については、第2回で触れる予定だ。
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