自分たちが使いたいクラウドを作った
──CloudCore VPS/Hybridの狙いとは
2012/2/6
KDDIウェブコミュニケーションズは、ゲストOSのソフトウェア構成を全く変更することなく稼働可能な最新の完全仮想化技術であるKVMを利用し、高スペックでコストパフォーマンスに優れた仮想化ホスティングサービス「CloudCore VPS」、スタートアップビジネスから企業ホームページまでさまざまな構成に対応できるクラウドソリューション「CloudCore Hybrid」、そして開発者コミュニティのニーズに応える「開発者支援制度」という、3つのユニークなサービスを開始した。それぞれの特徴と狙いを聞く。
KDDIウェブコミュニケーションズの新サービスが、大きな反響を呼んでいる。仮想化ホスティングサービス「CloudCore VPS」は、リリース直後から開発者の間で話題となり、当初用意していたサーバリソースを発表から3日で売り切った。開発者コミュニティのためのミーティング用スペースやサーバを無償で貸し出す「開発者支援制度」にも多数の応募があり、勉強会などでの利用実績を積み重ねている。そして、新たにクラウドソリューション「CloudCore Hybrid」も開始した。
これら新サービスの狙いを聞いた。
圧倒的な高スペックと価格設定が大きな反響を呼んだ
CloudCore VPS
CloudCore VPSの特徴は、高スペックと価格設定である。CPU 1コア、メモリ2Gバイト、HDD 100Gバイトという高スペックを「月額945円から」利用できる(注:12カ月契約初年度月額費用割引キャンペーン適用時)というきわめてコストパフォーマンスに優れたサービスといえる。対象OSは2011年11月の発表時点ではCentOSに限られていたが、今後はUbuntu、FreeBSDなどに加え、他のサーバ環境をISOイメージにより持ち込む形の利用も可能とする予定だ。
SMB事業本部 ホスティング事業担当 副本部長 角 俊和 氏 |
KDDIウェブコミュニケーションズ SMB事業本部 ホスティング事業担当 副本部長 角俊和氏はCloudCore VPS開始後の状況について「反響はもの凄かった。Twitterでは3日で約1500のツイートが流れました。用意した在庫も3日でなくなってしまいました。それまで当社を知らなかった人が、今回のCloudCore VPSに注目してくれました」と話し、その手応えを感じているという(参考記事:「CloudCore」、KDDIウェブがリリース)。
なぜ大きな反響を呼んだのか。「一つは、最新の完全仮想化技術であるKVMを利用したこと、そしてもう一つは、利用できるスペックに対しての価格、要するにコストパフォーマンスが優れていることだと思います」(角氏)
KVMは、Linuxが搭載するオープンソースの仮想化技術であることや、対象OSが幅広いことから注目されている。では、このKVMがCloudCore VPSの特徴の一つである高スペックにどのように影響しているのだろうか。
「今回、KVMを利用して、フルスクラッチで自社開発しました。開発者である私自身がKVMを利用したクラウドサービスを使いたいと思っていたためです。完全仮想化により、ハードウェアやOS環境まで独立した環境を提供することができ、高スペックが実現しました」(角氏)
そして、もう一つの特徴である価格設定については、「今回、ハードウェアの選定を非常に綿密に行い、サーバ群を収容するラックあたりのコストパフォーマンスを良くする方法をシビアに検討しました。メモリ一枚、HDD一個に至るまで、どの部品がどれだけ電力を消費しているかを細かく調べました」(角氏)。コストパフォーマンスを高めるためのギリギリを追求する努力を地道に実行した。その結果として、今回の価格設定が可能になり、大きな反響につながったようだ。
同社がCloudCore VPSについて強調するのは「今までのサーバと同様に扱える」ということだ。クラウドサービスを使いこなすには、新たなスキルが必要となる場合が多い。クラウドサービスごとに異なる新たな概念や、その利用ノウハウが求められるからだ。だが、CloudCore VPSは、KVMを用いリソースの競合を可能な限り排除したことにより自由度の高いサーバ環境となっている。そのため、仮想化されたサーバを、専用サーバのようにリソースを占有しているのと同じような感覚で使うことができ、今まで物理サーバを扱ってきたスキルをそのまま転用できる。開発エンジニアにとって、アプリケーションやサービスの開発という部分に集中できるサービスといえる。
ギーク層のニーズに応えた「開発者支援制度」
CloudCore VPSと同時に「開発者支援制度」をスタートさせたことも、反響が大きかった理由の一つだ。開発者支援制度とは、開発者コミュニティに対して同社のセミナールームとサーバスペースを無償で貸し出すというものだ。参加資格も、ごく緩やかなものだ。3名以上のメンバーがいて、活動している様子がWebなどで確認できればよい。
東京・麹町にある同社セミナールーム。開発者支援制度ではセミナールームとサーバスペースを無償で貸し出しているという |
東京周辺では、プログラミング言語関連のコミュニティ、OS関連のコミュニティ、ベンチャー経営者の集まり、CMSのコミュニティ、Android開発者コミュニティなど、数々のコミュニティがあり、勉強会やハッカソンなど数多くのイベントが毎日のように開催されている。ただし、良い会場がなかなか見つからない場合が多々あるという。また、会場やサーバスペースを無償で利用できることは、コミュニティ側から見ると金銭管理の事務負担が減らせる効果も大きい。
こうした事情から、この「開発者支援制度」への問い合わせも多数来ているという。Ruby開発者コミュニティ「Asakusa.rb」など、多くの開発者コミュニティが申し込み、セミナールームを借りてイベントを開催している。
先に説明したCloudCore VPSは、高スペックのクラウドサービスとして、特にエンジニアたちからの注目を集めた。そしてこの「開発者支援制度」もまた、コミュニティ活動を行うエンジニアたちが求めていたものを提供するサービスなのである。
こうした取り組みは、一見「“ギーク層”への大判振る舞い」のように見えるかもしれない。だが「私たちが得るものは多い」と角氏は話す。
「当社は『CPI』というブランドでホスティング事業をしてきましたが、必ずしも多くのエンジニアに知られていたわけではありませんでした。それが今回のサービス発表で一挙に有名になった。マーケティング上の意味は大きいと思います。それに、開発者コミュニティの活動が盛んな東京で、第一線のエンジニアの方々が私たちの会社に出入りすること自体にも、大きなメリットがあると考えています」(角氏)
“ギーク層”を対象とすることで、口コミにより同社のサービスの評判が広まることや、また個人や小企業で活動しているWebエンジニアが顧客に提案するサービスインフラとして同社のサービスを使ってくれるという効果を期待できるのである。
スタートアップビジネスのニーズに応える
「CloudCore Hybrid」
そして、同社が打ち出す新たなサービスが、CloudCore VPSのインフラを使いクラウドサーバを提供する、「CloudCore Hybrid」である。同社の専任スタッフが、顧客のためのクラウドソリューションを無料で提案してくれたり、サーバ環境の構築、運用・保守までを同社がすべて引き受けてくれるフルマネージドサービスも提供するのが特徴といえる。
「CloudCore VPSが自力でサーバを扱えるエンジニア向けなのに対して、CloudCore Hybridはビジネスのためのサーバ提供はもちろんのこと、運用・保守においても当社がお引き受けするコンセプトのサービスです。インフラ担当のエンジニアを置くことが難しい中小企業に、インフラはお任せいただき、“開発や自社の事業に専念してもらう”ことがコンセプトだと考えています」(角氏)
専任スタッフが提案することについて、「私たちが蓄積してきたベストプラクティスの組み合わせで、お客さまの要望のかなりの部分を解決できます。それにCloudCore VPSのために整備したコストパフォーマンスが良いインフラもある。これらの組み合わせにより、お客さまに納得いただけるサーバ構築の提案と運用、そして低価格での提案が可能になります」(角氏)と自信を覗かせる。
これまで蓄積してきたノウハウから、用途に応じたサーバ構成を提案して運用できるのが強みという(クリックで拡大) |
CloudCore Hybridのクラウドサーバプランでは、すべてのプランで初期費用が無料、下位プランの月額費用も6930円と料金も魅力的だ。専任スタッフが顧客の要件にあったものを提案してくれるので、あらかじめパッケージ化され高額な設定になっているサービスと違い安心感がある。専任のエンジニアを採用したり高額な費用を出すことが難しい中小企業にとって、最適なクラウドサービスといえる。
同社が度々強調するのは、同社のCloudCore VPS、CloudCore Hybridというサービスが「使い手にとって優しいサービス」「開発者や中小企業に最も適したサービス」であることだ。
CloudCore VPS では、開発者にとって最適なサーバ環境を、今のスキルのままで無理のない費用で提供している。CloudCore Hybridでは、サーバ環境の構築、運用、保守などの専門性が高い部分を、同社専任スタッフが顧客企業に替わり担ってくれる。費用や人材を確保することが難しい中小企業や開発者にとって、KDDIウェブコミュニケーションズのクラウドブランド『CloudCore』は、強い味方となってくれることだろう。
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提供:株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2012年3月5日