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WBSの作り方と、
Microsoft Projectによる再利用術

 

いまやプロジェクトに欠かせないWBS(Work Breakdown Structure)だが、作成しても現場できちんと利用されないことがある。せっかく苦労して作ったWBSがなぜ利用されないのか。利用されるようなWBSを作成するコツはあるのか。さらに、それをいかに活用すればいいのか、そのノウハウを紹介する。

  WBSが活用されない

 WBSとは、プロジェクトで実施する作業を細分化し、階層構造で示した表のことです。プロジェクト管理の基礎になるものでありながら、国内ではあまり活用されていないように感じます。ここではWBSの目的は何なのか、どうすれば現場が活用できるWBSを作れるのかを紹介します。

 WBSは、プロジェクト全体を大項目レベルに分割して、各項目について、より細かい単位に段階的に詳細化・階層化を行い、最下層には具体的な作業項目を記載したリストです。このようなWBSを、業務ごとのテンプレートとして標準化していくことで、企業における開発業務の標準化が実現されます。

 しかし実際は、タスクの羅列のみのWBSテンプレートは、あまり現場で活用されることはありません。

 WBSテンプレートを整備するメリットは、組織力の強化です。WBSテンプレートを整備することで、開発業務が標準化され、個人のスキルに依存することなく、組織全体で効率的に業務を進められることが可能になります。業務の属人性を排除することが、WBSテンプレートの目的なのです。組織全体で業務を実行できることで、企業は人件費やリスクの削減を実現できます。では、どうすれば現場に浸透するWBSテンプレートが構築できるのでしょうか。

  開発業務の標準化がもたらすもの?

 開発業務の標準化のメリットは何でしょうか。個人のスキルに依存することなく、組織として仕事を遂行できる体制を作ることこそが標準化のメリットです。いわゆる「組織力」とは業務の標準化により生まれてきます。

仕事レベルの向上 社員が持っている固有のスキルや能力に依存することなく、常に一定レベルの仕事が実現する
無駄の削減 人材の流動性に対応することができ、コストが削減できる
個人負荷の軽減 仕事を定量化・定型化させることで、業務を効率化能率化させ、メンバーの負荷を減らす
失敗リスクの低減 重要な作業の抜け、漏れを予防し、プロジェクトの失敗原因を極小化することができる
ノウハウの蓄積と
再利用
うまくいったプロジェクトのWBSをテンプレートにフィードバックすることで、開発業務のノウハウの洗練と再利用が進む
開発業務の標準化がもたらすメリット

 開発業務の標準化はWBSテンプレートの構築が重要です。しかし、それではなぜ、WBSテンプレートがあまり活用されないのでしょうか。それは一般にWBSテンプレートに記載される情報量が少ないからです。

 一般的なWBSは圧倒的に情報量が不足しています。記載されるのは、項目と成果物、担当者くらいまでの情報です。もちろんこのようなレベルの情報でも役には立ちますが、現場の活用を促進していくためには、さらに詳細な情報が必要です。

WBS
番号
大項目
中項目
小項目
成果物
担当者
1. 開発計画        
1.1   顧客
ヒアリング
     
1.1.1     ヒアリングの
実施
ヒアリング
シート
担当営業、
担当SE
1.1.2     チーム
レビュー実施
リスク
マトリックス
担当営業、担当SE、グループマネージャ、開発マネージャ
1,1.3     リスク
トリアージ
リスク影響度マトリックス PMO
一般的なWBSの例

 WBSテンプレートを活用して業務の標準化に成功している企業は、非常に詳細な情報をWBSに記載しています。プロジェクトは、よく登山にたとえられます。WBSテンプレートは、登山ガイドブックに当たるものです。

 ガイドブックの整備されていない山では、人によっては徒歩で、人によっては自動車で、あるいはロッククライミングでと、皆勝手に山頂を目指すかもしれません。当然誰が山頂に一番近いかといった客観的な事実は、判断するのが難しいものです。

 ガイドブックに従って、誰でも同じ登山路で同じように登るとしたら、どのくらいの時間で登頂できそうか、雨が降りそうなとき対処法は、季節によって登山ルートに変更はあるのかどうか、日没までにあまり時間がない場合、どこで引き返すべきかの判断をすべきなのか、といった登山途中での客観的な判断がつきやすくなります。

 WBSテンプレートとは、プロジェクトという大きな山を登るための詳細なルートガイドであり、必要な装備や、メンバーを指定してある行動計画です。

 入山前には、どこに届け出を出す必要があるのか、雨が降ったらどこで休憩すべきか、道が崩れていたらどの迂回(うかい)ルートを通るべきなのか、登山者にとって必要になるすべての情報が記載されているものになります。適格なガイドブックに従いさえすれば、初心者でもある程度の登山は可能になります。また、ガイドブックは年々更新されるべきものです。

 先人の苦労の貴重な体験記をガイドに生かすことができれば、後に続く登山者はより快適に山登りを楽しむことができるでしょう。つまり、情報がリッチなWBSテンプレートがあれば、初めてプロジェクトという山に挑むプロジェクトマネージャにとっても、大きな武器になります。

  開発業務の標準化

 企業における業務を大きく2つに分類すると、「プロジェクト型業務」と「オペレーション業務」とがあります。

 一般に定型的なオペレーション業務は標準業務フローが作りやすいものです。しかし、プロジェクト型業務に関しては、多くが「一度限りの業務である」ため、すべてを標準化することは難しいものです。

 そのため、プロジェクト管理の多くをプロジェクトマネージャの経験や手腕に依存しています。また、プロジェクトは通常、さまざまなあいまいさを含んでいるため、フローを定型化しにくい側面があります。そのためベテランの社員が持つ、さまざまなノウハウが継承されることが少なく、人材育成や活用の課題となっていました。

 しかし、開発業務フローの標準化がすべてできていなくても、多くの企業はドキュメントの標準化は実施しているのではないでしょうか。

 開発における「標準化規約」が定義され、工程別ドキュメントの記述要領、記述例、コーディング規約、ファイル命名規約、などは定義されていると思います。バージョン管理の規約といった、運用管理上のルールもあることでしょう。このようなさまざまな規約と、企業における標準工程や標準マイルストーンを横断的に結んだものが、現場が必要とするWBSテンプレートです。

  再利用しやすいWBSテンプレート

 タスクを羅列化しただけのWBSは、現場ではなかなか利用されません。現実的で再利用性の高い情報量の豊富なテンプレートでなければ、現場の作業が増加してしまい使われません。

 「Microsoft Office Project」(以下、Microsoft Project)のようなプロジェクト管理専用のソフトウェアを使うと、WBSの再利用性が圧倒的に高まります。Microsoft ProjectはWBS上の各タスクを依存関係でリンクします。つまり、ある業務が終わったら、次に何の業務を行わなければならないのかを事前に記載していくのです(画面1)。

画面1
画面1 あらかじめある業務が終わったら、次に何の業務を行わなければならないのかを事前に記載しておく。このようにタスクをリンクしておくだけでも、プロジェクト管理の生産性は向上する (図版をクリックすると拡大表示)

 このように、すべてのタスクをリンクしてテンプレートを作成しておくと、例えばプロジェクトの開始日を指定すると、自動的にすべてのタスクの開始日、終了日が、祝祭日や会社の休日をスキップして自動計算されます。依存関係でタスクをつないでおくことで、計画作成や再計画の作業が圧倒的にスピーディになります。また、会社の休日をテンプレートに登録しておくことで、作業計画の作成も容易になります(画面2)。

画面2
画面2 テンプレート作成後、プロジェクトの開始日を指定すると、画面右側にあるように、自動的にスケジュールを計算し、表示できる (図版をクリックすると拡大表示)

 Microsoft Projectの中では、リソース名に「プロジェクト管理者」「アナリスト」といった仮の名前が記載されています。その業務を実施するのに必要な担当者のスキルがテンプレートに定義されています。

 Microsoft Projectにはすべてのメンバーの仕事のアサイン量や稼働状況、スキルをデーターベースとして保持できるので、最適なメンバーを探し出し、仮のリソースと置換して担当者のアサインが可能になります。

  メモの活用

 実際にWBSテンプレートを使いこなし、開発業務を標準化している企業では、各タスクに対して、とても詳細は情報の記載が「メモ」として追記されています。そのタスクを実施するのに必要となるツールがどこにあるのか、何を持ってタスクの達成とみなすのか、次に進むには誰の承認が必要なのかなど、実に詳細な記載がタスクにされています。

 このような詳細な作業指示を記載しておくことで、詳細な業務指示書として利用できるものになっています。初めてプロジェクトを担当する人材でも、スムーズに担当できるように作られているわけです。WBSは詳細であれば詳細であるほど、現場の利用率が高まります(画面3)。

画面3
画面3 用意されているメモを活用することで、テンプレートや使用するツールを指定しておくこともでき、後でそのタスクを担当するときになった際に分かりやすい (図版をクリックすると拡大表示)

 現場で利用されているWBSは、常に更新されます。優れた登山ガイドブックも同様です。新しい道ができるかもしれません。途中まで鉄道が開通するかもしれません。登山者にとって最適なルートガイドは、毎年更新が必要になります。

 それと同じように、終了したプロジェクトの結果をWBSに反映させることが重要です。当初の見積もりをどの程度超過したのか、足りなかったタスクは何か、そうした実際の情報によってWBSを常に更新するのです。そうすることで、次のプロジェクトのテンプレートとして活用することで、より精度の高い計画作成が可能になっていくのです。そして、そのように使い込んだテンプレートは、会社の財産となるのです。

  チームプレーにはWBSの共有が必要

 プロジェクト型の業務は大抵1人で実施するものではありません。多くはチームで実施するものです。チームで利用するなら、情報共有は必須です。

 チームプレーには、詳細な計画書が必要になります。いつ・誰が・何を・いつまでに、やらなければいけないのか、その全体を共有できるツールがWBSです。

 しかし、1人1人がばらばらにWBSを作成していては、プロジェクト全体を把握することはできません。WBSは標準化されてはじめて意味があるのです。組織力を向上させるためは、標準WBSテンプレートの構築が極めて重要になります。

WBSの作成、活用に参考になるWebページ
Microsoft Project 2007無償トレーニング実施中
Microsoft Office Project 2007の無償トレーニングを実施しています。ぜひご参加ください。
お客さまはこんなWBSテンプレートを使っています
Microsoft Office Projectのユーザーが作成した実際のテンプレートの解説ページ。各社がどのようなWBSテンプレートを作成しているかご紹介しています。
Microsoft Office Project 2007の使えるテンプレート
マイクロソフトのWebサイト上には、さまざまなユーザーのWBSテンプレートを公開しています。
これは使える! 初めてのWBSテンプレート作成ページ
システム開発会社のユーフィットが作成した実際のお客様のテンプートを公開して、さまざまなノウハウを解説しています。

提供:マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画
制作:@IT情報マネジメント編集部
掲載内容有効期限:2009年12月31日