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@IT > エンタープライズに挑戦するLinuxビジネス |
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―― 技術とサービスがNECソフトのコアコンピタンス 我々がシステムインテグレーション(SI)に積極的にLinuxを取り入れていきたい理由は、「技術力とサービス提供力に対してお客様からお金をいただく」のがNECソフトのコアコンピタンスだからです。 オープンソースの登場とともに、ソリューションの世界は大きく変わってきました。従来のようなデファクト・スタンダード製品による囲い込みや、セールス技術でのビジネスではなく、お客様にとって最適な技術やサービスをご満足いただけるかたちで提供できることが、ビジネスにおいて勝者となれる時代がやってきたと言えるでしょう。オープンソースという同じテクノロジ(=道具)を持ち、同じスタート位置に並んだ後は、技術力やサービス提供力が差別化となります。そのため我々は、いち早く技術優位で勝負する世界に飛び込み、真の技術力とサービス提供力を確立することが大事と考えています。それがLinuxにコミットする最大の理由です。
また、オープンソースを使ったSIでは、これまでのSIとは費用構造が変わってきます。お客様の意識として、これまでのSIではハードウェアとソフトウェアがそれぞれ1とすると、サービスも1くらいが妥当だろうという感覚をお持ちだったのではと思います。しかし、オープンソースではハードウェアやソフトウェアの価格が圧倒的に下がる一方で、ソフトウェアの作りこみが増える傾向にあります。そうするとサービスの比率が1から5や10に上がるわけです。お客様にはサービスに対して5や10を支払う習慣がないわけですから、当然ながら抵抗感があるでしょう。しかし、そこで本当に満足いただけるサービスを提供できるなら、お客様に納得いただけるはずなのです。そして、結果的にはお客様にとってリーズナブルで、我々にとっても利益があるビジネスが成立するのです。本当に満足いただけるサービスを提供するには、お客様の要求にあったサービスを迅速に構築できる優れた技術力がなければ実現しません。我々は早くそこへ到達するために、積極的にLinuxに取り組んでいます。 ―― コミュニティも積極的に支援したい
―― Linuxの良さをSIに活かす Linuxはエンタープライズに適用できるかという議論がありますが、我々は可能と思っています。ただ、ミッションクリティカルな部分では、適していると断言できない部分があり、使い分けていくことも大事です。一方、Linuxはコミュニティがその成長を支えていますが、主要ベンダーはエンタープライズ向けの機能強化や、ミッションクリティカル向けの機能強化を積極的に推進しており、その改善のスピードには目を見張るものがあります。今後、これまでミッションクリティカルが占めてきた業務サーバ分野への適用の不安は、加速度的に減少することでしょう。 実際、NECソフトのLinuxを使ったソリューションでの実績は、Webサーバやデータベース、メールサーバといったインフラの部分ではすでに一般的になってきており、そこから1つ上のアプリケーション・サーバ(以下APサーバ)やセキュリティ・サーバといった、インフラの上に付加価値を乗せるところまでステップアップしてきました。業務システムでの実績も増えつつあり、これは、Linuxが業務システムを構築できる環境に成長してきた証だと考えています。 また、Linuxが圧倒的に優位な分野があります。それは大容量の処理や高速処理の世界です。オープンソースを使うと、大幅にシステムトータルの価格が下がります。例えば、商用UNIXマシンに比べてインテルアーキテクチャのマシンは圧倒的に安価です。しかし、安いからといってパフォーマンスが悪いわけではありません。かえって、インテルマシンのほうが速い場合があります。Linuxとインテルアーキテクチャが相まって、優れたコストパフォーマンスを得られるケースが多くあります。 また、低コストで量産したい場合、例えば組み込みの世界にも適しているでしょう。小さなハードを大量に作る場合は1個の生産コストが大きく影響しますので、OSのライセンスが不要であるメリットは大きいのです。このメリットはオープンソースのアプリケーションの活用によってさらに高まります。もちろん特殊なハードウェアの実装や、特定のアプリケーションなど個々のニーズに応じて改造が行えるメリットが重要であることは言うまでもありません。具体的には、専用用途端末、ハンディーターミナルなどのクライアント数が多いものに有効でしょう。NECソフトでは、医療事務端末の開発や、販売/流通系のEOBシステムの構築ですでに実績があります。 ―― 特殊分野でのLinux さらには、VALWAYテクノロジーセンターという研究開発部門を設置し、ここではHPCクラスタを使ったバイオの研究開発を行っています。バイオ技術者とSEが一緒になって、バイオ系のアプリケーションを開発し、お客様に提供することも可能になっています。 ―― 新しい技術のリサーチも怠らない
NECソフトが提供する5つのソリューションメニューは、先にも述べた通り、多くの案件を経験した上で蓄積された技術やノウハウを、お客様にサービスとして提供するものです。これらは、「APサーバソリューション」、「高速メール配信ソリューション」、「コンテンツセキュリティソリューション」、「高可用性サーバソリューション」、「HPCソリューション」の5つです。 これらの基本となるソリューションメニューをベースに、お客様に最適なソリューションの立案を行っていきます。また、今後とも実績に基づいたソリューションをさらに増やしていく予定です。
弊社では、今後Linuxのエンジニアを大幅に増強していくことを計画していますが、「Linuxですべてをやります」ということではありません。システム構築において、何が何でもLinuxが良いということは当然ありません。お客様の要件に合わせて、OSの適材適所を考えることが重要なのです。
それぞれの業種、業務に精通したSE部隊にもLinuxが分かる人材を置いていきたいと考えています。それは、お客様にとってより良いシステム、より高いコストパフォーマンス、より良いサービスを提供することを主眼に、Linuxの採用を検討可能にするためです。そして、より深い技術については、Linuxソリューションセンターが徹底的にサポートします。豊富な業務、業種に精通したエンジニアと、コアなテクノロジに精通したエンジニアのコラボレーションでLinuxソリューションを成功に導くというスキームであるわけです。 また、社内教育への取組みも熱心に行っています。我々は昨年、中立的立場からLinux技術者の認定試験を実施している特定非営利活動法人である「LPI-J(The Linux Professional Institute Japan)」のスポンサーになりましたが、社内では以前よりLPIの受験を可能にしています。教育コースとしては、自社開発のコースのほかにTurbo Linux認定のTurbo-CE教育コースも実施しており、来年度に向けて教育コースの拡充を図っていく予定です。
ただ、もちろんLinux OSの教育だけでは不十分です。周辺の技術、例えばほかのオープンソースソフトウェアやJava、通信系などさまざまな知識が必要です。これらについても自社開発の教育コースや、他社の教育コースなどを活用したプログラムで補うようにしています。
当社には、すでに多くのUNIX系技術者がいます。Linux系技術者はまだ多くはないですが、Linuxの案件にはUNIX系の人材をすぐに転換できる状況にあります。 UNIXに造詣が深いエンジニアの中には、アプリケーション開発の技術者もいれば、エンタープライズ系のSIの経験が深い技術者もいます。一方では、UNIXのカーネルを読んだり、ドライバやハードウェアまわりのコードを書くエンジニアもいます。できないレンジがないと言えるくらい、UNIX系OSに関しては総合的な技術力をもっています。なぜなら、NECがUNIXへの取組みをスタートしたときから、NECソフトは中心的な役割を担いながら、これまで一緒に取り組んできたからです。 一方で、当社には業種や業務に精通したSEがいます。プロジェクト管理の能力、商用アプリの適用の仕方、大規模案件の経験、これをもっている会社は多くないでしょう。さまざまなOS基盤と業種、業務を理解したSIチームが、顧客のニーズに合わせ、どうLinuxを適用して、そのメリットを最大限に出すかという部分で力を発揮できます。言うなれば「お客様メリット・ドリブン」のシステム構築ができるといえるでしょう。 今年は、内部技術力の更なる強化に努める一方で、これまで蓄積したLinuxに関する技術力とノウハウを、業種、業務分野へと横展開します。より良い技術とサービスをお客様にご提供することを主眼に、今後も積極的なチャレンジを行っていきます。
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