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Webアプリサーバ市場に活性化の起爆剤、
オラクルからOracle9iAS Java Edition
〜低コスト・高機能の新版でオラクルが猛攻撃〜 |
5月19日、日本オラクルからWebアプリケーション・サーバ市場を活性化させる起爆剤「Oracle9i
Application Server Java Edition」が投入された。競合製品に比べ半値の価格設定や、パートナー企業とユーザーへの無償サービスが提供される。始動したばかりの日本オラクルのアプリケーション・サーバの本格的な販売の強化戦略について詳細を紹介する。 |
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情報技術の製品世界には、それぞれ“形勢”というものがある。生まれたての揺籃期(ようらんき)が支配しているのは混沌だ。見る者によって推す製品が異なり、優劣つけがたい状況が続く。やがてその中からいずれかが抜け出し、徐々に順列がつき始める。かつてリレーショナル・データベースがそうだった。
そのバトルが現在、Webアプリケーション・サーバの世界で繰り広げられている。いまはようやく揺籃期を過ぎようというところだろうか。それは後から今日を振り返ってみないことには、本当のところは分からない。しかし、一度形勢が決まってしまえば、そこからの巻き返しが容易でなくなるのは誰もが分かっている。このジャンルではしばらく熾烈な競争が続くだろう。そうした中で、日本オラクルが動き出した。
オラクルのアプリケーション・サーバ強化戦略の3つのキー・アクション・プラン |
- 新たに低コストで最高のアプリケーション・サーバを投入
- アプリケーション・サーバをすべてのユーザーへ提供
- Java技術者の育成 〜最小のコストでスキルアップ〜
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5月19日、オラクルは、「アプリケーション・サーバ強化戦略」を打ち出した。右の3つのキー・アクション・プランが柱となる。
簡単に説明するなら、1つ目は、「Oracle
9i Application Server(以下、Oracle9iAS)Java Edition」の投入だ。2つ目は、ハードウェアやOSにOracle9iAS
Java Editionを無償バンドルしたり、他社製品からの乗り換えユーザーに対する製品の無償提供など。3つ目は、2日間のトレーニングを3000名に無償で提供し、また認定技術者を5000名育成しようとするプランである。
以下に、具体的に3つのキー・アクション・プラン内容を掘り下げていく。
J2EE準拠の新Webアプリケーション・サーバ、Oracle9iAS
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写真1 5月19日のOracle9i Application Server Java Edition出荷を発表する記者会見にて。
左が代表取締役社長 新宅正明氏、右が取締役専務執行役員 山元賢治氏。この日、オラクルのアプリケーション・サーバの本格的強化戦略が始動した |
まず、製品について見ていこう。新しいWebアプリケ−ション・サーバ、Oracle9iAS Java Editionの発表だ(写真1)。
これは、Enterprise Edition、Standard Editionに続くOracle9iASの3番目のファミリ製品。JSP/Servlet
だけでなく、EJB/JMSなどのJ2EEをフルサポートしている。全層のクラスタ化が可能で、JE/SE/EEでも、J2EEと同等の統合開発環境を備えた意欲的な新バージョンだ。
性能だけでなく、ユーザーにとってOracle9iAS Java Editionの大きな魅力となるのは価格だろう。1CPUライセンスが5ユーザー分の開発環境つきで、62万5000円。
日本オラクル代表取締役社長 新宅正明氏は、この新バージョンのリリースの背景を次のように語る。
「インターネットをベースとしたシステム開発の中で、Webアプリケーション・サーバの重要性が高まっている。オラクルのエンタープライズ・システムソリューションの枠を広げるためにも、Java
Editionの提供が不可欠だった」
これはまた、同社のJavaへの深いコミットをあらためてメッセージする製品でもある。1996年、オラクルはその製品のすべてをJavaに対応させることを発表。その後、Java開発ツールOracle9i
JDeveloperをリリースしたり、Oracle E-Business Suite、Oracle Collaboration SuiteのJava化、Oracle9iASのJ2EE準拠など、積極的にJava/J2EEへの取り組みを展開してきた。高い開発生産性や移植性、ネットワーク通信との相性のよさなどが評価され、システム開発市場でもJavaシフトは進み、オラクルのパートナー企業の多くも、すでにJava言語での開発体制をしっかりと整えているという。
しかしながら、オラクルはその広がりはまだまだ十分でないと感じている。Javaの浸透をいっそう推し進めるためにも、Oracle9i Application
Server Java Editionの投入が必要と判断した。
アプリケーション・サーバ市場には、すでに複数の先行製品が存在することから、Oracle9iAS Java Editionの登場を強調するためには少々挑戦的でなければならない。その方策の1つが低価格戦略だ。同社によると62万5000円という数字は、Oracle9iASと同等のエンタープライズクラス製品の通常価格における比較で、A社製品やB社製品の約3分の1だという。エントリーレベルの製品との比較では、他社製品のほぼ半額になる価格設定だ(図1)。
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図1 Oracle9i Application Server Java Editionと競合の価格製品と比較 |
導入の敷居を下げることで、日本オラクルはOracle9iASのマーケットシェア向上を目指す。具体的な目標は、2003年6月から始まる同社の新しい会計年度中のトップシェア奪取。これを実現することで、Oracle9iAS製品グループのライセンス売り上げを50%増加したい考えだ。もちろん、自ら高いバーを掲げるからには、実現のためのアクションプランは価格だけではない。
まずはチャネルの拡大だ。従来は同社のパートナー企業から直接購入するしかなかったが、Windows版、Linux版のOracle9iAS
Java Editionは2003年5月26日から全国のパソコンショップでも入手することができる。またパートナー企業がオンラインショップを開設している場合は、そこから購入することも可能だ。具体的なOS別価格については、表1をご参照いただきたい。
Oracle9iAS Java Edition for Windows(10指名ユーザー) |
13万2000円
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Oracle9iAS Java Edition for Windows(追加1指名ユーザー) |
1万2500円
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Oracle9iAS Java Edition for Windows(追加10指名ユーザー) |
12万5000円
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Oracle9iAS Java Edition for Linux(10指名ユーザー) |
13万2000円
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Oracle9iAS Java Edition for Linux(追加1指名ユーザー) |
1万2500円
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Oracle9iAS Java Edition for Linux(追加10指名ユーザー) |
12万5000円
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表1 量販店やECサイトで入手可能なOracle9iASパッケージの価格 |
パートナー企業へはOracle9iAS
Java Edition無償提供 |
Oracle9iAS Java Editionを組み込んでパッケージ・アプリケーション開発を行うパートナー企業に対しては、Oracle9iAS
Java Editionが無償で提供される。これは「Free Embedded License」と呼ばれるプログラム。パートナー企業の持つパッケージ・アプリケーション製品の価格競争力の強化とともに、リレーショナル・データベースとWebアプリケーション・サーバの親和性向上による製品品質の向上が大きな目的だ。条件として、同社のパートナープログラム「Oracle
Partner Network」のメンバーとなることが必要だ。
ハードウェアやソフトウェアとのバンドルプログラムも進行中。現在、ヒューレット・パッカードと「Oracle9iAS HP-UX 11i bundling
program」の中でOracle9iAS Java Editionの機能限定版を提供、伊藤忠テクノサイエンスもSolaris系マシン、Proliant系マシンに試用版を添付する協業を展開している。また、ミラクル・リナックスから出荷されるLinux
OS製品にも試用版が同梱されている。今後も、バンドル対象のハードウェアやソフトウェアは増やしていく予定だという。
一方、「Switch&Saveプログラム」は競合製品を直接ターゲットとする刺激的な内容だ。具体的には、競合製品であるBEA Weblogic
Serverからの移行ユーザーには、現在使用している同数のCPUライセンスのOracle9iAS Java Editionを無償で提供する。それと同時に、先着順となるが20日間の移行コンサルティングも無償だ。必要な技術資料もOracle
Technology Network(以下、OTN)ですべて提供される。いまのところ8月末日までの限定プログラムとなっているが、反響が大きければ期間延長や適用対象の拡大もあり得るようだ。担当するのは戦略的テレマーケティング組織であるオラクルダイレクトおよびTIS、CSK、アシスト、新日鉄ソリューションズなど、同社の主力パートナー企業である。
Oracle9i TOPGun、Oracle9iASトレーニングコースも無料 |
マーケットシェアを上げるためには、エンジニアのマインドシェア向上が不可欠と、日本オラクルはOracle9iAS技術者の育成も重要視している。名づけて「Oracle9i
TOPGun」。OTNなどのチャネルを通じてOracle9iASのトレーニングコースの無償提供を告知、5月時点ですでに1000名を越える技術者が受講を終えているという。通常は2日間かけて行われるトレーニングだが、時間のない受講者にはハンズオントレーニングなしの1日コースも用意されている。
5月24日からは、新設された資格トラック「ORACLE MASTER Gold Oracle9iAS」の試験もスタートした。“日本での技術資格制度成功の実績を生かして、8月末日までには3000名を越えるOracle9iAS技術者を得たい”と意気込んでいる。
日本オラクル取締役専務執行役員山元賢治氏は強調する。
「昨年1年の成長率という観点からみれば、Oracle9iASがすでにナンバーワンの地位を獲得している。低コストで高い機能を持つアプリケーション・サーバを新たに投入するとともに、アカウントセールス、パートナーセールス、中堅中小企業向けのクロスインダストリーセールス、オラクルダイレクトとあらゆるチャネルでOracle9iASの販売を強化することで、Oracle9iASの市場での位置付けを一気に引き上げたい」
こうなると気になるのはOracle9iAS Java Editionが持つ機能やその技術教育の詳細だが、それは次回の原稿で解説することにしよう。
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