アットマーク・アイティ @IT@IT情報マネジメント@IT自分戦略研究所QA@ITイベントカレンダー  
 
 @IT > @IT リッチクライアントソリューション カンファレンス II セミナーレポート
 
@IT[FYI]

 
 1月18日、東京・品川で「@IT リッチクライアント ソリューションカンファレンスII」(主催:株式会社アットマーク・アイティ)が開催された。昨年に続いて2回目となる本イベントには、予定を大幅に超える申し込みがあり、当日会場には定員300名を上回る400人以上の来場者が集まった。次々と新テクノロジが登場し、いよいよ盛り上がってきたリッチクライアント、この分野をリードする各社の講演内容を紹介する。

【オープニングセッション】
リッチクライアント導入の実際

手前より、日本総研の細川努氏、NTT東日本の長谷部豊氏、アットマーク・アイティ代表の藤村厚夫
 オープニングセッションは、ゲストに株式会社日本総合研究所 リスク品質統括部マネージャ 細川 努氏と東日本電信電話株式会社(NTT東日本)ビジネスユーザ事業推進部 ビジネスソリューション部ERM担当 長谷部 豊氏を迎えてトークショウ形式で行われた。インタビューアはアットマーク・アイティ代表取締役 藤村厚夫。

 ユーザーニーズはどこにあるのか? という問いに対して、細川氏は「ダム端末に慣れたユーザーにどうやってリッチクライアントを提供するかがポイント」と指摘。コールセンターなど“短時間に大量入力が必要な環境”ではそれに合った操作性が最重要であり、既製品ではまだ要件を満たしていないと分析。今後、このような厳しい条件を満たすことがリッチクライアントに求められると解説し、さらに「カルチャーギャップを理解してもらい、付加価値を認めてもらわなければ現場は納得しない」と語っている。

 リッチクライアント導入時のポイントでは、長谷部氏は心理的バリアとして「多人数で利用する場合にクライアント単位の課金はつらい」「C/S→標準HTML→リッチクライアントという流れは“やり直し”と感じてしまい、後ろ向きの開発に見られる」の2点が存在すると指摘。細川氏は「とにかくセキュリティに尽きる」と語った。

【A-1】テクニカルセッション
Micromedia FlexでAPフロントを「創る」

Macromedia Inc. プロダクトマネージメント担当バイスプレジデント ジェフ ワトコット氏
 【A-1】セッションとして、Macromedia Inc.のプロダクトマネージメント担当バイスプレジデントのジェフ ワトコット氏が講演。Macromediaは4年前から「リッチ・インターネットアプリケーション(RIA)」という用語を用い、「もっとユーザブルで、楽しく、効率的なWebアプリケーションができるはずだと考えてきた」という。そして、今日技術の進歩によって創造の範囲が大きく広がっているという点を指摘した。

 ワトコット氏は、欧米で業務に即した形で使われている例を示し、RIAの効果をアピールした。米国のディスカウントストアが、Flexを使ってオンライン販売のWebサイトをRIA化した事例では、チェックアウトのプロセスを簡単にし、操作や入力でヘルプやナビゲート機能を強化したガイデットセリング(ガイド付き販売)を実現した結果、コンバージョンレート(購買率)が50%向上したという。

 また、あるコールセンターでは複数システムを1つのインターフェイスからアクセスできる仕組みを作ったが、それ以前に同様の目的で行われたJSPベースのシステムよりもコード行数が30%少なかったという。

 ワトコット氏は、「Webはもっと進化する。Web 2.0は、RIAとして現われてくると思っている」と締めくくった。

【A-2】テクニカルセッション
Biz/Browser製品開発者が語るリッチクライアントによるシステム開発のツボ

アクシスソフト リッチクライアントエバンジェリスト 山形浩一氏(左)とアクシスソフトBiz/Browser製品開発フェロー 田中康興氏
 【A-2】セッションは、アクシスソフト株式会社のリッチクライアントエバンジェリストである山形浩一氏が、同社のBiz/Browser製品開発フェロー 田中康興氏に質問をぶつける対談形式で行われた。

 山形氏の「Biz/Browserを導入する目的は?」という問いに対し、田中氏は「リッチクライアントの導入目的は、操作性をいかによくするかという点に集約される」とした上で、海外ではHTMLで十分という声も多いが、日本ではHTMLは効率が落ちるという声が強く、HTMLシステム普及の障害になっていたと指摘。その上で「Biz/Browserは運用コスト低減し、エンドユーザーの操作性向上を実現する」とした。また田中氏はリッチクライアントの落とし穴として、「凝ったものが作れるために際限なく作リ込んでしまい、コストがかかり過ぎること」を挙げた。

 今後の製品の方向性は?という問いに対して、田中氏は「あらためてBiz/Browserの導入の目的はどこにあるのかを考える必要がある」とした。そしてこれまでのソフトウェア開発が機能デザインばかりを考えてきたが、今後は役務に応じてどういうUIが必要となるのかについて考えていくことの必要性を訴えた。

【A-3】ソリューションセッション
適用事例にみる各種リッチクライアントの可能性

(左)日立製作所 ソフトウェア事業部 販売推進本部 Eビジネス統括 山田健雄氏
(右)ユビキタスプラットフォームグループ ソリューション統括本部
荒井達郎担当部長
 【A-3】セッションでは、株式会社日立製作所のソフトウェア事業部 販売推進本部 Eビジネス統括 山田健雄氏が、リッチクライアント製品の選び方について述べた。山田氏は、「各種のシステムを1つのリッチクライアントでカバーできるかというと、決してそうではない。利用者にとっての業務生産性、システム構築面での開発生産性を考えると、『この業務には、このリッチクライアントを利用する』といった使い分けをした方がよい」と主張。日立が豊富な事例をベースに、顧客に業務に適したリッチクライアントを使い分けて提案している代表的な事例を紹介した。

 続けて同社ユビキタスプラットフォームグループ ソリューション統括本部 荒井達郎担当部長が登壇、同社のPDAベースのリッチクライアント・ソリューションを紹介した。荒井氏は企業向けPDAの現状について、「携帯電話に比べて入力作業を効率的にできる。さらにPCよりも高セキュリティを実現できるうえ、カスタマイズと携帯性の両立ができる」と優位性を強調する。モバイル業務では、立って快適に入力できること、思考を妨げない応答性能があることなどの条件を挙げ、適したリッチクライアントを選択することで、端末性能を最大限に生かす性能設計が実現できるとした。

【A-4】ソリューションセッション
ビジネス生産性向上と低コスト運用を可能とするリッチクライアントソリューションの条件

ブレインセラーズ・ドットコム 執行役員CTO 伊藤晃一氏
 【A-4】セッションでは、ブレインセラーズ・ドットコム株式会社の執行役員CTOで、FacerLiteの開発責任者である伊藤晃一氏が新製品について解説を行った。クライアント側へのソフトウェア配布が必要な製品は多いが、同社の新製品「FacerLite」は実際にはサーバサイドの製品である。画面デザインをFacerLiteDesignerで行い、レイアウト定義XMLファイルを生成する。これをサーバ側に配置後、FacerLiteエンジンがDHTMLフォームを生成することで、クライアントのブラウザに表現力と操作性の豊かな画面を表示する。

 伊藤氏は、「従来より企業システムのアーキテクチャについて集中処理か、分散処理か、という議論があった。管理という面では集中型が楽。使い勝手と管理コスト削減を両立させる手軽なリッチクライアント製品として開発した」とFacerLiteを紹介した。

 デモを交えて、キーボードオペレーション型システムや紙の帳票デザインをそのまま画面再現できる機能、EclipseプラグインであるFacerLiteDesignerを用いる開発生産性とともに、運用コストの低さやサーバライセンスなど、価格的なアドバンテージをアピールしていた。

【B-1】テクニカルセッション
最新のAdobe Reader 7.0で実現。情報共有とセキュリティを両立する次世代リッチクライアント
【B-2】ソリューションセッション
ここまできたPDFソリューション。最新事例に見る顧客サービスから社内ポータル/ワークフローまで

アドビ システムズ マーケティング本部エンタープライズ・マーケティング部グループマネージャ 小島英揮氏
 【B-1】と【B-2】セッションでは、アドビ システムズ株式会社マーケティング本部エンタープライズ・マーケティング部グループマネージャの小島英揮氏が講演を行った。前半のセッションでは「Adobe Reader 7.0」で実現する数々の機能を実演し、後半部分ではPDFを機能拡張することで実現するサービスを紹介した。

 Adobe Readerは、サーバ製品群「Adobe LiveCycle」と連携することでアクセスコントロール機能や、暗号化機能、電子署名付与など、さまざまな機能を追加することができる。入力データをリアルタイムで2次元バーコードに反映させることにより、紙資源をデジタル化することも可能。

 この機能は好評を得ており、銀行の申し込み用紙や埼玉県庁の申請書などに採用されている。このようにPDFは、「紙と電子プロセスの融合」に強いリッチクライアントであると小島氏は訴えている。

【B-3】ソリューションセッション
ユーザビリティの高いJ2EEシステムを構築するには

東芝ソリューション プラットフォームソリューション事業部 商品企画部参事 舟城亮一氏
 【B-3】セッションでは、東芝ソリューション株式会社プラットフォームソリューション事業部商品企画部参事 舟城亮一氏が講演を行った。東芝ソリューションは、J2EEのためのリッチクライアントとして「クライアント環境に依存しないが操作性が高い」「オープン環境で実現」「J2EEを完全に準拠する」と定義し、独自のミドルウェア「FlyingServ J-Frame Server」を開発した。

 J-Frame Serverは標準Java仕様に準拠して作成おり、サーバサイドで動作する。Java標準のGUI APIである(AWTやSWING)をサーバ側のGUIアプリケーションで動作させることで、HTMLだけでは実現できなかったきめ細やかな操作性を実現している点が特徴だ。舟城氏は「エンタープライズ用途におけるリッチクライアント環境では、J-Frame Serverが最も柔軟性がある」と自信を見せた。

【B-4】テクニカルセッション
J2EEプラットフォームにおけるリッチクライアント開発の実際

日本アイ・ビー・エム ソフトウェアシニア・テクノロジー・エバンジェリスト 米持幸寿氏
 【B-4】セッションでは、日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェアシニア・テクノロジー・エバンジェリスト 米持幸寿氏が講演を行った。同氏は、実装技術としてDynamic HTMLやJava、Eclipse-RCPの3種類を、デプロイ技術としてJWSやJSF、IBM Workplace Client Technologyの3種類を挙げ、それぞれの利点と欠点を紹介した。

 米持氏は、そのほかにもJ2EEと連携できるリッチクライアントは多数あると指摘。それぞれに得意分野/不得意分野があるため、必要に応じて組み合わせれば良いと説明しつつ、「社内向けの多機能なものと、社外向けの軽いものの2つが最低限必要になってくるだろう」と語り講演を締めくくった。

【スペシャルセッション】
本音で答えるQ&A
〜失敗事例に学ぶリッチクライアント開発の真実〜

 イベントの締めくくりには、「本音で答えるQ&A〜失敗事例に学ぶリッチクライアント開発の真実〜」と題したディスカッション形式のスペシャルセッションが行われた。登壇者は、アクシスソフトの田中康興氏、アドビシステムズの小島英揮氏、東芝ソリューションの舟城亮一氏、ブレインセラーズ・ドットコムの伊藤晃一氏、Macromediaのジェフ・ワトコット氏の5氏。モデレータはアットマーク・アイティ編集局長 新野淳一。

 設計での失敗では、アドビの「プロトタイプを作るとユーザーのイメージ以上のものができあがるため、より多くを求められて開発側に高いデザイン力が必要になる」といった例や、マクロメディアの「クライアント側にデータを送り過ぎて処理が遅くなる」などの事例が挙げられた。

 レスポンスに関する問題では、アクシスソフトは「サーバとの通信のバランスが必要。常にサーバと通信すると遅くなるが、クライアントに持ちすぎても遅くなる。両者のバランスが取れるように開発するのがポイントだ」と指摘。東芝ソリューションは「キー入力をすべてサーバに送信するので、クライアント-サーバ間の回線が極端に遅い場合には向かない。逆にDBサーバへのアクセスがひんぱんな場合などにはレスポンス向上につながる」といい、ブレインセラーズは「設計次第で解決可能」といった意見が出され、状況に合った製品選び、開発手段の選択の必要性を訴えた。

主催:アイティメディア株式会社
協賛各社(順不同):マクロメディア株式会社、
アクシスソフト株式会社、株式会社日立製作所、
ブレインセラーズ・ドットコム株式会社、
アドビ システムズ株式会社、東芝ソリューション株式会社
日本アイ・ビー・エム株式会社
掲載内容有効期限:2005年3月10日
 
下記より、当日のプレゼンテーションの資料をダウンロードしていただけます。ぜひご利用ください。

アクシスソフト株式会社
Biz/Browser製品開発者が語るリッチクライアントによるシステム開発のツボ
アクシスソフト株式会社
Biz/Browser製品開発フェロー 田中康興氏
リッチクライアントエバンジェリスト 山形浩一氏

株式会社日立製作所
ソリューションセッション 適用事例にみる各種リッチクライアントの可能性
株式会社日立製作所
ソフトウェア事業部販売推進本部Eビジネス統括
山田健雄氏
株式会社日立製作所
ユビキタスプラットフォームグループ
ソリューションビジネス本部担当部長
荒井達郎氏

ブレインセラーズ・ドットコム株式会社
ビジネス生産性向上と低コスト運用を可能とするリッチクライアントソリューションの条件
ブレインセラーズ・ドットコム株式会社
執行役員CTO 伊藤晃一氏

アドビ システムズ株式会社
最新のAdobe Reader 7.0で実現。情報共有とセキュリティを両立する次世代リッチクライアント
アドビシステムズ株式会社
マーケティング本部エンタープライズ・マーケティング部グループマネージャ 小島英揮氏
ここまできたPDFソリューション。最新事例に見る顧客サービスから社内ポータル/ワークフローまで
アドビシステムズ株式会社
マーケティング本部エンタープライズ・マーケティング部グループマネージャ 小島英揮氏

東芝ソリューション株式会社
ユーザビリティの高いJ2EEシステムを構築するには
東芝ソリューション株式会社
プラットフォームソリューション事業部商品企画部参事 舟城亮一氏

− @IT PR −

Web Client&Reportフォーラム

リッチクライアント、帳票、ドキュメントソリューションなど、Webシステムのクライアントサイドに位置する諸技術にかかわるテクノロジを対象としたフォーラムです。

@IT News

リッチクライアントの主流に躍り出るEclipse
富士通、リッチクライアント開発フレームワークの実力
ビジネスFlashの最右翼となれるか? Macromedia Flex
Eclipse基盤のIBM Workplace Client Technology、その可能性
PDAでもリッチクライアント、アクシスソフト
Java Studio CreatorはJava開発者への福音となるか?
Webブラウザの限界を乗り越える手段、リッチクライアント
Curlの弱点を暗号で補う開発・実行環境、NTTソフト
国産リッチクライアントの強みはやはり純国産だということ
「ようやくVBを超えた」、IBMの新開発ツールが提供開始
新RIAツールが登場、エンタープライズ開発の革命児となるか
RIAは優れたエクスペリエンスを実現するため
PDFとXMLが相互補完、アドビの電子フォームツール


 
@ITトップ@IT Special インデックス会議室利用規約プライバシーポリシーサイトマップ