@IT|@IT自分戦略研究所|QA@IT|イベントカレンダー+ログ | ||
Loading
|
@IT > エンジニア座談会:見えてきた全社IT基盤構築の道筋 |
企画:アットマーク・アイティ 営業企画局 制作:アットマーク・アイティ 編集局 掲載内容有効期限:2004年12月10日 |
|
|
だが、実際の企業システムにおいて本当にこうしたIT基盤の開発は可能なのか。実際にIT基盤構築プロジェクトに携わる4人のトップエンジニアに、IT基盤構築の課題とその解決について語ってもらった。
――本日は、SAP R/3を中心とするシステム基盤構築に携わっていらっしゃるエンジニアの方々にお集まりいただきました。いま「システム基盤」というテーマで新しいキーワードが登場し、ユーザー企業の方でもシステム基盤構築に向けた取り組みが盛んだと伺っていますが、実際にプロジェクトに入られている皆さまはこうした動きをどう見ていますか。
小石氏 アクセンチュアが担当した案件では、すでにEAIなどを導入している事例が多いですね。ただしEAIを入れたといっても、接続先のシステムの環境がバラバラなどで、「どうにか使えるものにしたい」というニーズから始まるケースが多いのですが。また「EAIで全社基盤を作りたい」という案件もあります。
荒川氏 東洋ビジネスエンジニアリングも、日本総研さんと同じ状態ですね。やはり社内システムをいっぺんに置き換えるのはリスクが高すぎるので、まず基幹ホストをビッグバンで刷新するけれど、顧客や取引先との接続部分は旧来のまま残す、といったケースが多いです。まず基幹システムを入れ替えて、徐々に周辺システムに手を入れていくというアプローチが一般的です。 長谷部氏 NTT東日本でインテグレーションさせていただいた案件でいえば、ビッグバンプロジェクトが圧倒的に多いです。例えば企業外とやり取りを行うEDIシステムにしても、基幹システムをR/3に置き換えた際に、「R/3と親和性の高いEAI/パッケージを入れたい」とのことで、全面刷新する案件がありました。
――IT基盤については、ユーザー企業で取り組みや導入アプローチに温度差があるということですね。実際にプロジェクトを進める上で、技術的にどのような点で苦労されましたか?
荒川氏 検証作業も重要です。カタログの仕様では問題がなくても、実際に動かしてみると不具合が生じるといったことも少なくありません。
――やはりインターフェイスが最大のネックだということですね。 荒川氏 そうですね。冒頭にお話しした周辺システムの置き換えについても、例えばファイル交換で連携させている部分から、順次新しいものに置き換えていきます。そこで過半数を超えた時点で、「じゃあ基盤を新しいものにしよう」という動きになるわけです。 長谷部氏 私の場合、現在はSAPのユーザーインターフェイス(UI)に特化したプロジェクトを担当しています。UIだけでプロジェクトが組めるのか、と驚かれる方も多いのですが、裏側の仕組みを整えるだけでなく、ユーザビリティを向上させないとシステム基盤の価値も半減してしまいます。具体的にはポータルによる画面の統一を担当していますが、ここにはPDAや携帯電話のインターフェイス問題も絡んできます。一方でお客さまの中には、「UIにそれほどお金をかけたくない」という思いも強く、使いやすいUIを低コストで提供しなければならないというプレッシャーも感じています。
小石氏 さらにビジネスルールの問題もあります。システム連携にはデータ統合・管理が不可欠なのですが、部門によって項目の持ち方が異なったり、売り上げを立てる基準が違ったりと、ビジネス上の用語やルールがまちまちなため、統合が進まないケースもありますね。これは技術だけでは解決できない問題です。 ――いまお話にあったような技術的な課題と、そしてビジネス上の制約がIT基盤を作る上でのネックとなっています。それを解決するため、技術側面ではSOA(Service Oriented Architecture)というものが出てきていますが、これについてはどのようにご覧になっていますか?
長谷部氏 私も同意見です。具現化するための技術はWebサービスなどで定まってきていますが、ただ基幹系の処理能力の問題も発生すると思いますし、普及という意味では段階的なアプローチが必要なのではないでしょうか。 矢萩氏 SOAという基盤にニーズが出てくるには、サービスの実体となるビジネスが企業という枠を超えて相互利用できるという前提が必要になります。現時点では相互利用できるビジネスは多くなく、3PLや与信情報共有、グループ資金管理など限られた分野に留まっているので、SOAの必要性をあまり強く感じませんが、ビジネスアプリケーションの代表格であるSAP R/3がサービス化することでビジネスの相互利用が容易になり、SOAの利用が飛躍的に拡大するときが来ると考えています。
小石氏 方向性としてはいいと思います。ただ、先ほどのお話にもあったように、サービスという単位でシステムをどこまで維持できるかという課題はあると思います。 荒川氏 現実にSAPプロジェクトを動かしていると、すべてSAPに全面刷新する企業はなかなかいらっしゃいません。どうしても切り売りが必要になります。今回のESAについては、お客さまに現実的に提示できるソリューションとして、ビジネスの幅が広がったととらえています。
――では後半から、IT基盤を作る上でネックとなるインターフェイス問題やマスタ統合の問題を、NetWeaverがどう解決できるのかを検証したいと思います。
|
|