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@IT > SOAを実現するSAP開発プラットフォームを徹底解剖! |
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1990年代から、企業が求める業務の効率化や可視化におけるソリューションの “ベストプラクティス”としてERPパッケージ「SAP® R/3®」を提供してきたSAP。現在も「mySAP Business Suite」という名前で、ソリューションのERPエンジンとして多くの企業に採用されている。 しかし、変わったのは製品名だけではない。システムの内部アーキテクチャも大きく変わっていることに注目すべきだろう。 ■なぜSAPがenterprise SOAなのか?
「さまざまなテクノロジが登場してきた現在、ユーザー企業のシステム環境を1種類のソフトウェアに依存したモノリシックなアーキテクチャに整えることは、現実的に不可能です。またビジネス的に見れば、変化の激しい市場環境に合わせ、迅速かつ柔軟にビジネスプロセスを組み立てられるITソリューションが必要とされています。 そこでSAPでは、SOA的な考え方を取り入れ、2002年ごろから製品のアーキテクチャ刷新に着手しました。その結果、ユーザー企業のビジネス要件を満たすソリューションとして提示しているのが、『enterprise SOA』なのです」とSAP Labsジャパン エンタープライズSOA推進室 エンタープライズSOAアドバイザ マネージャの松本潤氏は語る。 ■エンタープライズサービスを組み合わせていく ユーザーがITに求める要件は、決して1つだけではない。大きな枠組みとして「迅速性、柔軟性、全体最適」という要件が上がったとしても、CEOやCFO、業務部門、IT部門がITに求める具体的な機能はそれぞれ異なる。このように、ビジネス的な立場の違いから生じる異なった要件を吸収し、SOAの考え方にのっとって「迅速性、柔軟性、全体最適」を実現するのがenterprise SOAの考え方だ。 例えば「受注取り消し」というプロセス1つを取ってみても、1件の受注が削除されれば生産計画や在庫量の調整、請求取り消しなど、関連するさまざまな処理が発生する。こうした基幹システムを構成する処理を「エンタープライズサービス」として定義し組み合わせることができるようになれば、ユーザー自身がビジネスプロセスをビジネスの実体に合わせて設計することが可能になり、その設計を基にシステムを構築することも容易になる。 では、どのようにエンタープライズサービスを構築し、それらをプロセスとして組み合わせてシステムを構築していけばよいのだろう。これに対するSAPの回答が「SAP NetWeaver®」だ(図1)。
SAP NetWeaverは、(1)エンタープライズサービス化、(2)サービスコンポジション(サービスの組立)、(3)ビジネスプロセス実行環境、(4)ビジネスプロセス/サービス開発プラットフォーム、(5)マスターデータ/ビジネスセマンティック統合、(6)ポータル、(7)ビジネス分析、などを司る基盤製品だ。この中心にあるのがエンタープライズサービスであり、ユーザーの視点からビジネスプロセスをデザイン・実行を迅速にできる仕組みが整っている。SAP NetWeaver上ではSAPのERPシステムも、ビジネスプロセスを構成する一要素であるエンタープライズサービスとしてアクセスできるようにしており、ビジネスプロセスの中に自由に組み込めるため、より迅速に、かつシステム機能としての完成度を高めながら、業務システムを実現することが可能になる。 合わせて、SAP NetWeaverではシステム全体のマスターデータの統合や統一を実行し、リアルタイムにビジネス状況を分析するための基盤も構築できる。あらゆるビジネスユーザーの視点に立ち、必要となる環境や機能を備えたIT基盤とも位置付けられる。SAPのERPシステムをサービスとして扱い、SOAを実践できるのがSAP NetWeaverであり、現在のSAP導入・開発に欠かせないプラットフォームといえよう。 ■Enterprise SOAを実現する開発プラットフォームとは もともとSAP R/3は、ビジネスロジックを担う開発言語「ABAP」と、インターフェイスである「BAPI」というカスタマイズのための独自技術を持っていた。enterprise SOAは、これらの技術もenterprise SOAを構成する要素技術として取り入れながら、標準技術であるJavaや.NETをベースに、サービスの開発/組み合わせを実現することを目的としている。松本氏は「かつてのように、アプリケーション本体にアドオンやカスタマイズを加え、機能そのものを肥大化する形では、柔軟性に欠け、変化に即応できるITとはなりません。非SAP以外のシステムや環境を含めて、いかに柔軟性に優れた業務システムを実現するかが最大のポイントになります」と、今後のカスタマイズの方向性を語る。 SAPではこの面で現在、ERPシステムをサービスとしてアクセスできるようにする「サービスイネーブルメント」と、サービス同士を組み合わせて新しいアプリケーションを開発する「コンポジットアプリケーション」という両面で技術刷新を図っているという。このうち、SAP技術者に深くかかわるのがコンポジットアプリケーションだ(図2)。
ここでは、Webユーザーインターフェイスの基盤ともなるSAPエンタープライズポータル、プロセス設計、UI開発、ビジネスロジックという大きく4つの分野でそれぞれエンジンや開発プラットフォームを提供し、技術者を支援している(表1)。
表1では、「開発プラットフォーム」と「技術者への支援環境」「サービス実行基盤」の3つに分類し、それぞれ該当する製品/サービスを挙げた。開発プラットフォームをさらにブレイクダウンすると、「サービス定義」「カスタム開発プラットフォーム(Javaベース)」「UI開発プラットフォーム」の3つに分けられ、それぞれで製品/フレームワークを提供している。各製品の特徴を見ていこう。
サービスの定義や拡張を司る「CAF Core」と呼ばれるモジュールと、ポータルベースのワークフローを設計するフレームワーク「CAF Guided Procedures」(CAF GP)という2つのモジュールから構成される、サービスイネーブルメントとコンポジットアプリケーション構築を支援するためのフレームワーク。ローカルサービスの定義や、BAPI/ABAPだけでなくメインフレームやカスタムアプリケーションなどのリモートサービスへアクセスしたり、またそれらのサービスを組み合わせたアプリケーションを構築できる 。
EclipseベースのJ2EE開発ツール。SAPシステムを含む開発のために独自プラグインを組み込んだ、SAP技術者/J2EE開発者を支援する総合開発プラットフォーム(画面1)。
開発者向け情報サイトSDNで、スニークプレビュー版を無償ダウンロード可能。
Web Dynproは柔軟なWeb UIを開発することが可能なフレームワークで、MVC(Model-View-Controller)コンセプトに基づいており、Java版とABAP版の2種類がある。Visual ComposerもUIレイヤを開発するツールだが、まったくコードを書かずに開発を行うビジュアル開発プラットフォームであるため、ビジネス・プロセス・エキスパート(BPX)といわれるようなビジネス系パワーユーザーも対象ユーザーとなるという特徴を持つ。また、どちらの製品でもモデルを読み込み、ビューレイヤを生成することが可能。Web DynproもしくはVisual Composerで開発したUIレイヤに対し、ワークフローを設計するのがCAF GPで、将来的にはVCでもGPを使用できるようになる予定(VC GP)。
.NET環境でポータルUIを開発するキットで、マイクロソフト社のVisual Studio .NETのプラグインとして使える。これで開発したポータルUIは、SAP
Portalエンジンで稼働可能。
SAP NetWeaver Process Integration (NetWeaver PI)のコアとして位置付けられており、EAIとしてメッセージ交換、アダプタ、データ変換機能を提供するほか、自動化できるビジネスプロセスの実行などを行うBPMエンジン(ccBPM)と連携しているメッセージ・ハブ。将来的には、BAM/BTM(ビジネスタスク管理)機能を強化・整備する予定。 このほかに特筆すべきは、SAP開発者向け情報サイトである「SAP Developer Network」(SDN)だ。このサイト内には、「ES Workplace(SDNにログイン後、左のメニューでEnterprise SOA → ES Workplaceを選択)」というコーナーがあり、SAPが提供しているエンタープライズサービスの情報を公開している。 「いまのSAPプロジェクトは、テンプレート導入やカスタマイズ中心のパッケージ導入だけではありません。そうではなく、全体最適や迅速化の観点に立ち、SAPもサービスの一部としてユーザー企業のシステムアーキテクチャをいかに整えるかがカギとなっており、実際にenterprise SOAのビジネスも拡大しています。enterprise SOAを実現する開発プラットフォームや情報はそろっていますし、無償評価版も自由にダウンロードできます。SOA案件が本格化する現在、SDNや当社の技術者向けイベント『SAP TechEd』で、SAPを活用したSOA開発について情報を収集してみてはいかがでしょうか」と松本氏は語る。
提供:SAPジャパン株式会社
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年9月30日 |
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