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@IT[FYI] 企画・制作:アットマーク・アイティ 営業企画局
掲載内容有効期限:2003年11月16日

 
◆◆◆ SPSS製品 導入事例探求シリーズ ◆◆◆
第11回 TOTO編

「商品開発のための砂金探し〜テキストマイニング活用事例」
「テキストマイニングの活用目的は2つ。1つは全体を把握すること、そしてより重要なのは砂金を探すような新たな知見の発見だ」

水まわりの設備から、水まわりの総合サービス提供を目指すTOTOが、リモデル(リフォーム)事業を手がけるようになって、必然的に取り組みはじめたデータマイニング。その中でも、特に期待されているテキストマイニングへの取り組みを紹介する

 “TOTO”というブランド名を知らないという方は、おそらくいないだろう。 「東陶機器株式会社(以下TOTO)」は、“ウォシュレット” に代表される、主に住宅の水回り(トイレ、バス、キッチンなど)の設備・機器の有名ブランドメーカーである。今回は、エンドユーザー(一般消費者)の生の声から新たな知見を得るため、テキストマイニングを積極的に活用しているTOTOの取り組みをご紹介する。取材にご協力いただいたのは、TOTO マーケティング統括部 マーケティング企画グループの小代禎彦(しょうだいよしひこ)氏である。

 
リフォーム事業への取り組みとともに強まる
エンドユーザーとの結びつき

 TOTO製品は、住宅に付随して購入されるものが主力を占めているため、その売上は住宅市場の動向に影響を受ける。1980年代後半のいわゆるバブル期には160万ほどもあった新設住宅着工戸数が、現在では100万戸ほどに減少しており、将来的には80万戸程度になるという。こうした市場動向をにらみ、TOTOでは5年ほど前から、新設住宅市場からリフォーム住宅市場へと売上をシフトさせてきた。

 TOTOでは、一般に「リフォーム」と呼ばれる住宅市場を「リモデル」と呼んでいる。これには、単に住宅の一部を取り換える、新しくするということだけではなく、空間の演出・新しい生活スタイルの提案を行うという意味合いが込められている。こうしたリフォームへの取り組みが功を奏し、現在では、リフォーム(リモデル)からの売上が新設住宅からの売上を逆転しており、TOTOの業績は好調に推移しているという。

 リフォームの場合、新設住宅の場合と違って、住宅設備機器の選定は、業者ではなく、その住宅に居住している人、つまりエンドユーザーが決定権を持っていることがほとんどである。ショールームや製品カタログを見て選んだり、雑誌やテレビなどで目にした製品を選んだりするはずだ。従って、TOTOでは、より積極的にエンドユーザーのニーズや意見を吸い上げ、既存製品の改良や新製品の開発に反映させると共に、エンドユーザーに対して、直接自社製品の良さをアピールできる全国80カ所あまりのショールーム運営などに力を入れているという。

 
データが増えるにつれ、テキストマイニングへの取り組みは必然に

 そもそも、TOTO製品に限らず、住宅関連消費財は買い替え需要発生のサイクルが非常に長いという性質をもっている。極端に言えば、住宅に付随する便器や浴槽などは壊れるまで買い替えないのではないだろうか。

TOTO マーケティング統括部
マーケティング企画グループの
小代禎彦(しょうだいよしひこ)氏

 小代氏いわく、「一般的な消費財とは違い、1人あたり年間数千円のマーケティングコストすら何十年もの間、掛け続けるわけにはいきません。何か特殊なマーケティング手法が必要でした」というわけだ。TOTOでは「実績・売上」「顧客」「市場の声」という3つのデータがそれぞれのデータウェアハウスに蓄積されている。これらのうち、「実績・売上」と「市場の声」をデータマイニングするため、2001年「Clementine」が導入された。が、分析スキルをもつ社内リソースが少なく、現在では「市場の声」の分析にとどまっているそうだ。

  小代氏がテキストマイニングに着手したのは、Clementine導入の翌年からで、その理由の1つには、蓄積される「市場の声」データのテキストデータ量が飛躍的に増加したことが挙げられる。小代氏は、次のように話す。

「例えば、アンケートの回答件数が300件程度であれば、自由回答欄のテキストデータ1件1件に目を通し、そこからポイントとなることを拾い出すことも不可能ではありません。しかし、お客さま相談室やWebサイトから収集した意見や要望などは、すぐに数千〜数万単位でデータが集まるので、そうなるともう全部に目を通すのは無理です。やはり、テキストマイニングによって、全体的な傾向を把握したり、新たな知見を発見したりすることが必要になります」

 小代氏は、当初、Clementineにノードとして組み込み可能なフリーソフト「茶筌(ChaSen)」をテキストマイニングツールとして使用していたが、やはり「茶筌」では思い通りの分析ができない、と感じたという。というのも、日本語は名詞や動詞、形容詞、助詞などの単語が並列し、あたかも一語のように途切れなく続くため、正しく品詞分解することがきわめて難しい言語だからだ。分析精度を向上するためにも、テキストデータを品詞レベルで分解する必要がある。これは「形態素解析」と呼ばれ、分析のための前処理として不可欠な作業である。小代氏が分かりやすい例を挙げてくれた。

「茶筌では、テキストデータを思い通りに分解できないことがあります。例えば、“牛丼”という単語は“牛”と“丼”に分解されてしまい、本来の意味合いが失われてしまいます」

 そこで、小代氏は、2002年10月のSPSS Open Houseで初めて紹介された「Text Mining for Clementine (以下TMC)」の導入を決め、2003年2月より利用を開始した。TMCの最大の特徴は、分解された単語を本来その単語がもつ意味を表すレベルまで括り直せることだ。すなわち「コンセプト」抽出が可能という点である。小代氏としては、TMCを利用することで、膨大なテキストデータの前処理がさらに効率化できるだろうと期待していたという。

 
「バスルームの好み」についてのテキストマイニング事例

 それでは、小代氏が実際に行った「バスルームの好みに関する調査分析」におけるテキストマイニングの活用例をご紹介しよう。この調査の詳細については、2003年11月13、14日に開催される「SPSS Open House 2003」で小代氏から発表される予定となっているので、ここでは予備調査の一部分に絞ってご紹介する。

 <バスルームの好みに関する調査分析(予備調査)> の目的は、バスルームの「好み」を左右する要因は何かを明らかにすることであった。TMCは、この調査における「予備調査」の段階において利用された。 まず、あらかじめ用意した10枚の浴室空間のサンプル写真を2枚ずつ対比させて調査対象者に見せ、それら1つ1つの写真に対する「好き/嫌い」と「その理由」を聞くことで、バスルーム空間を評価する際の視点(どの部分をみて好き、嫌いと判断しているのか)と、その写真に対するイメージに対する単語(言葉)を収集した(図1)。

図1 バスルームの好みに関する調査分析の予備調査
(資料提供:TOTO)

 図1の予備調査において小代氏が特に配慮したのは、「質問方法」だったそうだ。何の制約もない自由回答にしてしまうと、本当に欲しい“言葉”、つまり分析する際に有効な言葉がうまく拾えないことが多い、という経験を踏まえ、質問文にある工夫を凝らしたのだ。それは、次のようなものであった。

  • どちらの浴室が好きですか
  • それはなぜですか「(a)〜が(b)〜なので(c)〜な感じがするから」

 つまり、回答者は、どちらの浴室が好きかを答えたあと、その理由をa)、b)、,c)の「〜」の部分に、該当する“言葉”で記入することになる。こうすることで、ある程度自由回答でありながらも、a)評価の視点、b)想起するイメージ、c)理由を系統立てて収集することに成功したそうだ。

 次に、Clementine上で、TMCのノードを含むストリーム(図2)を作成して分析を行い、イメージに対する単語の出現頻度の分析(図3)、および、それら単語同士の共起関係を「言葉の連関図」(図4)として視覚的に把握した。 そして、この予備調査の段階で行われたテキストマイニングの分析結果に基づき、バスルームを評価するために妥当性のある言葉を抽出し、本調査の設計を行ったという。

各図をクリックすると拡大します
図2 TMCを利用したストリーム 図3 単語の出現頻度 図4 言葉の連関図
図2〜4ともに、資料提供はTOTO

 
中身の分かる分析が、社内で認められつつある

 すでにテキストマイニングを積極的に活用している小代氏だが、テキストマイニングを活用する目的は2つあるという。

「1つは、テキストデータの中の大きな声、すなわち多くの人が共通して言うことを全体的な傾向として把握することです。もう1つ、それよりも重要な目的があって、実は、かぼそい声、つまり少数意見だけれども、それこそが新たな商品開発のヒントになるというような“言葉(知見)”を発見することです」

 テキストマイニングを実施する場合、出現頻度の低い言葉は分析対象外とすることが一般的であるが、小代氏によれば、ふるいにかけて砂金を探し出すように、少数派の意見の中にも、とても価値のある言葉が含まれているのではないか、それを発見することこそがテキストマイニングの真価ではないか、という。

「誰もが口にするような意見やニーズは、商品差別化のポイントにはなり得ません。例えば、『食器洗い機の洗剤は環境にやさしいのか心配』『洗剤がもったいない』 という大きな声に着目して“洗剤量が少なくてすむ”商品を開発したところで、あまり優位性はないわけです。それよりも、“合成洗剤は使いたくない”という意見が1つでも出たら、では“洗剤のいらない”商品を開発したらどうか……それなら、他社に先んじることができるのではないか……と考えるわけです」

 とはいえ、TOTOでも少し前まではこうした分析結果に対して、懐疑的な雰囲気がないわけではなかったという。というのは、大量のデータのどこをどう分析したら、そういう結果が出るのか、という分析ロジックが、分析者以外にとってブラックボックス化していたからである。その点、Clementineでは、分析ロジック(ストリーム)を目に見える形で残すことが可能なため、分析結果についての裏づけを簡単に証明することができる。実際にClementineやTMCを使って分析を手がける小代氏は「中身の分かる(分析の)やり方がTOTO社内で受け入れられつつある」という実感を持っているという。

図5 Clementineによる分析なら、分析ロジックを明確に残すことができる

 
ユーザー主導で開発が進む「Clementine for Textmining」

 TMC導入からまだ半年余りではあるが、精力的にテキストマイニングに取り組んできた小代氏からは、すでにTMCに対する要望がSPSSに対してフィードバックされているそうだ。

「茶筌では品詞情報(名詞、形容詞、動詞など)が、分解された単語それぞれに付加されます。しかし、TMCには品詞情報を付加する機能がなく、品詞情報を基にした分析ができない。例えば、“浴室乾燥機”と“浴室乾燥機能”は、表現が違いますが、同じ意味を表すものとして扱いたい場合、同義語としてグルーピングする必要があります。ところが、あえて別の意味をもつ単語として扱いたい場合もあるわけです。分析の意図に応じて、自由に単語を区切ったり、前後の係り受けでグルーピングしたりといったことが可能になれば、テキストデータの前処理の時間を短縮することもできると思いますし、また、砂金を探し出すような発見型テキストマイニングには、とても効果的なツールになると思います」

SPSS 増山 剛雄氏

 取材に同席したTOTOの営業担当であるSPSSの増山剛雄氏は、こうしたテキストマイニングのヘビーユーザーである小代氏の意見を真摯に受け止め、次のようにコメントしている。 「TMCは、世界に先駆けて日本で発売されています。このため、国内にTMC専門の開発チームを抱え、TOTOをはじめ、多くのユーザーからのご意見・要望に応えられるような体制を整えています。今後も継続的にTMCをバージョンアップしていく予定です。そして、Clementineとの連動によって、数値データとテキストデータとの組み合わせによる、より深い分析が可能であるという、TMCならではの強みに磨きをかけています」

 折しも、小代氏の手元には、最新バージョンの「Clementine7.2」が届いたばかりであった。Clementine7.2では、バージョン7.1から実装されたPMML(Predictive Model Markup Language)*に対応した機能がさらに強化されている。つまり、TMCを含む、さまざまなツールとの連携がますます容易になったということである。小代氏もClementine7.2とTMCの組み合わせにより、さらに積極的にテキストマイニングに取り組まれることだろう。そして、近い将来、テキストマイニングによって発見された知見がヒントとなり、TOTOでは画期的な商品開発が実現するはずだ。

*PMMLとは、他のベンダが提供するPMML対応ツールとの間で、分析モデルの策定や共有を可能にするXMLベースの言語

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