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 @IT > SPSS事例探求 第17回 アルソア編
 
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◆ SPSS製品 導入事例探求シリーズ 第17回 ◆
「テキストマイニングに取り組む価値と期待」 
〜 顧客の心理的ハードルを読み解く 〜

 株式会社アルソア本社は、1972年の創立以来、一貫して自然との調和をコンセプトにした化粧品や健康食品などを製造・販売しており、これまでにさまざまなマーケティング調査を実施してきたという。同社の主力製品である化粧品のユーザーからの評価は、製品そのものの良しあしや好き嫌いの評価が、機能や品質だけでなく、ユーザーの感覚や感性に左右されやすい面がある。このため、従来の調査・分析方法だけでは、必ずしも顧客のニーズを深く洞察できるとは限らない。そこで、近年取り組み始めたのが、顧客の感覚や感性が直接反映された生の声を対象として行う分析、すなわち「テキストマイニング」である。

 今回は、テキストマイニングを中心に、同社のマーケティング調査の概要をレポートする。取材にご協力いただいたのは、株式会社アルソアねむの樹トラスト(注) マーケティングユニット ユニットマネージャー 橋本泰作氏とシニアリーダー 松井克也氏のお2人である。

株式会社アルソアねむの樹トラスト マーケティングユニット ユニットマネージャー 橋本泰作氏(左)とシニアリーダー 松井克也氏(右)

(注)「アルソアねむの樹トラスト」は、製品開発・製造を行うアルソア本社から、代理店向け販売会社として分離・設立された子会社である。

 
自然と調和した暮らし=アルソアライフスタイルの実践
 
   

 アルソア本社屋は、北東に八ヶ岳、南西に南アルプスを臨む山梨県小淵沢にある。周辺には、牧場や温泉、リゾートホテルなど、さまざまなレジャー・娯楽施設が点在し、行楽シーズンに多数の観光客でにぎわう。本社屋は、小淵沢の豊かな自然環境に溶け込むよう設計された建物だという。設計を担当したのはイタリアの世界的な建築家、マリオ・ベリーニ氏。翼を広げる鳥をイメージした優美な建物(写真1)は、1999年度グッドデザイン賞(建築・環境デザイン部門)を受賞している。同社は、1998年に本社・社員ともに東京から小淵沢に移転することで、外部に向けて同社が発信しているコンセプト「自然と調和した暮らし=アルソアライフスタイル」を実践している。

  本社屋内にある社員食堂(写真2)も同社自慢の施設である。季節に合わせた旬の無農薬有機栽培野菜や、社員手作りの味噌を使用した味噌汁など、自然食メニュー(写真3)が並ぶ。ごはんは玄米も選べる。デザートのスイーツ(写真1)は乳製品などを使用していないものも提供され、アレルギーを持つ方への配慮が行き届いている。この食堂は、社員の方だけでなく一般の方々も利用できるため、訪れる周辺住民も多い。ユニークな社員食堂として、マスコミでもしばしば紹介されているそうだ。

写真1 社屋全景
1999年度グッドデザイン賞<建築・環境デザイン部門>を受賞(画像提供:アルソア)
写真2 社員食堂
社員だけでなく、ビジターにも栄養バランスの取れた食事を提供している
写真3 取材当日のランチメニューの1つ
ピーマンの野菜詰めと車麩(お麩)のカツ(大根おろしのポン酢ソース)に玄米(あるいは五分米)のご飯と社員手作りの味噌を使った味噌汁がつく
写真4 オプションメニューとして用意されている有機栽培コーヒーと手作りケーキ
食物アレルギーに配慮し、バターや卵などを使わず植物油、豆乳で作ったココア味のケーキ

 
アルソアビジネスの特徴
 
   

 アルソアの売上げの主軸である化粧品は、肌の自然治癒力を引き出すことを主眼に置き、自然成分をベースとして開発されている。同社は「自然派化粧品」の先駆的メーカーである。

株式会社アルソアねむの樹トラスト マーケティングユニット
ユニットマネージャー 橋本泰作氏

「最近の調査では、消費者の8割が自然派と銘打った化粧品しか買わないという結果が出ています。かつて海外の化粧品ブランドがもてはやされた時期もありましたが、今は自然派が主流になっています。当社では、創立以来自然成分にこだわってきました」(橋本氏)

 同社は「三健の精神」、すなわち「心」「体」「肌」の3つの健康づくりから本当の美しさが生まれるという考えの基に、近年では体の内面からの美しさを引き出す健康食品の開発・販売にも力を入れている。

 現在、同社の製品ユーザーは全国で約80万人。基本的にユーザーへの直販は行っておらず、代理店を通じた販売網を展開している。全国に約2万8000名ほどの販売員が口コミを主体とした訪問販売でユーザーとの密な信頼関係を築いている。いわゆる「無店舗販売」の形態を取ってはいるが、同社では、実際に製品を手に取って試せるショールームの役割を持つ「アルソアサロンねむの樹」を400拠点展開しており、アルソアブランドに対する信頼感を高めているそうだ。

 
同社マーケティング調査の概要
 
   

 上述したように口コミ主体の販売方法のため、各代理店の下にユーザーの情報が集まる。したがって、同社では各種マーケティング調査を通じて、ユーザーの実態やニーズを探る努力が欠かせないという。そのためのマーケティング調査として、次のようなものが挙げられる。

  • ホームユーステスト
  • 販売員、ユーザー対象グループインタビュー
  • 生活者暮らし方アンケート

 「ホームユーステスト」は、商品開発のためのデータ収集を主な目的として実施している調査である。ユーザー、ノンユーザーそれぞれに対し、同社製品を1カ月ほど利用してもらい、感想や意見を記入してもらうそうだ。

株式会社アルソアねむの樹トラスト マーケティングユニット
シニアリーダー 松井克也氏

 「販売員・ユーザー対象グループインタビュー」は、アルソアに対するさまざまなニーズや意見・要望を引き出すため、代理店や販売員の方々、およびユーザーを対象に行うものである。

 「生活者暮らし方アンケート」は、一般消費者2000名を対象に行う年1回のアンケートである。消費者の全般的な価値観や関心事項、また、同社の事業領域である「化粧」や「健康」などに対する意識・行動の実態をとらえようとするものだ。今後10年間に渡って調査を継続し、経年変化を見ていく予定だそうだ。

同社のマーケティング調査の基本スタンスについて、松井氏は次のように語る。

「当社は、企業理念“自然法則に基づいた真の健康と幸福(しあわせ)づくり”をベースに企業活動を行っている理念型企業です。調査では、すべての顧客接点においてこの経営理念や当社製品の使い方がユーザーに正しく伝わっているかどうか、どこかでギャップが生じていないか検証することを重視しています」

 
Clementineとの出会いがテキストマイニングへの道を開くきっかけ
 
   

 同社では、これまで数値化可能なデータについては定量的な分析を行ってきたが、調査で得られた自由記述の回答、すなわち、テキストデータについては類似のコメントをグループ化して傾向をまとめるといった程度の分析に留まっていたという。その結果、これといっためぼしい知見が得られることが少なく、テキストデータそのものがあまり重要視されていなかったそうだ。

 実は、同社ではSPSSの基本ソフトウェア「SPSS BASE」などは10年ほど前に導入済みであり、基本的なデータ分析は続けていたそうだ。しかし、同社が参加している某マーケティング研究会で、SPSS Clementineを利用した各種分析を行っており、テキストマイニングにも積極的な大学教授から指導を受けたことから、同社でも「Clementine」を導入し、テキストマイニングに取り組んでみようということになった。そこで、同社では2004年12月に前年リリースされたばかりの「Textmining for Clementine」の導入に踏み切ったそうだ。

「SPSSは魅力的な分析ソフト、ということで10年ほど前に購入しましたが、ユーザーデータの分析に必ずしも十分活用できているというわけではありませんでした。Clementineについては、GUIなどの使い勝手の良さとコスト的な導入のしやすさから導入が決まりました。導入後は、SPSSの方に調査データを分析して頂き、テキストマイニングやClementineについての有効性を教えて頂きました。テキストマイニングから有効な知見が得られることが十分に分かったので、今後は積極的に活用したいと思っています」(松井氏)

 
テキストマイニングから顧客の心理的ハードルを読み解く
 
   

  ここで、実際のテキストマイニングの分析結果の一端をご紹介しよう。同社では、化粧品ブランドの1つ「ヌクォル」のリニューアルにあたって、前述したホームユーステストを2004年に実施した。この調査は、日記式であったため、豊富なテキストデータが含まれていた。そこで、Clementineを利用してテキストマイニングを行ったところ、同社製品を使ったことのある“ユーザー”とこれまで1度も使ったことのない“ノンユーザー”との製品に対するコメントには明らかな違いがあることが分かったという。

 例えば、ホームユーステスト期間の前半から後半までのコメントを分析したところ“使い勝手”についてのコメントに次のような違いが見られたという。

使い勝手についてのコメント
(同社調査資料より一部抜粋)
テスト期間
ユーザー
ノンユーザー
前半
戸惑う
いらつく
苦 手
苦労する
後半
最 高
楽になる
気 軽
慣れる

 テスト期間前半におけるユーザーのコメントは、ユーザー自身に向けられた表現(戸惑う、苦手)であるのに対し、ノンユーザーのコメントはまさに製品に対して不満をぶつけるようなコメント(いらつく、苦労する)になっている。

 しかし、テスト期間の後半になると、ユーザーは一転して製品に向けてコメントするようになる(最高、気軽)。一方、ノンユーザーの方はテスト期間を通じて、製品の評価に関わるようなコメントには至っておらず、“使い勝手”に関して「楽になる」「慣れる」という進展が見られるにすぎない。このコメントから、ユーザーとノンユーザーとでは製品の使い勝手に慣れるまでに必要な時間の違いが見てとれる。

「この分析結果を見ても明らかですが、弊社の製品は使い方にコツがあり、製品を正しく使えるようになるまでに多少時間がかかるのが特徴となっています。ユーザーの方はそうした特徴を理解したうえで製品を評価してくださっているので、多少使い勝手に手間がかかってもそれが製品への不満につながるようなことはありません。しかし、ノンユーザーの方は弊社製品の特徴をご存じなく、使い方に慣れるまでに多少時間がかかることから、どうしても製品への不満といったコメントが多くなるのだと思います。こうした分析結果から、例えば、もっと使い勝手を向上させるような製品改良ができないかという発想が生まれますし、あるいは、新規のお客様には使い方に慣れるまでの間、製品に対してネガティブな感情を持つ可能性があるので、適切なアドバイスや細かなフォローアップをして欲しい、といったことを販売員に伝え、顧客の維持に役立てることができます」(橋本氏)

 
テキストマイニングに取り組む価値
 
   

 繰り返しになるが、同社は代理店を通じた販売方式であるため、ユーザーに関する情報を収集することは困難である。しかし、同社では社内に眠っているテキストデータを適切にマイニングすることで、マーケティング活動やセールス上でのさまざまなヒントが得られたという。テキストマイニングは、ややもするとデータマイニングの補完的な分析ととらえられがちだが、それ単体でもデータマイニングに勝るとも劣らない価値が十分にあるといえるのではないだろうか。お客様の生の声をテキストマイニングするだけでも新たに得られる知見というものは必ず存在する。

 同社が運営するお客さま相談室には、日々ユーザーからさまざまな意見や感想、要望が寄せられるという。これらもまた、有効な知見が得られる可能性が高いテキストデータの宝庫だ。テキストマイニングの実用性・有効性を確信した同社は、次なるテキストマイニングの分析対象として、これらのテキストデータに狙いを定めているそうだ。

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掲載内容有効期限:2005年10月28日
 
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