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@IT > PR:「SPSS Open House 2005」イベントレポート前編 |
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2005年11月8、9日の2日間にわたり「SPSS Open House 2005」が開催された。会場となった東京ドームホテルでは、基調講演、SPSSの最新ソリューションのデモンストレーションに加え、ユーザー企業の実践事例報告、大学研究者による研究発表、チュートリアル・セミナー、ハンズオン・ワークショップ、「第5回 SPSS Open House研究奨励賞」を受賞した大学生による発表など、合計29のセッションが提供された。今回も昨年同様に1200名もの参加者が来場し、会場は活況を呈していた。
では、基調講演を含む、いくつかのセッションを取り上げ、そのポイントをご紹介していこう。
SPSS Inc.の社長兼CEO ジャック・ヌーナン氏による来場者へのあいさつを兼ねた簡潔なプレゼンテーションに続き、丸の内ブランドフォーラム代表 片平秀貴氏が基調講演を行った。片平氏は、企業の「ブランドづくり」のために押えておくべき点を分かりやすく説明してくれた。同氏の考える「ブランド」の定義は「顧客の頭の中の奥深く、ブランドの名前とそれを聞いたときの格別の存在感を刻印すること」だそうだ。
確立されたブランドには、具体的には「絶対的な信頼感・安心感」が感じられることに加えて、「存在感」「独自の世界やかおり、嬉しさ」「少しばかりの誇らしさ」が感じられるものであるそうだ。また、ブランドづくりは、第1に「顧客が嬉しい」ものであることが重要であるという。
「例えば、ウォルト・ディズニーの“私たちは、ゲストをちょっといい気分にするためにここにいる”という言葉がありますが、これは儲けることを第一義とするのではなく、顧客が自社のブランドを利用することで喜び、感謝を示してくれることで、それが社員にとっても“うれしい”となることが大切だということを教えてくれています。結果的にそれが収益につながり、経営者や株主も“うれしい”となるわけです」(片平氏) 同氏のブランドの定義は、簡単にいえば「顧客の脳にしわを刻む」ことであるが、しわを刻むために必要なのは、感動、感銘、感謝といった気持ちを顧客に起こさせることだそうだ。そして、こうした気持ちを起こさせるブランドづくりの三位一体として、次の3項目が提示された。
同氏によれば、この3つすべてが実現されているとき、ブランドづくりが成功するそうだ。 同氏は、ホテル業界のブランドとして有名な「リッツ・カールトン」を例に挙げる。リッツ・カールトンはその「おもてなし」の心の素晴らしさが賞賛されているが、実は、それだけではないという。1万7000人の全社員が、小さなカードに記された「ゴールドスタンダード」という行動指針を常に携行し、常に企業哲学の浸透を図っているし、充実した社員教育を通じてサービス品質の向上にも力を注ぐなど、徹底した理の追求も怠っていないのだそうだ。 ディズニーの場合も、「Telling Stories(素晴らしいストーリーを発信する)」「Imaginary(顧客を楽しませるための徹底した技術開発)」「Customer Focus(顧客志向)」を基本理念においており、ブランドづくりの三位一体を実践していることが分かる。 同氏は、今回、ブランドづくりで特に強調したいことは「反省(結果の振り返り)」であると述べた。まず、企業が独自の哲学に基づき「夢」を描く。その夢を技術によって具現化し、顧客に提示する。その結果、顧客に感動を呼び起こしたか、脳にしわを刻むことができたかを振り返って「反省」し、再び新たな「夢」を生み出すというサイクルを繰り返していくことでブランドが作られていくというのだ。
この「反省」においては、ブランドづくりの成果、つまり結果という「事実」を正確に把握することが重要であるという。同氏は、SPSS社のデータマイニングツール「Clementine」を利用して分析したさまざまなブランドについての結果を示しながら、ブランドづくりのためには、正確なデータの収集と徹底した分析が必要であると述べて講演を終えた。
野球選手の実績がスコアカードに記録されるのと同様に、「バランス・スコアカード(以下BSC)」は、ビジョンと戦略を軸として、財務的な視点だけでなく、財務的目標を達成するために不可欠な視点である「業務プロセスの視点」「人材と変革の視点」「顧客の視点」を加えた4つの視点において指標を持ち、定量的に把握・管理することを目的とした戦略的なマネジメント・システムだという。同氏は、BSC導入のメリットを挙げる一方で、導入した企業の各フェーズにおける問題点を指摘する。そして、残念なことに導入の成功事例が少ないことを示唆、日本でのBSC導入に際しての重要なテーマとして「IT整備の基盤・活用」を挙げた。
変化する企業環境の中で、初期段階で設定した戦略や業績評価指標(KPI)に基づく目標が、ビジョンを成し遂げるために正しく機能しているかどうかを常に精査し、必要な修正を加えていくことが重要であり、そのためには定量的な判断と共通認識を得られるよう、事実を物語るデータをIT基盤上で常に精査し続ける必要があると、同氏は説明する。
「まず“BSCを導入すること”自体が目的となってしまってはだめです。BSCを導入したら、目標数値などは継続的に精査していかなければなりません。ですから、最初の数値目標などは『えいや』で決めてしまってもいいくらいです。ITで分析して、常に精査することがなにより重要です。そのためには、日ごろの企業活動をデータとして持っておかなければなりません。つまり、BSCを導入するならば、最初からIT基盤の整備を並行して考慮しておかなければならないというわけです」(成田氏) しかし、現実には、BSC導入の初期段階では、ビジョンや戦略が重視され、IT基盤は軽視される傾向があるという。また、戦略マップ(図2)は描かれるものの、因果関係が立証されておらず、重要成功要因(CSF)や業績評価項目(KPI)の組織間の連携が不十分だったり、相互関連性が不明確であったりするともいう。
そこで、同氏は、以下のようなBSCを精査するのに必要なIT基盤を構築し、活用すべきだと強く主張する。
その中でも「ビジネス・インテリジェンス機能」の活用が取り上げられ、SPSSの共分散構造分析ツール「Amos」を用いてBSCの分析を行った企業の事例などが紹介された。同氏によれば、Amosがたいへん使いやすいソフトウェアであるがゆえに“共分散構造分析”がBSCの分析において急速に利用されるようになっているという。
そして、“共分散構造分析(Amos for BSC)”の具体的な適用方法は以下のとおりである。
最後に、成田氏はBSCにおけるIT基盤の投資効果についてまとめ、1つの例としてシステム構成概念図(図3)を提示してプレゼンテーションを締めくくった。 「IT基盤への投資というものは、自社のビジョンを実現するために必要な投資であると同時に、BSCを常に精査していくために不可欠な投資といえます」(成田氏)
この講演では、まず古河建純社長が登壇し、ニフティ社の概要や戦略が紹介された。同社は、2006年2月で設立20周年を迎える、インターネット業界では老舗といえる存在であり、インターネット接続サービスを中心とする事業を展開しながら、近年も業績を伸ばしているという。 古河氏は、日本は現在、インターネットの接続環境については、接続速度の高速化や接続料金の低下が進み、最も先進的な国の1つであると述べ、今後発展が見込まれる「ユビキタス・ネット社会」をにらんで、同社の今後のマーケティング戦略を解説した。具体的には、同社の最大の強みである500万人を超える顧客基盤を核に「データマイニング」「コミュニケーションチャネル」「eマーケティングインフラ」「eCRMメソッド」を活用しながら、事業を拡大していくということだ。 次に、同社のeマーケティングプロジェクトマネージャー 友澤氏より、ニフティが取り組むデータマイニングの特徴についてのプレゼンテーションが行われた。なお、同氏は、本年5月に開催された「SPSS Data Mining Day 2005 」でもご講演いただいている。今回は、前回の講演内容の中でも反響の大きかった「コミュニケーションシナリオ」に主眼を置いた内容となっていた。 同社におけるデータマイニングの活用範囲は大きくは2つの領域に分けられるという。1つは「顧客コミュニケーション強化」、もう1つは「顧客への新サービス提供」である。しかし、データマイニングを実践するにあたっては、まず次のような課題があることを友澤氏は認識しているという。
「従来、業務系の顧客DBなど取得される『属性データ』『利用履歴データ』だけがデータマイニングの対象でしたが、分析結果の精度には限界が見られました。そこで、これら2つのデータに加えて、さまざまなチャネルから『態度データ』『行動データ』を意図的に取得し、顧客DBを強化してデータマイニングを実践したところ、精度が向上し、自社の施策のみならず、クライアントの施策においても高い効果を発揮してきました」(友澤氏) また、データマイニングそのものについても同氏は次のような課題があると考えているそうだ。
こうした課題の解決方策として、同社では「Clementine」を導入し、テストマーケティングとPDCAの実践、産学協同プロジェクトへの取り組み、データマイニングによるマーケティング・ナレッジのパターン化などを行っているそうだ。
「これまでは予測重視になっていて、当たるか外れるかといった予測精度がデータマイニングの目的になってしまっていました。本来の目的はCRMですから、顧客の反応データを取り入れることで、自己成長型の予測モデルを構築することが可能になりました」(友澤氏) 同社では、ネット上の商品流通特性を見つめ直し、販売者視点ではなく、顧客視点に立った“ニューミドルマン(購買代理)”へと転換することを志向しているという。つまり、顧客を理解し、顧客の視点で検索する統合型マーケティングの具体的施策として「Predictive Analyticsに基づいた購買支援」(図4)を実現している。
「Predictive Analytics」に基づいた購買支援」は、Plan-Do-Checkの流れに沿って実行されるが、ここで、調査データや反応データなどの分析に基づく「コミュニケーションシナリオ」を生成する。この「コミュニケーションシナリオ」は、顧客の変化にマッチし、顧客の納得度を高めるような一種のコミュニケーションパターンであるが、コンテンツの商品特性や併売関係などの分析によって、どのようにクロスセル/アップセルのコミュニケーションを行うのが効果的かをシナリオ化する点に特徴がある。同社では、このシナリオに沿って、半自動的に顧客向けのメッセージを作り出し、具体的な施策へと展開していくのだそうだ。 データマイニングの活用方法としては、上記のような自社の施策以外にクライアント向けに提供しているサービスが紹介された。例えば「瞬!ワード」というサービスは、1時間単位で旬な話題を抽出する検索ログ分析サービスである。そして、今後はブログのテキストデータに対するテキストマイニングやRSSマーケティングへのデータマイニング適用に積極的に取り組んでいく意向であるという同社の豊富が語られ、講演が終了した。
提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年1月20日 |
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