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<事例1> 10月25日(水)10:00〜11:10
テーマ:
コミュニティサイトのマーケティングへの活用
〜成功のキーは、会員のライフスタイル把握〜
講演者:
株式会社 千趣会 ベルメゾン生活スタイル研究所
主任研究員 高中 庄次氏
株式会社 JMRサイエンス 清水 絵里氏

 本講演では、千趣会の創業50周年記念事業の一環として2004年5月に設立された「ベルメゾン生活スタイル研究所」の取り組みについての発表が行われた。

 千趣会は、女性を対象とする生活提案型の小売業である。事業内容は、「カタログ事業」「頒布会事業」「インターネット通販、リアル店舗の運営などのその他事業」の3本柱となっている。カタログ事業では、18種類のスペシャルカタログを年2〜4回発行、会員数は635万人。頒布会事業は、毎月定期的に商品を届ける、創業以来の事業である。現在、67万人の会員を擁している。また、インターネット通販の成長も目覚しく、「ベルメゾンネット」の会員数は388万人に達しているほか、リアル店舗の「ベルメゾンマーケット」を全国6カ所で展開しているという。

株式会社 千趣会
ベルメゾン生活スタイル研究所
主任研究員 高中 庄次氏

 さて、千趣会の研究機関である「ベルメゾン生活スタイル研究所」の基本ミッション(使命)は、「衣・食・住・遊のトレンドと価値観」の発見である。このミッションを果たすため、同研究所では、民間シンクタンクや大学研究室とのネットワーク、また建築家、料理研究家、スタイリスト、モデルなどのクリエーターとのネットワークを通じた研究を進めている。また、独自のWebモニター組織を活用したマーケティングリサーチや、千趣会が有する744万人の女性顧客データベースに対するデータマイニングに取り組んでいるという。

 高中氏によれば、独自のWebモニター組織「スタイルモニター」は、現在1万人弱の会員を抱えているそうだ。年齢別に見ると、30〜34歳のいわゆる「団塊ジュニア」世代が約3割を占め、最も多くなっている。

 このように、同研究所では、年齢以外にも、既婚・未婚、結婚年数、子供の有無、子供の人数など、モニターの基本属性を把握している。しかしモニターをより詳細に把握するためには基本属性だけでは不十分で、「消費価値観」によるセグメンテーションを行っているという。

 具体的には、モニターをAからFまでの6タイプにセグメントしているそうだ。この6つのセグメントを消費に対する積極性、すなわち「消費アクティブ度」でみると、Aタイプが最も高く、Fタイプが最も低い。この消費価値観に基づくセグメントと、さまざまな基本属性との組み合わせによるマトリックスを同研究所では「消費スタイルマップ」と呼んでいる。このマップは、各セグメントのボリューム(モニター構成比)が楕円の大きさによって示されていて、同社が新商品を開発するに当たっては、どのセグメントを狙うのかを検討したり、ターゲットとするセグメントのボリュームを把握して販売予測を立てるなど、非常に役立っているそうだ。

株式会社 JMRサイエンス
清水 絵里氏

 この消費価値観に基づくセグメンテーションの分析業務をサポートしたのは株式会社JMRサイエンスである。清水氏によれば、同社では、従来独自に「消費価値観」を用いた消費者のセグメンテーションを行ってきたという。

 今回、ベルメゾン生活スタイル研究所向けに開発したセグメンテーションモデルは企業秘密のため詳細を語ることはできないことから、清水氏は、JMRサイエンスが現在採用しているセグメンテーションの尺度を紹介してくれた。

 セグメンテーションを行うための基本尺度、大きくは「衣生活価値観」「食生活価値観」「住生活価値観」に分けられている。「衣生活価値観」は、流行、センス、ブランド、バーゲン、「食生活価値観」は、本格、自然、サプリ、「住生活価値観」はインテリア、マンション、資産などについての考えをアンケート調査で聞きクラスター分析を行って「消費スタイル・セグメント」を導き出すという。

 さて、ベルメゾン生活スタイル研究所が保有するスタイルモニターに対しては、カタログの誌面企画や商品開発のために各種アンケート調査を実施しているが、自由回答部分、いわゆるテキストデータについては「テキストマイニング」を実施して有益な知見を得ているという。また、千趣会オリジナルのデータベース「女性データバンク」の充実にも力を入れている。同社では、今後も、千趣会、顧客、クリエーター、メーカー4者の共創によるモノ作りを行うための「共感コミュニティ」の仕組みを構築することに取り組んでいくそうだ。

<事例2> 10月25日(水)15:10〜16:10
テーマ:
On Goingなデータマイニングで拡がる
分析の「確実性」と「可能性」
講演者:
株式会社サークルKサンクス 営業統括本部 営業企画室
マーケティングサポート部 橋本 ゆり子氏

 コンビニエンスストア業界は、1975年に24時間営業を開始して以来、宅配便サービス、写真現像サービス、公共料金収納サービス、チケットの取扱サービスなど、さまざまなサービスを取り込んできた。近年は銀行ATMの設置や胃腸薬などの医薬品販売が始まるなど、取扱商品・サービスの拡張は止まるところがない。

 国内店舗数約6300店を擁し、業界4位の地位にあるサークルKサンクスでは、5年ほど前にデータマイニングが導入された。当初、データベースのスキルを持つシステム部が担当部署だったそうだ。しかし、2年前にマーケティングの専門部署である「マーケティングサポート部」が設立され、データマイニングは、現在橋本氏も所属する同部署が担当することになった。

株式会社サークルKサンクス
営業統括本部 営業企画室
マーケティングサポート部
橋本 ゆり子氏

 しかし、データマイニングに必要な分析スキルを同部署の全員が有しているわけではなく、またデータマイニングだけに十分な時間を割くこともできない状況であったという。そこで、データマイニング業務をできるだけ自動化、定型化することにより、効率的、継続的に分析結果を蓄積し続ける「On Going」なデータマイニングの仕組みを開発したそうだ。

 同社におけるデータマイニングの特徴と課題について、橋本氏は、分析対象となるデータ量の膨大さを挙げる。同社6300店舗では、毎日500万人の来店客に3000種類もの商品・サービスを提供している。単純に計算して、レジで発行されるレシートは500万枚、仮に1人3点の商品を購入したとすると、データ件数としては1500万レコードのデータが蓄積される。しかも、どんな人が(WHO)、いつ(WHEN)、どこで(WHERE)、どんな商品を(WHAT)といった顧客データに加え、商品データは多様化する顧客ニーズに合わせてどんどん細分化していく。膨大なデータを日々分析するだけでなく、加速する顧客の多様化・商品の細分化にどう対応(HOW)すべきかを、分析を通じて有益なルールや知見を常に見出していける環境作りが課題となっていたそうだ。

 そこで、以下の4つの基本的なシステム要件を満たすデータマイニング環境を構築したのである。

  1. 大規模なデータが扱えること
  2. 分析の拡張・カスタマイズが容易であること
  3. データマイニングプロセスを適切に管理できること
  4. 継続的(On Going)なデータマイニングによる知見の蓄積・共有・再利用ができること

 先に述べた膨大なデータは、DWH(データウェアハウス)に継続的に蓄積されている。このデータに対し、Clementineの専用サーバ上で定期的に分析ストリームを走らせ、分析結果を蓄積していく。これが橋本氏がいうところの「On Going」なデータマイニングである。また、必要に応じて「On Going」の分析結果を基に「Spot」の分析を行い、調査レポート、知見の蓄積などさまざまな目的に役立てているそうだ。

 橋本氏は講演の中で3つの具体的な分析事例を紹介してくれたが、レポートでは、そのうち、データマイニングの分析からヒット商品作りにつなげた事例を取り上げよう。

 同店で扱っている「プリンアラモード」のようなボリュームがあり、食べ応えのあるデザートの購買状況を分析すると、そもそも女性より男性の購入比率が多く、また男女とも夜7〜9時の時間帯に購入のピークがあり、お昼の時間帯のデザート購入は少なくなっていることが分かった。また、デザートの併売(買い併せ)状況を分析したところ、お昼のランチの時間帯では、女性はお弁当と一緒に購入するランチデザートとしての購入は少なく、むしろ、おでんや肉まんなどカウンターで買える軽食との組み合わせが多いこと、デザートを複数購入する目的買いが多いことが分かった。

 さらにWebアンケート調査で女性のデザートに対するニーズを調査した結果から、女性は、ボリュームは少なくてもいいから素材の良いもの、カロリー控えめのもの、弁当と一緒に買うのなら予算的にみて100円程度で買えるものが求められていることが判明。そこで同社では、良質な素材を使用し、量・カロリーともに控えめで100円前後で購入できるデザートを開発。すると見事に女性が多数購入するヒット商品となったそうだ。

 同社のデータマイニングシステムは、そもそも効率性を考慮して自動化、定型化を進めたのだが、継続的に蓄積されるデータマイニング結果を通じて、これまで見逃していた変化をとらえることができること、またデータに基づく説得力のある仮説作りに役立つものになっているという。ビジネスロジックの中に組み込まれた「On Going」なデータマイニングが大きな成果を生み出していることがうかがえる発表であった。

<事例3> 10月25日(水)16:20〜17:20
テーマ:
インフルエンサーの発見とクチコミの効果
講演者:
成蹊大学 経済学部 講師 山本 晶氏
ニフティ株式会社WOMマーケティングプロジェクト
シニアマネージャー 友澤 大輔氏

 本講演は、まず山本氏のインフルエンサーについての研究成果の報告、続いて、友澤氏の実践事例の紹介が行われた。

 山本氏の報告のポイントは、次の2点である。

  • 口コミが購買行動に与える影響度合い(インフルエンサー度)の測定結果
  • 他者の購買行動への影響度合いの高い「インフルエンサー」の特徴

成蹊大学 経済学部 講師
山本 晶氏

 山本氏によれば、インターネットの浸透によって、消費者の購買行動に変化が起きているという。それは、購買後、その商品の良し悪しを他者に積極的に情報共有するようになったという点である。こうした変化の中で、特に、他者の購買行動に影響を与える人物、すなわち「インフルエンサー」の重要性が増している。

 そこで、山本氏は、最新の購買行動モデルである「AIDEES(*)」を研究の基本的な枠組みとして採用し、アンケート調査に基づく研究を進めたという。まず、「インフルエンサー度」を「影響の質」×「影響の量」と定義。「影響の質」とは、口コミが、AIDEESのどの段階までの影響を与えたかということで測定している。つまり、口コミの結果、単に注目(Atention)させ、関心(Interest)を持たせ、購入したいと思わせるだけでなく、実際に購入・利用(Experience)に導き、新たな口コミを発生(Share)させたとすればそれだけインフルエンサー度が高いということになる。また、「影響の量」については、インフルエンサーが有している友人の数を測定している。口コミする友人の数が多ければ多いほど「影響の量」は多くなると想定している。

(*) 「AIDEES」とは、消費者が商品に注目(Attention)し、次いで関心(Interest)を持ち、購入意欲(Desire)を喚起され、実際に購入・利用(Experience)し、商品に熱中(Enthusiasm)し、最後は他者に購入利用経験を口コミ、すなわち共有(Share)するという流れで消費行動を説明するモデルである。

 上記の定義に基づいて行ったアンケート調査(2006年3月実施、全国10代以上の男女、サンプル数は予備調査約6万人、本調査約1万人、対象商品カテゴリーは、車、PC、コンビニ菓子、音楽の4つ)によると、口コミがAIDEESの各段階にどれだけ影響を与えたかという結果は次のようになった。

 例えば、車(Car)の場合、All(口コミした相手)931人のうち、A(注目した人)は488人、I(関心を持った人)は459人、D(購買欲求を持った人)は327人、E(購入した人)は230人、E(商品に熱中した人)は5人、S(他者に口コミした人)は2人という数になっている。ここで、各段階の数を口コミした相手の数で割ることによって、コンバージョン率(転換率)を測定することができる。自動車の場合、口コミが購買(Experience)につながったコンバージョン率は23.0%、他のカテゴリーでも、PC(同41.9%)、コンビニ菓子(同70.7%)、音楽(同41.7%)と、口コミが購買に与える影響はかなり大きいことが分かっている。

 続いて、山本氏は「インフルエンサー」と定義される人はどんな特徴を持っているのか、についてAMOS 6.0の共散構造分析を用いて因果関係を探った。その結果、「インフルエンサー」の持つ“豊富な知識”や、インターネット上での情報源としての信頼度や、情報発信の度合いが、AIDESSの各段階に与える影響の大きさと密接な関係があることが判明した。物知りで周囲から情報源として頼りにされ、かつネットでの発言が多い「インフルエンサー」は、他者の購買行動に影響を与える度合いも大きいということだ。

 また、クラスター分析を行い、他者の購買行動に与える影響の度合いが最も大きい「インフルエンサー」の特徴を見ると、基本属性としては、20代女性、40代男性、自営業者、高所得者の占める割合が多く、またブログ所有率が高いことなどが分かったという。

 山本氏は、今回の研究成果の中でも、特に、口コミが実際の購買につながる度合いは、商品カテゴリーによって差があるもののかなり高いことが検証できたこと、また、他者への影響度合いの高い「インフルエンサー」としての条件は、Web上で情報発信を行っていること、という2点を強調していた。

 続いて友澤氏は、ブログなどのように生活者が作成するメディア、すなわち「Consumer-Generated Media(CGM)」が登場し、自分の体験や意見を述べる「物言う顧客」が増えてきたことに伴って、「物言わぬ顧客」へのインフルエンスが起きていることを指摘。また、そこで起きていることをいち早く的確にとらえることがマーケティング上の重要な課題となりつつあると述べた上で、物言う顧客、つまり「インフルエンサー」のブログを活用したトラッキングについて具体事例を紹介してくれた。

ニフティ株式会社
WOMマーケティングプロジェクト
シニアマネージャ 友澤 大輔氏

 ニフティ株式会社では、現存するほぼすべてのブログを対象として、そのテキストデータを分析し、インフルエンサーの特定や口コミの伝播をトラッキングすることのできるサービス「BuzzPulse」を提供している。

 このサービスでは、山本氏の研究で検証された「インフルエンサーがIDEESの各段階に与える度合い」をブログの発言の中から自動的に分析することに成功しているという。また、特定ブランドに対する関与度の高さや、ネットワーク規模(山本氏の定義した「影響の量」と同等)を測定することによって、ブランドへの関与度が高く、またWeb上での発言力の高い「ブランドエバンジェリスト」や、ブランドへの関与度は高いものの、Web上での発言力は低い「ブランドファン」など、ブログの書き手の「インフルエンサー」としてのセグメント化が可能だ。

 こうした「BuzzPulse」の機能を利用して、同社ではあるブランドにおいて実験を行った。それは、当該ブランドのブログを立ち上げ、当該ブランドに対する関与度の高いブランドエバンジェリストやブランドファンを合計150人抽出、彼らのブログに対してリンク(トラックバック)を張る(逆に、相手のブログからも当該ブランドのブログにトラックバックを張ってもらう)というものである。狙いは、インフルエンサーからの口コミ伝播と、当該ブランドを好むユーザー(ロイヤル顧客)をブログのリンクによってコミュニティ化し、その育成を図ることであった。その結果、次のような成果が把握できたという。

  • TVコマーシャルなどの告知を一切行わなかったにもかかわらず、当該ブランドに触れたWeb上のコンテンツが3倍以上に増加、口コミが確実に広がることが分かった
  • SEO(サーチエンジン最適化)をまったく行わなかったのに、ブログ立ち上げから2週間で検索結果上位5位に表示されるようになった
  • 当該ブランドのロイヤル顧客といえる「ブランドエバンジェリスト」は、当該ブランドのブログに対して継続的にトラックバックを張ってくれており、いわゆる優良顧客との継続的な関係維持が実現できた

 友澤氏は、今回の実験のフレームワークから、ブログを通じた口コミの効果やインフルエンサーの活用によって、ロイヤル顧客の関係維持・育成に有効であることが確認できたとしている。そして、「インフルエンサー」とどういうコミュニケーションを図れば効果的かというマーケティング戦略を練ることができるとして講演を締めくくった。


提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画:アイティメディア 営業局
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2006年12月27日
 
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