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 @IT > [セミナーレポート] Solaris 10 Developer Meeting for x86 Solution 〜革新的OSの全貌を探る〜
 
@IT[FYI] 企画:アットマーク・アイティ 営業企画局
制作:アットマーク・アイティ 編集局

掲載内容有効期限:2005年2月19日

 

[セミナーレポート]
Solaris 10 Developer Meeting for x86 Solution
〜革新的OSの全貌を探る〜



サン・マイクロシステムズが2005年1月末にダウンロード提供を始める最新版OS「Solaris 10」を紹介するイベント「Solaris 10 Developer Meeting for x86 Solution」が2004年12月16日に都内で開催された。会場には開発者を中心に当初の予想を上回る400人以上が参加し、Solaris 10への関心の高さを伺わせた。6つのセッションが行われたイベントのハイライトをお伝えする。


   600以上の機能改良、 「他社と比較して圧倒的なパフォーマンス」
サン・マイクロシステムズのフィールド・マーケティング統括本部 取締役 本部長 杉本博史氏

  「ここ半年くらいでサンがかなり盛り上がってきた」。 サン・マイクロシステムズのフィールド・マーケティング統括本部 取締役 本部長 杉本博史氏はセッション冒頭のあいさつでこう述べて、サンの元気のよさをアピール。特製のSolaris 10 Tシャツを示して、「Solaris 10は600以上の機能を追加し、さらにバイナリのコンパチブルを保証する」と説明した。「1〜3月にかけてセミナーやプロモーションを展開し、Solaris 10の全貌をお知らせしたい」 。

 Solaris 10の機能改良点は600以上におよぶ。同社クライアント・ソリューション統括本部 執行役員 植松裕次氏はそのうちの代表的な機能を5つ紹介した。1つはネットワーク性能を中心にパフォーマンスを向上させたこと。植松氏は「他社OSと比較して圧倒的なパフォーマンス」と表現した。性能低下したプロセスやアプリケーションを見つけ出すツールも追加した。2つ目はシステム利用率の向上。システムの利用率をSolaris 10を使うことで最大80%まで向上させられるという。3つ目はセキュリティの機能アップ。Trusted Solarisを継承し、「商用OSでは最高レベルのセキュリティになった」と強調した。

 4つ目はミッションクリティカルな業務に利用するOSとして欠かせない可用性の向上。新たに自己修復機能を追加し、ファイルシステムの信頼性は99.99999999999999999%に達したという。5つ目の特徴はマルチベンダ対応。SPARC、x86のプロセッサだけでなく、AMD64、Intel EM64Tなどの新しいプロセッサにも完全対応。さらに1つのソースコードからSPARC、x86、AMD64向けのOSを生成している。

サン・マイクロシステムズのクライアント・ソリューション統括本部 執行役員 植松裕次氏

 OSの「使用権無料」を打ち出したのも大きな特徴だ。Solaris 10に興味を持つエンジニアはサンのWebサイトからSolaris 10を無償でダウンロードし利用できる(無償利用は4CPU以下のサーバで利用する場合)。サンはSolaris 10のサポート・サービスで収益を挙げる考えで、3種類の定額制モデルを用意する。Solaris 10のオープンソース化も計画している。

 植松氏はまた、サンとAMDのパートナーシップについても強調した。サンは2003年11月にAMDと提携した後、32/64ビット互換のプロセッサ「AMD Opteron」を搭載したサーバ「Sun Fire V40z」「Sun Fire V20z」、ワークステーション「Sun Java Workstation W1100z/W2100z」を出荷してきた。植松氏はSolaris 10とAMD Opteronの組み合わせについて「あるエリアではSPARC以上のトータルの価値を引き出せる」と説明。サンがAMD Opteronサーバを開発していた米Kealiaを買収し、Kealiaに参加していたサンの創設者の1人、アンディ・ベクトルシャイム(Andy Bechtolsheim)氏がサンに復帰したことで「2005年、次世代のAMD Opteronサーバが登場する」(植松氏)と語った。

   Linux戦略は「Beat Windows and RedHat」

 サンはSolaris 10の発表でLinux戦略を見直した。キーワードは「Beat Windows and RedHat」。同社プロダクトマーケティング本部の高松新吾氏は「サンが叩くのはWindowsとレッドハット。マイクロソフトを叩くのでありません。Linuxはお友達です」と述べた。提携しているマイクロソフトとは友好関係を続けるが、Windowsとは競争を続ける。Linuxはコミュニティも含めて良好な関係を築くが、ディストリビュータのレッドハットはライバル、という考えが戦略の基本となっている。

 サンがSolaris 10の投入で目指すのは、Linuxユーザーの奪還だ。Solaris 10のアップデート版にはLinuxのアプリケーションをネイティブで稼働させられるソフトウェア「Project Janus」を搭載する。Solaris 10のカーネルがネイティブでLinuxをサポートする技術。イベントでは「Linuxアプリケーションによっては(Linuxネイティブと比較して)より高速に Solarisで実行される例がある」と説明された。ただ、サンでは「あくまでもSolarisのアプリケーションを使ってもらいたい」としていて、Project JanusはLinuxからSolarisへの移行を検討する顧客のための「トランジションのツール」との位置付けだ。

 サン・マイクロシステムズの東京ソフトウェア本部 本部長の大曽根明氏は、デモを交えながらSolaris 10に追加された目玉技術を紹介した。大曾根氏が真っ先に説明したのは「ダイナミックトレース」(DTrace)。DTraceは動的にシステムの状態を把握し、パフォーマンスチューニングができる機能。最大の特徴は本番稼動中のシステムであってもカーネル、アプリケーション、ユーザーの動作を調査できることだ。そのため突発的に起きるトラブルも解析し、修復できる。

サン・マイクロシステムズの東京ソフトウェア本部 本部長の大曽根明氏

 Dtraceは「プロバイダ」「プローブ」「コンシューマ」の3つで構成される。プロバイダはカーネルでイベントをチェックし、必要な情報を解析プログラムである「コンシューマ」に送る。プロバイダはシステムコール、各カーネル内関数、ユーザーコードなどさまざまな種類がある。プローブはカーネルの監視ポイント。プロバイダから提供され、カーネルをチェックする。Dtraceには3万以上のプローブが用意され、カーネルやアプリケーションの各作業を監視できる。

 3万以上のプローブがカーネルを監視するというとパフォーマンスの低下が心配される。しかし、使わないプローブは機能をオフにでき、「ほとんどオーバーヘッドはない」(大曾根氏)という。収集したデータを収集し、分析するプログラムであるコンシューマはD言語で記述する。カーネル内のすべての変数にアクセス可能で、コマンドスクリプトで利用できる。大曽根氏はDtraceについて「大量のデータを処理し、パフォーマンスを解析する業務に適している」と説明した。

   仮想化技術でサーバ統合を進める「Solarisコンテナ」

 大曾根氏が次に説明した「Solarisコンテナ」は、Solaris 10で最も注目されている仮想化の技術だ。OS内にコンテナと呼ばれる複数の独立したパーティション(論理空間)を作成でき、1つのマシン上で同時にいくつものSolaris 10を稼働可能にする。それぞれのパーティションは独立しており、特定のパーティションだけ再起動させられる。

 1つのサーバに対して1つのOS、アプリケーションを配置するのがこれまでの構成だが、Solarisコンテナを使うことで、1つのサーバ内に仮想的なサーバ環境を複数作ることができる。それぞれの仮想環境に割り当てるリソースは運用管理者の判断で任意に設定可能。オーバーヘッドが生じやすいバーチャルマシン方式による仮想化と比較して、パフォーマンスの低下が少ないという。

 大曾根氏が力を入れて説明したのは、Solarisコンテナのセキュリティ機能だ。仮想化された各環境はお互いが独立し、仮に1つの仮想環境に障害が起きても別の仮想環境には影響を与えないようになっている。各環境に対しては仮想化されたファイルシステムのリソースやネットワーク・リソースが割り当てられるが、各環境では自らに割り当てられたリソースしか見えないようになっている。

 Solarisコンテナを使うことでサーバのプロセッサリソースを効率的に利用できる。1つのサーバで1つのOS、アプリケーションしか利用できない通常の環境では、サービスごとに複数のサーバを用意する必要がある。Solarisコンテナを利用すれば、これらの分散化されたサーバを1つのサーバに統合できる。ハードのコストを抑えられるだけでなく、運用管理を集中させることが可能でメンテナンスコストも下げられる。

   ディスカッションでは「サンが本気になりうれしい」

 日本AMDのCPGマーケティング本部 テクニカルマーケティング部 課長 吉田友二氏はAMD側の視点でサンとのパートナーシップについて説明した。サンとAMDが提携したのは2003年11月。サンが2004年中にAMD Opteronプロセッサを搭載した2way、4wayのサーバを出荷することや、両社が協力してSolarisとJava Enterprise SystemのAMD Opteronへの最適化、64ビットモードへの対応などを行うことが提携の内容だった。吉田氏はこれらの提携内容について「全部、実行してきた」と説明し、両社の提携が順調に進んでいることを強調した。

 サンは攻めに出るために組織の強化も行っている。2004年9月には開発者を支援する新組織として「デベロッパー・プログラムオフィス」を新設した。デベロッパー・プログラムオフィスでは、個人、法人向けの情報提供サイト「Sun Developer Connection」(SDC)を開設している。個人会員向けにはサンの技術についての無償のソフトウェア、サンプルコード、ホワイトペーパー、ニュースレターなどを提供。法人会員に対しては技術情報の提供のほかに販売プロモーションの支援やサンのハードウェア/ソフトウェアを特別価格で販売するなどの開発支援を行っている。デベロッパー・プログラムオフィスはほかにサンのサーバ上での動作検証、移植作業を行えるポーティングセンターの運営などを展開している。

パネルディスカッションの参加者。左から日本サン・ユーザ・グループ 幹事の古野達也氏、佐藤通敏氏、サンの大曾根明氏、樋口貴章氏、高松新吾氏、植松裕次氏

 最後のセッションとして行われたユーザーを交えたディスカッションではSolaris 10とサンのx86戦略に対するさまざまなコメントが聞かれ、活発な議論となった。日本サン・ユーザ・グループ幹事の古野達也氏はサンのx86プラットフォームへの取り組みについて「ようやくサンが本気になってくれてうれしい」と歓迎のコメントを述べた。古野氏は自らの業務で顧客企業に対してシステムの提案などをしているが、サンのx86プラットフォームのサポートが本格化したことで「自信を持って顧客に勧められるようになった」と述べた。

 モデレータを務めたサンのプロダクトマーケティング本部 本部長 纐纈昌嗣氏はサンのx86プラットフォームへの取り組みについて、「サンは長くx86のビジネスを行ってきたが、AMDとのパートナーシップをベースにx86のビジネスが本格的に立ち上がってきた」と説明。大曾根氏も「ここ数年のLinuxの台頭でサンのエンジニアが真剣に対Linux戦略を考え始めた。現在は本当の意味でSPARCプラットフォームと並列でx86プラットフォーム向けが開発されている」と述べ、サンの本気度を強調した。

 
下記より、当日のプレゼンテーションの資料をダウンロードしていただけます。また一部の内容はストリーミング映像でご覧いただけます。ぜひご利用ください。
「Sun x86 ソリューション の取り組みと実例」
サン・マイクロシステムズ株式会社
クライアント・ソリューション統括本部 
執行役員 植松 裕次


「Solaris 10 の全貌」
サン・マイクロシステムズ株式会社
プロダクト・マーケティング本部 高松 新吾


「インサイドSolaris 10」
サン・マイクロシステムズ株式会社
東京ソフトウェア本部 本部長 大曽根 明


「インサイドAMD Opteron(TM)」
日本AMD株式会社 様
「Sun の開発者向けサポートプログラムの紹介」
サン・マイクロシステムズ株式会社
C&I 推進室 主幹部長 増月 孝信

Solaris 10関連リンク
Solaris 10紹介ページ

Solaris 10新機能紹介

Solaris 10の入手(英文ページ)

Solaris Developer Connection

Sun Developer Connection

サン・マイクロシステムズ


 
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