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激変する次世代コンピューティング・パラダイム
ためのコアテクノロジー“Solaris & SunPlex

第1回 SolarisTM オペレーティング環境

 

     次世代コンピューティング・パラダイムの流れ
     

 サン・マイクロシステムズ(以下、サン)はこれまでも、新しいコンピューティング・パラダイムが生まれ育つ過程で常に主導的な役割を果たしてきている。創立時点からネットワークを強く意識した製品開発に取り組み、インターネット時代をリードしたのはすでに周知のことであろう。現在のサンはUNIX(R)サーバに注力し、インターネット環境でサービスを提供するための土台となるコンピューティングプラットフォームを主たる製品としている。しかし、一方では携帯電話のようなデバイスまでも視野に入れたJavaTMテクノロジーや、次世代P2Pシステムの基盤技術となることを企図したJXTAなど、一見“サーバ”とは縁が薄いように思える技術開発にも積極的に取り組んでいる。

 この背景には、サンならではのビジョンがある。つまり、現在の需要に対応することにとどまらず、次の時代のアーキテクチャをいち早く構想し、自らの手でそれを実現しようと取り組むのがサンの基本的な戦略であり、ここから生まれる先進性がユーザーの支持を得るための大きな力となっている。では、サーバの強化と同時にJ2EETM/J2METMやJXTA、あるいはグリッド・コンピューティングといった分散アーキテクチャに取り組む根拠となるサンの次世代コンピューティング・パラダイムに対するビジョンとはどのようなものだろうか?

 コンピュータの発展の歴史は、メインフレームから始まり、現在はPCやその発展形であるPCサーバがボリュームゾーンを構成している。この流れはマイクロプロセッサの急速な性能向上と一般消費者レベルでのPC需要の拡大を背景に「より安価でより強力なコンピュータ」を指向するものであった。これを言い換えると、「集中モデルから分散モデルへの移行」だともいえる。メインフレームからミニコンピュータ、ワークステーション、そしてPCへという「ダウンサイジング」と呼ばれたトレンドである。

「サンの解説による、コンピュータの歴史」

▲「コンピュータの発展はメインフレームから“ダウンサイジング”で分散へと向かい、インターネットの普及によって再度集中の方向へシフト。現在は、新世代の大型サーバと、より小型軽量の分散クライアントに二分化しつつある」という

 一方、分散化はハードウェアのコスト削減につながった反面、台数の爆発的な増加に伴う管理コストの増大も引き起こした。その反省から、逆に集中化へと向かう動きが出てきた。かつて「ライトサイジング」、いまは「サーバ・コンソリデーション」と表現される流れである。これは、集中から分散へという流れの揺り戻しとも見られるが、かつてのメインフレームへ逆行するということではない。かつてのメインフレームとは違った形の、“現代的なサーバ”が求められている。

▲サンのフラッグシップ・サーバ「Sun Fire 15K」

 そして、ここに来て「集中」か「分散」かという単純な問題ではなく、集中/分散それぞれの特徴をより深く追求し、それぞれのメリットを十分に引き出した上で組み合わせて利用する、というモデルが定着しつつある。集中と分散の二極化と表現することもできるだろう。新しい「集中モデル」の頂点に立つのが、サンの最上位機種である「Sun FireTM 15K」である。また、Sun Fire 15Kの下位に位置するミッドレンジサーバ群では、最新のSun Fireサーバのラインアップが完成し、「ミッドフレーム・サーバ」を名乗っている。これは「メインフレームの信頼性をミッドレンジの価格で」というコンセプトの表明であり、従来のメインフレームの利点は継承しつつ、メインフレームには欠けていた使いやすさを従来のUNIXサーバそのままに受け継いだ新世代のサーバ群に似つかわしいキャッチフレーズだ。そして、このキャッチフレーズは、メインフレームとは違った形での「集中」モデルを実現するサーバがこれから必要となるのだ、というサン・マイクロシステムズのビジョンの表明ともなっている。

     次世代サーバに求められる能力
     

 では、メインフレームとは異なる次世代の集中型サーバとはどのようなものなのだろうか? これを考えるには、「集中」と「分散」の二極化が進んだネットワーク環境ではどのように通信が行われるのかを考えておく必要がある。

 これまでの「サーバ/クライアントモデル」に基づくインターネット環境でも、サーバに求められる処理能力は増大し続けてきており、スケーラビリティ(Scalability:拡張性)が重視されてきた。しかし、この段階でのスケール増大は、基本的にはネットワーク上のノード数に比例する形で起こっている。つまり、ノード数が倍になれば必要な処理能力や処理すべきトランザクションも倍になる、という関係である。インターネットへの接続環境が普及し、かつ一般家庭でのPC普及率が伸び続けた結果、ノード数は急速に増大したが、それでも比例関係に変化はなかった。

 しかし、今後P2P技術が広く普及することが想定され、さらに個人の情報アクセスの主体がPCからPDAや携帯電話といったすでに市場に膨大な数が存在するデバイスへと移り変わりつつある。この膨大な数のデバイス群が、特定のサーバにアクセスするのではなく、P2Pでデバイス群同士が相互にコミュニケーションするとなれば、通信経路の数はノード数の2乗に比例して増大していくことになる(n個のノードがあれば、n×(n-1)個の通信経路が存在する)。つまり、nのオーダーからn2のオーダーに移行するわけだ。

「サンの描く、P2P普及を控えた次世代ネットワーク」

▲これまでのインターネットサーバはサーバ/クライアントモデルに基づいており、トランザクションパスはクライアント数に比例するnのオーダーだった(図左)。これに対し、P2P普及を控えた次世代ネットワークでは、クライアント同士が通信を行うことができるようになり、網の目のように広がるため、トランザクションパスが増え、n2のオーダーになる(図右)。サーバは、コミュニケーションパスの交点でトランザクションに対して付加価値を付与することでサービスを提供する

 サーバ/クライアントモデルから網の目状のネットワークモデルへの移行に際して、サーバに求められるスケーラビリティのレベルもn2のオーダーに対応するものが求められる。この段階でのサーバは、ノード間のコミュニケーションパスの交点にあたる位置に置かれ、ノード間のコミュニケーションに対して付加価値を加えるようなサービスを提供するようになると予想される。ここで必要とされる処理能力は、どのようなサービスを実行するかによって上下するが、スケーラビリティとしてn2のオーダーが要求される以上、並の拡張性では到底追いつかない。しかしながら、現在業界でもトップレベルの拡張性を備えるサンのサーバでは、Sun Fire 15Kで最大106CPUまで拡張可能となっており、現時点でも頭1つ抜けたレベルに達し、有利なポジションを占めている。

     次世代サーバを支えるSolaris オペレーティング環境
     

 Solarisは、サン製品を貫くオペレーティング環境であり、正統なUNIXシステムであると同時に、メインフレームに迫る信頼性/拡張性を備えたエンタープライズシステムでもある。

 次世代サーバでは極めて高いレベルの拡張性が求められることは前述の通りだが、これを支えるUNIX OSを実際に提供することはそう簡単な作業ではない。UNIXはもともとMulticsという巨大OSを簡略化し、技術力のあるユーザーが「自分のコンピュータ」として使えるようにしたOSであり、当初はシングルCPUのハードウェアを前提として、それに見合った機能しか実装されていなかった。これをSun EnterpriseTM 10000(通称:StarfireTM)では最大64CPUをサポートするまでに拡張したのだが、このシステムの登場は1997年のことである。つい最近まで64CPUをサポートするUNIXサーバがほかのメーカーからリリースされることがなかったことからも、このスケールが容易には実現できないものであることがうかがえる。しかも、昨年発表された後継機種Sun Fire 15Kでは、最大CPU数がさらに拡大され、106CPUに到達している。この拡張性は現時点で必要な規模を超えていると言えるが、それでもこの規模が実現されたのは、サンではn2のスケールが必要とされる時期はそう遠くないと判断しているためである。そして、これができるのも、拡張性に関しては大きなアドバンテージを備えるSolarisをOSとして採用しているからである。

 Solarisオペレーティング環境は長い時間をかけて完成度を高め、また機能をさらに強化する努力が続けられてきている。前述の通り、スケーラビリティに関してはすでにかなりの高水準に達しているため、現在での強化の努力は主にRAS(Reliability/Availability/Serviceability:信頼性/可用性/保守性)機能の向上に向けられている。

 RAS機能に関しては、あたかも「メインフレームの水準に到達すること」が最終目標のように言われることが多い。しかし、サンの目標が「UNIXサーバをメインフレームに逆行させる」ことではないのは明らかだろう。次世代のn2オーダーのネットワーク環境に対応するサーバを考えた場合、増大するトランザクションに対応するために高レベルの拡張性が必要となることは前述の通りだ。このとき、サーバが大規模に拡張すればするほど、そのサーバが実現するサービスの価値が高まり、重要性が増す。つまり、簡単にダウンしてもらうわけにはいかないということになる。このため、RAS機能が重要な要件となるわけだ。

 従来のメインフレームの信頼性と考え方が異なるのは、あくまでも網の目状に展開するn2オーダーのネットワークでのサービス提供を想定している点である。このため、「ダウンしない」堅牢さ(Robustness)に加えて、新しいサービスを容易にシステムに追加できる柔軟性(Agility)が求められる。インターネット環境では次々に新しいサービスが生まれている。回線帯域が拡大するのと歩調を合わせてコンテンツのリッチ化が進み、マルチメディアデータなど、新しいデータ形式を扱う必要も出てきている。メインフレームのように、堅牢ではあるが変更が容易ではないシステムでは、この環境でサービスを提供するためのプラットフォームとして利用するのは困難である。そこで、堅牢性のみを追求するのではなく、柔軟性と堅牢性を共に高めていく必要がある。サンのSolarisオペレーティング環境強化への取り組みは、2方向の要件を同時に高めていく、というベクトルで行われているのである。

「サンの考える、主要OSの位置付け」

▲現在の主要OSにおける、柔軟性と信頼性のバランス。Windows(NT/2000など)は柔軟性に優れるが信頼性は低い。一方、zOS(メインフレーム)は信頼性が高いが柔軟性には難がある。UNIX系OSはその中間に位置付けられるが、多くの商用UNIXが信頼性を高めzOSの方へ行こうとする中、Solarisオペレーティング環境は柔軟性と信頼性を共に高める方向、ちょうど直角のベクトルを成す方向に向かっている

 なお、RAS機能に関しては、ハードウェアの信頼性/品質の向上や高度な冗長化設計などに注目が集まりがちだが、実際にはSolarisオペレーティング環境の機能によって実現されている部分も多い。

 ハードウェアの品質を向上させ、簡単にはダウンしないように信頼性を向上させる努力は続けられているが、それでも稼働を続ける間に何かしらの故障が発生することは避けられない。故障すれば、当然保守作業が必要となる。一方で、ユーザーに提供するサービスを止めないためには「システムを停止せずに保守ができる」必要がある。このために導入されたのがDR(Dynamic Reconfiguration:動的再構成機能)である。DR機能をサポートするサーバでは、システムを運用し続けながらCPU/メモリボードからI/Oボード、電源そのほかのハードウェアの交換や追加を行うことが可能だ。これにより、万一の故障の際にもサービスを停止しなくて済むほか、システムの処理能力を拡大するためにCPUやメモリを追加するなどの作業も運用中に実施できる。これは一見ハードウェアの機能のようにも見えるが、実際にはSolarisオペレーティング環境が特定のハードウェアの利用を停止して交換できるように準備を整え、新しいハードウェアが追加された際にはそれを無駄に遊ばせることなく効率的に利用するようスケジューリングを行う、といったサービスを提供することで初めて実現できているのである。こうしたリソーススケジューリングは、拡張性の確保と同様にもともとUNIXが苦手としていた分野だが、いち早くSolarisオペレーティング環境で実現したことで、サンの優位が確立したといってよい。

 ハードウェアだけではなく、ソフトウェアに関しても同様に運用中に保守を行うための機能として、「Live Update」や「Hot Patch」といった機能がサポートされている。ハードウェア/ソフトウェアの両面において、「運用停止することなく保守作業ができる」環境が整備できているわけだ。

 現在では、競合他社も拡張性やDR機能のサポートなどの面で追いついてきているが、サンがSolarisオペレーティング環境でこうした機能を実現した時点から考えると、3〜5年は遅れている。つまり、それだけSolarisオペレーティング環境は先行しており、現在ではすでに次世代のコンピューティング・パラダイムを実現するための機能強化に取り組んでいる段階である。この差は簡単には縮まらないし、このリードを確保したことが現在のサン・マイクロシステムズの強みとなっているのである。

    第2回 分散するコンピュータ資源を統合するアーキテクチャ

 

 
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