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激変する次世代コンピューティング・パラダイム
のためのコアテクノロジー“Solaris & SunPlex”

第2回
分散するコンピュータ資源を
統合するアーキテクチャ

 

     分散にまつわる諸問題
     

 前回「SolarisTM オペレーティング環境」で紹介したように、現在のコンピューティング・パラダイムは、集中と分散の2極化が進行している。これは、Sun FireTM 15KのようなハイエンドサーバやPDA/携帯電話といった軽量端末など、個々のコンピュータ・ハードウェアについて言えることだが、システムというレベルでも同様の動きがある。

 分散したデバイス同士が自由にコミュニケーションパスを確立し、通信を実行する。そして、爆発的に増加するコミュニケーションパスの途中で通信を中継し、付加価値を加えるという“サービス”を提供するサーバは、より大規模で信頼性の高いものにならざるを得ない、というのが前回紹介したサン・マイクロシステムズ(以下、サン)のビジョンであった。

 そして、この大規模化する次世代サーバについてより詳細に見てみると、これはもはや単体ハードウェアとしての“サーバ”ではなくなりつつあるのが現状だ。サービスの提供主体、という意味ではまさにサーバと言えるのだが、現状のインターネット環境でのサービスの提供がどのような形で実現されているかを考えてみても、これが単体のハードウェアではなくなっていることが分かるだろう。

 「n層アーキテクチャ」と呼ばれるシステムモデルは、いまやインターネット環境でのサービス提供システムの基本となっている、一般的には、クライアントからのコネクション要求を受け付けるWebサーバ群がフロントエンドとなり、中間層には具体的なサービスを実行するアプリケーションロジック層が置かれる。そして、バックエンドにはデータベースがある、という3階層モデルが基本となる。さらに、これら各階層のサーバ群がアクセスするデータストレージがSAN(Storage Area Network)やNAS(Network Attached Storage)という形で接続される。現在多くのWebサイトや各種のサービス提供者(xSP:Service Provider)が採用するシステムであり、インターネット上に散在する「次世代大規模サーバ」は、それぞれがこうした複雑な内部構造を持つ大規模なシステムとなっているのである。

▲Service Pointのアーキテクチャ

 この“仮想的なサーバ”を、サンでは「Service Point」と呼んでいる。外部のインターネットに向けたサービスを提供する場所であると同時に、それ自体がネットワークシステムでもある。

 ここで、課題として浮上してくるのが、Service Pointの運用管理である。

 各Service Pointは、増大するインターネットトラフィックに機敏に対応できる柔軟性や拡張性が求められる一方で、サービス停止を避けるために高い信頼性/可用性を備える必要がある。規模を拡大するためには、サーバの台数増が不可避だが、これは管理コストの増大を招くだけでなく、複雑さが増すことで管理不能状態に陥る危険もはらむ。そこで、インターネット全体から見たときにService Pointが単一サーバに見えるのと同様に、運用管理面でもService Pointを単一サーバのように扱えないか、という要請が生まれてくる。サーバの台数が増え、大規模化/複雑化した構成を隠蔽し、単純化して見せる仕掛けが必要とされているわけだ。

     SunTM Cluster 3.0
     

 実は、Service Pointのアーキテクチャの図にあるような複雑なネットワークシステムを、サンは「SunPlexTMシステム」と呼んでいる。SunPlexは、SolarisTMオペレーティング環境、サーバハードウェア、ストレージやネットワークデバイス、そして各種ソフトウェアが集まって構成された環境そのものであり、その中核に位置するのがクラスタリング・ソフトウェア「Sun Cluster 3.0」である。

 クラスタリングというと、まずイメージされるのがフェイルオーバー機能である。簡単に言えば、予備のサーバを用意しておき、メインのサーバに障害が発生した場合には、すかさず予備サーバに切り換えて処理を継続することでサービス停止を回避する技術である。高信頼性クラスタとも呼ばれる。Sun Cluster 3.0でも、もちろんこのタイプのクラスタリングはサポートされており、最大8台までのクラスタノードを、クラスタペア、N+1、ペア+Nの3種類のトポロジで運用することが可能である。これにより、従来から要求されている高信頼性クラスタの実現を高い水準でサポートするが、実はこの機能だけでは先ほど述べた「複雑さを隠蔽し、運用管理を容易にする」ためには不十分である。Sun Cluster 3.0の特徴は、この高信頼性クラスタの実現に加え、新次元のシステム管理を実現できる機能が加えられている点にある。

▲Sun Cluster 3.0のアーキテクチャ

 Sun Cluster 3.0は、Solaris 8オペレーティング環境の機能拡張と位置付けられ、OSと密接に統合されている。これが可能になるのは、ハードウェア、OS、そしてクラスタリング・ソフトウェアをすべてサンが自社開発しているからである。システム全域に渡る技術開発能力を維持しているIT関連企業の数がごくわずかになっている現在、必要なシステムコンポーネントすべてを自社で所有するサンの大きな強みであると言える。

 また、Sun Cluster 3.0は、1990年代に実施された研究プロジェクト「Spring」の成果を継承している。Springはオブジェクト指向に基づいた分散OSの設計の試みであり、複数の分散システムを単一のシステムイメージにまとめることができるものであった。つまり、Sun Cluster 3.0は、単に高信頼性を実現するだけでなく、複数のサーバからなるService Pointをあたかも単一のコンピュータであるかのように扱うための基盤技術を提供しているのである。

 Sun Cluster 3.0は、ファイルシステムを仮想化し、複数のサーバのファイルシステム全体をまとめて1つのファイルシステムイメージに統合する機能がある。この実現には、当然OSであるSolaris 8のファイルシステムの改良を伴うため、この点からもSun Cluster 3.0がSolaris 8と統合される必要があるわけだ。このファイルシステムを、グローバルファイルシステムと呼ぶ。そして、ファイルシステムだけでなく、サーバに接続されているテープやディスクといった各種ドライブなどのデバイスを統合するグローバルデバイス、そしてネットワーク・インターフェイスを仮想化して統合するグローバルネットワークといった機能も同時に実現されている。なお、グローバルデバイス/グローバルネットワークに関しては、UNIX(R)ではもともとデバイスノードがファイルシステム上にマッピングされる構造となっていることから、グローバルファイルシステムの自然な延長としてできあがっている。

 グローバルファイルシステム/グローバルデバイス/グローバルネットワークの各機能を利用すると、管理者は複数台のクラスタノードの個々の違いを意識せず、すべてを統合された環境として扱うことが可能になる。そして、障害発生時には、あるノードから別のノードに処理を透過的に移動できる。この機能を利用して従来の高信頼性クラスタと同様の「フェイルオーバーサービス」が実現できるし、さらに負荷に応じてサービスを増減させる「スケーラブルサービス」にも対応可能だ。垂直方向/水平方向の両面のスケーラビリティを容易に実現できることになる。

 また、Solaris 8オペレーティング環境と密接に統合されており、カーネルレベルでの監視やフェイルオーバーが可能なことから、障害時の切り換えや復旧が迅速で、ダウンタイムが最小化されている点も大きなメリットとなっている。

 なお、Sun Cluter 3.0のアーキテクチャは、以前“Full Moon”という名称でロードマップが示されており、今後も継続的に機能強化が行われ、さらにSolarisオペレーティング環境との統合を強めていく方針が明確になっている。将来に渡ってサポートが約束されている点も、ユーザーにとっての安心感に繋がるだろう。

     ネットワーク環境の“先”を走り続けるサン
     

 “The Network Is the ComputerTM”という明確なコンセプトを掲げ、設立当初からネットワーク・コンピューティングの実現に取り組んできたサンだが、現在のインターネットの普及は、その目標の一応の実現であるかのようにも見える。しかし、サンの目指すゴールは常に先にあり、現状にとどまることをよしとしていない。Service Pointのアーキテクチャの図からも分かるとおり、Sun Cluster 3.0によって、Service Pointを単一のコンピュータとして扱えるようにするための環境整備が進みつつある。もちろん現在のSun Cluster 3.0の機能で完成、ということではなく、この分野でもさらに技術開発が進められていき、機能強化が継続されるのだが、それだけはない。

 インターネット環境全体で見れば、膨大な数のクライアントと、続々と増えていくService Pointが新たな分散問題を引き起こしていくことが容易に想像される。この「さらなる分散」に対応するには、より高次元の統合アーキテクチャが必要となる。

 現在サンが精力的に取り組んでいるプロジェクトには、JXTAやグリッド・コンピューティングなど、「分散環境」をテーマにしたものが目立つ。さらに、新たなコンピューティングアーキテクチャとして“N1”構想が出てきているが、これは「分散したService Pointを統合して単一システムイメージを与える」ためのものと見ることもできるだろう。分散と統合がより高度化していく状況を見据え、すでに次のレベルに向けた開発が始まっているわけだ。ネットワーク・コンピューティングを推進するサンの活動は、今後もネットワーク環境でITを活用するユーザーに重大な影響を及ぼし続けるのは間違いないだろう。

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●Sun、Sun Microsystems、Sun Fire、SunPlexおよびThe Network Is The Computerは、米国およびその他の国における米国Sun Microsystems, Inc.の商標または登録商標です。
●サンのロゴマークおよびSolarisは、米国Sun Microsystems, Inc.の登録商標です。
●UNIXは、X/Open Company Ltd. が独占的にライセンスしている、米国およびその他の国における登録商標です。
 
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