アカウントアグリゲーション(あかうんとあぐりげーしょん)情報システム用語事典

account aggregation / 口座情報一括表示

» 2011年07月27日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 個人向けのオンラインサービスで、複数の金融機関の取引口座の情報を1つの画面に一括表示するサービスのこと。銀行、証券会社、クレジットカード会社、金融ポータルサイト運営会社などがサービス提供している。

 一般にインターネットバンキングやオンライン証券トレーディングを行うとき、ユーザーはIDとパスワードを使ってログンインしてからWebサイト内を移動して目的のページに行き、必要な操作を行う。複数の銀行、証券会社、クレジットカード会社のサイトを渡り歩く場合には、デザインの異なるWebサイトごとにそうした作業を繰り返すことになる。

 アカウントアグリゲーションは、このようなログイン−操作の繰り返しを省くとともに、預金残高は預金残高、株式評価額は株式評価額、クレジット請求額はクレジット請求額に整理して表示するところに特徴がある。資産のバランスや増減をグラフなどでビジュアル表示する機能を装備しているところも多い。

 情報取得の対象となるのは、銀行、証券、生命保険、クレジットカード、公共料金(電話、ガス)、インターネットプロバイダ料金、マイレージ、ポイントなどの取引口座である(アグリゲーターによって異なる)。中にはホテルサイトを専門に情報の収集・表示するというように、ファイナンス情報を対象としないサービスもある。これは「コンテンツアグリゲーションサービス」「アグリゲーションサービス」と呼ばれる。

 アカウントアグリゲーションは、米国ヨドリーが1999年にスクリーンスクレーピング方法でサービスを行ったことに始まる。その基本的な仕組みは、アグリゲーション・プログラムが、ユーザーによって事前登録(※)された金融・決済サイトのID/パスワードを使って各サイトに自動ログインして画面情報を取得、これを解析・再構成してアグリゲーション画面に表示するというもの。対象となる金融・決済サイトがいくつあっても、各サイトへのログイン(ID/パスワード入力)はアグリゲーション・プログラムが自動的に行うので、ユーザーはアグリゲーションサイトに1回、ログインするだけでよい。

※ オンラインサイトに保存するタイプと、ローカルPCに保存するタイプがある

 この画面情報の取得に使われているスクリーンスクレーピング(データスクレーピングとも)は、HTMLの構造を解析して必要な文字や数字だけを抽出するという技術。情報取得先(金融機関側)の特別な協力なしに情報を取り出せるが、情報取得先のサイトで画面のデザインや構造に変更があった場合には、プログラムの解析手順を見直す必要がある。

 情報アグリゲーションを行う方法としては、スクリーンスクレーピングのほかに“データフィード”と“PCソフトウェア”を使った方法があるとされる。前者は金融機関側が口座データをアグリゲーターに転送する方式だが日本では行われていない(※※)。後者はPC用のパーソナル財務管理ソフトや家計簿ソフトに口座情報を取り込む方法が該当する。日本にもホームバンキングと連動するパッケージソフトが存在するが、これを使った情報集約をアカウントアグリゲーションと呼ぶことはないようだ。

※※ 日本では金融機関同士は銀行オンラインで接続されている

 アカウントアグリゲーションは米国では2002年までが導入のピークで、大手の投資銀行や証券会社、商業銀行が競ってアカウントアグリゲーションのサービスを開始した。日本ではインターネット銀行や大手金融機関のオンラインサービス、金融情報ポータルなどがサービスを展開している。

 アカウントアグリゲーションの運営は、顧客情報の収集を意味する。顧客の同意を得たうえでITを活用すれば、「残高不足が予測される預金者へのローン商品の推奨」「顧客資産トータルのポートフォリオ診断」「クレジット引き落とし口座の残高不足警告」といった高度なサービスを提供できる可能性がある。

参考文献

▼『Spidering hacks――ウェブ情報ラクラク取得テクニック101選』 ケビン・ヘメウェイ、タラ・カリシェイン=著/村上雅章=監訳/オライリー・ジャパン/2004年5月(『Spidering Hacks』の邦訳)


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