構成管理(こうせいかんり)情報システム用語事典

configuration management / コンフィギュレーションマネジメント / 形態管理 / 型式管理

» 2009年08月04日 00時00分 公開

 製品(システム)の設計後、生産や構築、試用・実験、ユーザーによる実用といった過程を経る中で製品の設計仕様や品質特性に変更があっても利用が続けられるよう、その構成を管理する組織的活動のこと。

 「構成」の原語は英語の“configuration”で、設計図や仕様書として明示され、その後に製品・製品部品として具体化される機能的・物的特性を指す。中長期に利用される製品は製造・試験・実用と段階を経る中で部品交換・改修・技術革新などによって、製品・製品部品の機能的・物理的特性が初期設計と異なるものに変更される場合がある。このような製品の変更が要求仕様と整合するように構成を計画・記録・統制・監査する管理活動を「構成管理」という。「形態管理」「型式管理」「設計変更管理」という場合もある。

 構成管理は航空機(軍用機)が大量に生産され、実戦に投入された第2次世界大戦時に米国で始まった。同じ基本設計の機体でも部品(構成品目)を改良・変更して性能を向上させたり、品質の低い製造ロットの部品を良ロット品に換えるように指示するための管理技術として登場したものである。この部品管理の技法は民間航空機の製造・運用に引き継がれ、さらに船舶や鉄道車両、大型工作機械など中長期にわたって使用される民生品機器の分野にも広がった。

 ISO 10007「品質マネジメントシステム − 構成管理の指針」では、「構成管理とは、製品の構成を文書化するものである。構成管理は、ライフサイクルの全段階で、識別及びトレーサビリティ、その物理的及び機能的要求事項の達成状況並びに正確な情報へのアクセスをもたらす。構成管理は、組織の規模並びに、製品の複雑さ及び性質に基いて実施できる。構成管理は、ISO 9001に規定されている製品識別及びトレーサビリティ要求事項を満たすために使用することができる」と定義している。

 構成管理は、「構成計画」「構成統制」「構成記録」「構成監査」といった一連の活動からなる。構成計画では製品形態の識別できるよう、各製品の構成を把握して、構成品目(製品、半製品、部品)の選択を行い、各構成品目の機能的・物理的な特性を仕様書、図面、管理台帳、部品表などの形で文書化し、各々に識別番号を付与して構成識別を行う。構成統制は文書化された構成品目に基づいて、変更に関する評価・調整・承認、および変更の実施を行う。構成記録は変更を含む構成管理活動を記録して、関係者に報告する活動であり、構成監査は構成記録が正しく行われているかを確認し、誤りを是正する活動である。

 ITILでは、ITサービスを適切に提供することを目的に、組織の情報システム(ハードウェア、ソフトウェア、関連文書など)の構成を適時、正確に管理することをいい、v3ではサービストランジションのプロセスに位置付けられている。インシデント管理、問題管理、変更管理などのITILプロセスは構成管理で得られた情報(構成管理データベース)を参照することになっており、ITILの最も基本的なプロセスの1つといえる。

 PMBOKガイド 第3版では、統合変更管理プロセスにおけるツールと技法の1つとして、「コンフィギュレーション・マネジメント」が挙げられており、「変更管理システムを包含し、変更提案の提出、変更提案のレビューや承認を行う追跡システム、変更を認可する承認レベルの規定、承認済み変更を確定する方法の提供等のプロセスを含む」と説明されている。

参考文献

▼『設計開発の品質マネジメント』 久米均=著/日科技連出版社/1999年9月

▼『強い会社はこうして作られる!――ITIL実践の鉄則』 久納信之=著/技術評論社/2007年7月



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ