CMR (customer managed relationships)

customer management of relationships / 顧客によるリレーションシップ管理


 企業が顧客との関係性(リレーションシップ)を重視した経営を行うに当たって、顧客側に自社との関係の在り方(コンタクトの方法・タイミング・頻度、内容など)を設定・管理する権限を委譲することで、顧客の信頼を得、カスタマ・ロイヤリティを高めようとする経営コンセプト。米国の経営コンサルタント フレデリック・ネウェル(Frederick B. Newell, Jr.)が、CRMに替わるコンセプトとして提唱した。

 従来のCRMは、顧客の購買活動などから嗜好やニーズを収集・記録・管理し、それを有効活用することで顧客満足を実現しようという“テクニック”だった。しかし、その顧客ニーズはあくまでも企業側での推測であり、場合によっては企業本位の提案に過ぎなかった。

 また、CRMは“企業が顧客情報を管理する”ものだが、企業から自らのニーズに添った情報やサービスを得たいと考える顧客はいても、企業に管理されたいと思っている顧客はいない。そこでマネジメントの主客を逆転して、顧客自身に自社とのリレーションシップやコミュニケーションの方法や限度を決定する権限を付与してその管理を任せ、顧客主導型のリレーションシップ構築を目指す――すなわち“顧客が自分の情報を管理”できるようにしよう、というのがCMRである。

 ネウェルが提唱したCMR(customer management of relationships)は、従来型CRM(顧客関係管理、ないし顧客関係マーケティング)を乗り越える経営理念といえるものである。その著書『Why CRM Doesn't Work』(2003年)で、ネウェルは「CRMの時間は過ぎ去り、顧客権利の拡大に移行してCMRへ切り替える時が来た。CMRは、顧客に自分の興味あること・ないことを、われわれに知らせる力を与える」とし、企業は顧客に対して権限委譲を進めるよう推奨している。

 世界中でディズニーランドなどのリゾート施設を経営する米国ウォルト・ディズニー・パークス&リゾーツは、2005年ごろからCMR(customer managed relationships=顧客に管理されたリレーションシップ)という名の活動に取り組み始めた。これは、ゲスト(顧客)から豊富な情報を得て、個々人に合わせた体験やサービスを提供する仕組みで、マーケティングを超えるものと位置付けられている。2006年になって、この取り組みがメディアやCRM専門家のブログに取り上げられたことから、CMRという言葉が広まった。パーミッション・マーケティングで知られるセス・ゴーディン(Seth Godin)は、これに関連して「CRMは死んだ」と述べ、物議を醸した。

 さらに最近では、消費者発言・顧客対話の基盤として、Web 2.0テクノロジが台頭・普及するにつれて、企業−顧客のリレーションシップの主導権は、好むと好まざるとにかかわらず、顧客側にシフトするという指摘もされるようになっている。このパラダイムでは、企業は顧客の声や顧客経験、顧客協働を重視したビジネスを実施せざるを得ず、CMRへの対応が必要だとされる。

参考文献

  • 『Why CRM Doesn't Work: How to Win by Letting Customers Manage the Relationship』 Frederick Newell=著/Bloomberg Press/2003年
  • Disney Relationship Magic」 THE HUB, NOVEMBER - DECEMBER/2006年
 
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