破壊的技術

disruptive technology


 既存市場では必要な性能を持たないために受け入れられないが、新しい顧客に対して新しい価値をもたらす新製品を生み出すような技術のこと。こうした新製品が新しい市場に受け入れられ、持続的技術によって改良されることで、破壊的イノベーションが生じる。

ここでいう「技術」は、労働力・資本・原材料・情報などの経営資源を投入して、より価値の高い製品・サービスを生み出すプロセス全般を意味する

 破壊的技術は多くの場合、大規模な投資を伴ってなされる技術的ブレークスルーによらず、既存技術を応用したものであって、低性能ながら低価格・小型・単純で、既存製品より使いやすいといった特性を持つ製品として市場に投入される。既存市場では“性能的に劣る”と評価されるので従来顧客には見向きされないが、別の用途や満足を見出した顧客の支持を得ると、新しい市場を形成することになる。このようなイノベーションを生み出す技術が破壊的技術である。

 この説明から分かるように破壊的技術は、まだ存在しない顧客に受け入れられて初めて破壊的技術と分かるものであって、事前にこれを知ることは難しい。伝統的な投資判定プロセスでは、「市場規模が小さい」「既存事業の方が収益性が高い」「投資対効果が明らかでない」といった理由で却下されがちな事案だといえる。そのため、すでにいくつもの顧客を持ち、大きなビジネスを展開している大手優良企業は特別な手当てをしない場合、「破壊的技術」を無視する傾向が高まる。

 このメカニズムは、ハーバード・ビジネススクールのジョセフ・L・バウアー(Joseph L. Bower)とクレイトン・M・クリステンセン(Clayton M. Christensen)の共著論文「Disruptive Technologies: Catching the Wave」(Harverd Business Review誌 1995年1−2月号)で提示されたもので、現在では技術経営(MOT)の重要テーマになっている。

 破壊的技術は単に新事業や新市場を生み出すだけではなく、その後の持続的技術によって製品・サービスが改良・改善され、既存市場の顧客が要求する性能水準を超えると既存市場を侵食し、この市場を基盤とする優良企業の地位を危うくする。このような業界変動の事例として、クリステンセンらは次の破壊的技術を挙げている。

 
確立された技術
破壊的技術
コンピュータ メインフレーム技術 ミニ・コンピュータ技術
コンピュータ ミニ・コンピュータ技術 パーソナルコンピュータ技術
掘削機 ケーブル式掘削機 油圧式掘削機
ラジオ受信機 真空管式ラジオ技術 トランジスタ・ラジオ技術
HDDアーキテクチャ 14インチ・ウィンチェスター・ドライブ 8インチHDD
HDDアーキテクチャ 8インチHDD 5.25インチHDD
HDDアーキテクチャ 5..25インチHDD 3.5インチHDD
乾式コピー装置 業務用乾式コピー機技術 小型卓上コピー機技術

 クリステンセンらはこの論文で、破壊的技術に取り組むには独立した小規模組織で当たるべきだと述べている。

参考文献

  • 「「イノベーションのジレンマ」への挑戦──リーダー企業は「破壊的変化」にどう対処すべきか」 クレイトン・M・クリステンセン、マイケル・オーバードルフ=著/スコフィールド素子=訳/DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2000年9月号/ダイヤモンド社/2000年9月
  • 『不確実性の経営戦略』 Harvard Business Review=編/DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部=訳/ダイヤモンド社/2000年10月(『Harvard Business Review on Managing Uncertainty』の邦訳)
  • 「イノベーションのジレンマ[新訳]」 クレイトン・M・クリステンセン、マイケル・オーバードルフ=著/DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2000年4月号/ダイヤモンド社/2009年4月
  • 『イノベーションのジレンマ──技術革新が巨大企業を滅ぼすとき〈増補改訂版〉』 クレイトン・クリステンセン=著/玉田俊平太=監修/伊豆原弓=訳/翔泳社/2001年7月(『The Innovator's Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail』の邦訳)
  •  『イノベーションへの解──利益ある成長に向けて』 クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー=著/玉田俊平太=監修/櫻井祐子=訳/翔泳社/2003年12月(『The Innovator' s Solution: Creating and Sustaining Successful Growth』の邦訳)
  •  『明日は誰のものか──イノベーションの最終解』 クレイトン・M・クリステンセン、スコット・D・アンソニー、エリック・A・ロス=著/宮本喜一=訳/ランダムハウス講談社/2005年9月(『Seeing What's Next: Using the Theories of Innovation to Predict Industry Change 』の邦訳)
  •  『イノベーションへの解──イノベーターの確たる成長に向けて 実践編』 スコット・アンソニー、マーク・ジョンソン、ジョセフ・シンフィールド、エリザベス・アルトマン=著/栗原潔=訳/翔泳社/2008年9月(『The Innovator's Guide to Growth: Putting Disruptive Innovation to Work 』の邦訳)
  • 『イノベーション──破壊と共鳴』 山口栄一=著/NTT出版/2006年2月
 
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