アーリーアダプター(あーりーあだぷたー)情報マネジメント用語辞典

early adopter / アーリーアドプター / 初期採用者/ 初期少数採用者

» 2005年02月24日 00時00分 公開

 新しい商品やサービス、技術や知識、ライフスタイルなどが登場したとき、早い段階でそれを購入・採用・受容する人々(層)のこと。

 米国の社会学者エベレット・M・ロジャーズ(Everett M. Rogers)が最初に使った言葉で、その著書『Diffusion of Innovations』(初版は1962年)で知られるようになった。ロジャーズは、イノベーション(まだ普及していない新しいモノやコト)がどのように社会や組織に伝播・普及するのかの実証的研究を行い、採用時期によって採用者を5つのカテゴリに分類した。その2番目がアーリーアダプターである。

 ロジャーズの普及モデルにおいて、最も重要だとされるのがアーリーアダプターである。

 革新性という点ではイノベーターが一番高いが、極めて少数であるうえに価値観や感性が社会の平均から離れすぎており、全体に対する影響力はあまり大きくない。それに対してアーリーアダプターは社会全体の価値観からの乖離が小さく、そのイノベーションが価値適合的であるかどうかを判断し、新しい価値観や利用法を提示する役割を果たす存在となる。

 ロジャーズの普及理論ではイノベーターとアーリーアダプターを合わせた層に普及した段階(普及率16%を超えた段階)で、イノベーションは急激に普及・拡大するとしている。そのためこの層は、「オピニオンリーダー」「インフルエンサー(影響者)」「マーケットメーカー」ともいわれ、マーケティング研究やコミュニケーション論において重視されてきた。

 ロジャーズのモデルは、マーケティングやリサーチの分野でさまざまに発展、カスタマイズされて、各種の方法論が生み出されている。例えば、米国のマーケティング・コンサルタント ジェフリー・A・ムーア(Geoffrey A. Moore)は、『Crossing the Chasm』(1991年)でロジャーズ・モデルをベースにハイテク市場を分析、初期市場を形づくるビジョナリー(アーリーアダプター)と、主要市場となるプラグマティスト(アーリーマジョリティ)の間にはキャズムがあり、ほかの産業とは異なるマーケティング・アプローチが必要だという「キャズム理論」を提唱している。

参考文献

▼『技術革新の普及過程』 エベレット・M・ロジャーズ=著/藤竹暁=訳/培風館/1966年(『Diffusion of Innovations』の邦訳)

▼『イノベーション普及学』 エベレット・M・ロジャーズ=著/青池慎一、宇野善康=訳/産能大学出版部/1990年(『Diffusion of Innovations. Third Edition』の邦訳)

▼『キャズム――ハイテクをブレイクさせる「超」マーケティング理論』 ジェフリー・ムーア=著/川又政治=訳/翔泳社/2002年1月(『Crossing the Chasm: Marketing and Selling High-Tech Products to Mainstream Customers』の邦訳)


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