ISO / IEC 20000(あいえすおー / あいいーしー 20000)情報マネジメント用語辞典

» 2006年11月20日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 ITサービスマネジメントに関する国際規格。ITサービスを提供するサービスプロバイダ(企業内のIT部門を含む)が、顧客の求める品質レベルのITサービスを安定的に供給する仕組みを確立し、その有効性を継続的に維持・改善するために必要となる要求事項を規定している。

 ITサービスマネジメントのプロセスについて記述したもので、直接の対象はITシステムの運用オペレーションであり、サービス提供を行ううえで必要となるツール、プロダクト、システムは評価対象ではない。ただし、間接的にそれらの開発に役立てることは可能である。

 2004年に英国規格BS 15000がファストトラック(既存規格を使って迅速に国際規格化を図る手順)提案がされ、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の合同技術委員会であるISO/IEC JTC 1/SC 7で審議が行われ、2005年12月にISO/IEC 20000として発行した。なお、発行と同時に早期見直しのためのワーキンググループがSC 7の下に設立されている。

 ISO/IEC 20000はBS 15000と同様、2部構成になっている。

ISO/IEC 20000
ISO/IEC 20000-1:2005 Information technology -- Service management -- Part 1: Specification(情報技術−サービスマネジメント−第1部:仕様)
ISO/IEC 20000-2:2005 Information technology -- Service management -- Part 2: Code of practice(情報技術−サービスマネジメント−第2部:実践のための規範)
※2006年11月現在

 「ISO/IEC 20000-1」は、ITサービスマネジメントを実施するための要求仕様を定義している。第三者認証審査を行う際の認証規格となっており、この規格を基準にして適合性の審査が行われる。一方の「ISO/IEC 20000-2」はITサービスマネジメントの実施規準(ガイドライン)で、ITサービスプロバイダがISO/IEC 20000-1の要求仕様に適合したプロセスを確立するための推奨事項がまとめられている。

 内容はITILとほぼ同様だが、ITILが単にライブラリ(規範集)として編さんされているのに対して、ISO/IEC 20000は顧客の要求にサービス品質を適合させるためのマネジメントシステムとして構成されている。ISO/IEC 20000では5つのプロセス群と13のサブプロセスを規定(第6?10章)し、これらをISO 9000などと同様にプロセスアプローチの考え方に基づいて、PDCAサイクルを回して継続的に改善していくことを推奨している。また、要求事項として「経営陣の責任」が明記されている点がITILと異なる。

ISO/IEC 20000-1の構成
序文
1. 適用範囲
2. 用語および定義
3. マネジメントシステム要求事項※ 3.1 マネジメントシステム
3.2 経営陣の責任
3.3 文書化に関する要求事項
3.4 力量、認識及び教育・訓練
4. サービスマネジメントの計画及び実施 4.1 サービスマネジメントの計画
4.2 サービスマネジメントの実施及びサービスの提供
4.3 監視、測定及びレビュー
4.4 継続的改善
5. 新規サービス又は変更の計画及び実施
6. サービスデリバリ プロセス 6.1 サービスレベル管理
6.2 サービスの報告
6.3 サービス継続性及び可用性管理
6.4 ITサービスの予算管理及び会計
6.5 キャパシティ管理
6.6 情報セキュリティ管理
7. 関係プロセス 7.1 一般
7.2 事業関係管理
7.3 サプライヤ管理
8. 解決プロセス 8.1 背景
8.2 インシデント管理
8.3 問題管理
9. コントロールプロセス 9.1 構成管理
9.2 変更管理
10. リリースプロセス 10.1 リリース管理プロセス
参考文献 参考文献
※ISO/IEC 20000-2では「マネジメントシステム」

 ISO/IEC 20000は認証/審査登録に用いられることを意図して作られており、第三者機関による審査を通じて、ITサービスプロバイダのITサービス品質の証明を提供する制度が想定されている。日本では日本情報処理開発協会(JIPDEC)を審査登録機関の認定機関とするITサービスマネジメントシステム(ITSMS)適合性評価制度が運用される見込みで、2006年7月からパイロット運用が開始されている。また、JIPDECは日本語化作業も行っており、「JIS Q 20000」としてJIS化される見込みである。

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