自働化(じどうか)情報マネジメント用語辞典

jidoka / autonomation / ニンベンの付いた自働化

» 2007年06月19日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 製造業の現場において、異常や欠陥が発生したら直ちに製造装置や生産ラインを停止して、不良品を作らないという考え方。トヨタ生産方式を構成する2本柱の1つ。

 一般に工場で生産性を向上させる手段として、自動化――すなわち自動的に加工・生産を行う機械装置を導入する方法が考えられるが、自働装置が不良品を生産してしまうことがあるなら、それを監視したり、不良品をより分けたりする必要があり、その分人手が掛かるため、必ずしも効率的になったとはいえない。

 トヨタ生産方式の父と呼ばれる大野耐一は、異常が発生した際には機械自身がそれを検知し、自ら停止すれば、そのときにだけ作業者が駆け付けるようにすることで、より少ない人数で複数の機械を稼働できると考え(多台持ち)、このような自動停止の仕組みを「自働化」「ニンベンの付いた自働化」と呼んだ。

 大野はトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)以前に、豊田紡織(現トヨタ紡織)に在籍していたため、紡織では女子工員が1人で数十台の織機を操業していたのに、当時の自動車作りでは1人の工員が1台の工作機械しか操作していないという点を課題として考えたのである。

 紡績工場が効率的だった理由は、そこで使っていた織機には糸が切れると機械が自動停止して、不良品を作らない機構が組み込まれていたからであった。このメカニズムはトヨタの創始者で、発明王と呼ばれた豊田佐吉の考案したものといわれる(実際に開発したのはその息子で、トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎だとする説もある)。

 豊田佐吉はトヨタグループの発祥ともいえる工場に「豊田自働織布工場」(1911年設立)と命名するなど「自働」という言葉を使っていたことから、大野は自動停止のコンセプトを「自働化」と呼んだ。

 当初は“機械の自動的停止”を意味していた自働化は、やがて生産ラインを停止してでも“後工程に不良品を送らないための自律的な仕組み”にまで拡大される。

 統計的品質管理を前提にした大量生産では、一定量の不良品が出ても一度に大量かつ自動的に生産を行った方がコスト安になると考える。そのため、生産各工程に余剰在庫を持たせ、生産計画を厳守して生産を続けることを重視する。しかし、“ムダを徹底排除する”ことを基本とするトヨタ生産方式では不良品を生産することを最悪のムダと考え、生産の流れを一時的に止めてでも不良品を作らないように、生産現場の作業者に生産ラインを停止する権限を与えている。これも自働化という考え方の具体例である。

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