オンデマンド(おんでまんど)情報システム用語事典

on demand

» 2009年01月28日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 顧客や利用者の注文・要求に応じて、随時必要なサービスや機能を提供すること。ITの世界ではITサービスや機能、ソフトウェアモジュールをユーザーの要望に応じて、ネットワーク経由で柔軟かつ即座に提供することを意味する。

 旧来型の情報システム構築はパッケージ・ソフトウェアを利用する場合でも、ハードウェアを調達し、環境設定を行い、アプリケーション・ソフトウェアをインストールするといった作業が必要で、即座に利用を開始することはできなかった。システムの変更や増強でも同様である。1990年代後半になると、ネットワークを介してソフトウェア機能を提供するASPが登場して即時利用性は高まったが、カスタマイズを行う場合はインストール型システムと手間は変わらず、システムの柔軟さという点では不十分だった。こうした即時性や柔軟性を進化させ、ユーザーが必要なときに必要なサービスを必要なだけ利用できるようにしたコンピュータ利用環境(概念)を「オンデマンド・コンピューティング」と呼ぶ。

 先鞭をつけたのはIBMで、同社は2002年に「e-ビジネス・オンデマンド」というビジョンを発表している。これは大規模な分散コンピューティングと自律型コンピュータを可能とする自己管理・修復技術をベースに、ネットワークを介してシステムリソースやモジュールを必要に応じて提供できるようにすることで、企業が経営環境の変動などに迅速・柔軟に対応できるようにするIT戦略ビジョンである。さらにその延長として、「オンデマンド経営」「オンデマンド・エンタープライズ」という経営戦略も提唱された。これは市場の変化に合わせて、速やかなビジネス変革を実施していくというものである。同種の構想としては、ヒューレット・パッカード(HP)の「アダプティブ・エンタープライズ」、サン・マイクロシステムズの「N1」などがある。

 on demandとは本来、「請求があり次第」という意味で、視聴者が見たいときに映像を配信する「ビデオ・オンデマンド」、書籍などを必要なときに必要な部数だけ(例えば1冊だけ)を印刷する「プリント・オンデマンド」などが知られる。ITの世界ではオンデマンドを前において「オンデマンド・サービス」「オンデマンド・アプリケーション」というように使うことも多い。

参考文献

▼『オン・デマンド・エコノミー ――IT革命が創る』 石山嘉英=著/東洋経済新報社/2000年1月

▼『オンデマンド――IBM eServerの奇跡』 岩山知三郎=著/コンピュータ・エージ社/2003年1月


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