OR(おーあーる)情報システム用語事典

operations research / オペレーションズ・リサーチ / 作戦研究 / 運営研究

» 2007年07月02日 00時00分 公開

 政策実行や企業経営などの各種活動において、課題となる対象(問題)を操作・対応可能な系としてモデル化して分析・計算を行い、最良の対策や行動を導き出す数学的/統計的方法群のこと。あるいは、これらの方法を研究する学際的学問分野をいう。また、これらの方法を用いて諸問題の解決法を明らかにする活動そのもの、ないしそれを通じて意思決定者を支援することと定義される場合もある。

 日本工業規格(JIS) オペレーションズリサーチ用語(Z 8121-1967)では「科学的方法および用具を体系の運営方策に関する問題に適用して方策の決定者に問題の解を提供する技術」と定義し、「運営研究」という訳語を示している。英国ではオペレーショナル・リサーチ(operational research)、米国ではオペレーションズ・リサーチ(operations research)、あるいはオペレーションズ・アナリシス(operations analysis)という。

 技法・理論としての「OR」は、ある特定の手法でなく、さまざまな手法の総称である。代表的な手法・ツールとしては数理計画法、日程計画、待ち行列理論、ゲーム理論、シミュレーション、グラフ理論・ネットワーク計画、在庫管理、経済性分析などが挙げられる。企業経営においては、生産、在庫、物流・配送、販売・マーケティングなどの諸問題に適用される。現在では、数理モデル・統計モデルの構築および計算に、コンピュータを使うことが一般的である。

 ORという言葉は、1937年ごろに英国の防空科学調査委員会の幹事だったA・P・ロウ(Albert Percival Rowe)が作ったといわれる。当時、英国ではナチス・ドイツとの緊張の高まりから防空体制を整備する必要に迫られ、レーダーの開発を推進していた。1936年に最初のレーダーステーションが完成し、演習が行われたが、結果は芳しくなかった。委員会は、問題はレーダーの技術的性能ではなく運用(オペレーション)である、として民間の科学者や数学者などからなるチームを空軍基地に配属、レーダーの配置などを再検討して、成果を挙げた。

 ロウはレーダーの技術研究(テクニカル・リサーチ)と並行して、レーダーを含むシステムの運用に関する研究を指示、これを「オペレーショナル・リサーチ」と呼んだ。この結果、1939年には20のレーダーステーションと高射砲、邀撃(ようげき)機などからなる防空システムが構築され、後の英国本土決戦「バトル・オブ・ブリテン」に貢献する。

 その後、多方面の専門家が協力して計量的に問題の解決を図るというORの手法は英陸海軍、そして米陸海軍にも広がり、船団護衛、対潜作戦、爆撃精度向上、戦術評価、戦略爆撃、兵員輸送、兵站(へいたん)計画、軍需生産、装備品評価など、戦時の諸問題に適用された。

 第2次世界大戦終結後、軍のORチームに参加していた科学者、数学者たちは民間に復帰し、これを外交や内政問題、企業経営などに応用するようになる。今日、OR手法として知られる多くの手法は、戦後に生み出されたもの、あるいは発展したものである。

 経営に適用したORを、マネジメント・サイエンス(MS=management science)と呼称するが、一般に内容は「ORと同じ」と解される。そのため、「OR/MS」と表記されることもある。また、もともとの軍事分野のORを「軍事OR」として区別する場合もある。

参考文献

▼『ORの話』 大村平=著/日科技連出版社/1989年8月

▼『経営科学OR用語大事典』 Saul I. Gass、Carl M. Harris=編/森村英典、刀根薫、伊理正夫=監訳/朝倉書店/1999年1月(『Encyclopedia of Operations Research and Management Science』の邦訳)

▼『はじめてのOR――グローバリゼーション時代を勝ち抜く技法』 齊藤芳正=著/講談社・ブルーバックス/2002年5月


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