パーキンソンの法則(ぱーきんそんのほうそく)情報システム用語事典

Parkinson's law

» 2006年12月09日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 英国の歴史学者・政治学者であるC・ノースコート・パーキンソン(Cyril Northcote Parkinson)が唱えた法則で、狭義には「仕事は、その遂行のために利用できる時間をすべて埋めるように拡大する」という金言のこと。広義には、彼が述べた“法則”の数々をいう。

 もともとは、パーキンソンが英国エコノミスト誌(1955年11月19日号)に発表した風刺コラム「Parkinson's law」の最初の一文「Work expands so as to fill the time available for its completion」に由来する。このコラムは官僚組織の肥大化について述べたもので、組織が拡大するのは業務が増化するからではなく、組織が役人を増やすメカニズムを内包しているからであり、組織が拡大するゆえに(無用な)業務も増えることを皮肉を込めて指摘している。

 日本では、邦訳版が書き出しの文を若干異なるニュアンスで訳しているためか、パーキンソンの法則を「役人の数はなすべき仕事の増減や有無とは関係なく、一定の割合で増加すること」というように、コラムの主題に基づいて解説する場合が多い。

 パーキンソンはこのコラムを収録した同名書籍をはじめ、多数の法則本を執筆しており、「支出の額は収入の額に達するまで膨張する」(パーキンソンの第二法則)、「拡大は複雑化を意味し、組織を腐敗させる」(パーキンソンの第三法則)など、数々の“法則”を残している。そのため、その総称(ないしはどれか)として「パーキンソンの法則」という名称を使う場合もある。

 狭義のパーキンソンの法則はさらに、「資源(予算)はあるだけ使ってしまう」と一般化されて解釈されることもある。コンピュータの世界では「プログラムはメモリをすべて使い切るように膨張する」「ファイルは、ハードディスク容量の空きがなくなるまで増加する」といった法則も派生している。

 TOCCCPMの提唱者、エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)は、著書『Critical Chain』(1997年)においてプロジェクト遅延メカニズムの1つとして、「パーキンソンの法則」を挙げている。これは、作業が早く終わっても次工程に回さない(与えられた作業時間は自分で消費する)、早期完了の未報告といった現象をいう。

 また、システム開発の生産性に関する執筆・コンサルティングで知られるトム・デマルコ(Tom DeMarco)とティモシー・リスター(Timothy Lister)は著書『Peopleware』(1987年)で、「パーキンソンの法則」は仕事にやりがいがない場合に発生するもので、ソフトウェア開発の作業者には当てはまらないと主張している。

参考書籍

▼『パーキンソンの法則』 C・ノースコート・パーキンソン=著/森永晴彦=訳/至誠堂/1961年(『Parkinson's Law』の邦訳)

▼『クリティカルチェーン――なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?』 エリヤフ・ゴールドラット=著/三本木亮=訳/津曲公二=解説/ダイヤモンド社/2003年10月(『Critical Chain』の邦訳)

▼『ピープルウエア――ヤル気を潰す管理体制はこう変えよう!』 トム・デマルコ、ティモシー・リスター=著/日立ソフトウェアエンジニアリング生産性研究会=訳/日経BP社/1989年2月(『Peopleware』の邦訳)

▼『ピープルウエア〈第2版〉』 トム・デマルコ、ティモシー・リスター=著/松原友夫、山浦恒央=訳/日経BP社/2001年11月(『Peopleware 2nd edition』の邦訳)


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