ポートフォリオマネジメント(ぽーとふぉりおまねじめんと)情報システム用語事典

PfM / portfolio management / ポートフォリオ管理

» 2007年11月27日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 資産運用や経営資源の配分を考えるとき、投資案件の1つ1つを個別に評価するのではなく、その集合全体(ポートフォリオ)でのバランスを考慮に入れて分析・検討を行い、合理的な取捨選択・優先順位を導き出して、最適な投資の意思決定を図るマネジメント手法のこと。

 ポートフォリオ(portfolio)とは、イタリア語のportafoglio=書類を運ぶものに由来する英語で、紙ばさみや書類入れを意味する。金融・証券界では、投資家の有価証券を紙ばさみに入れて持ち運んでいたことから、投資家やファンドが保有している有価証券・金融資産の一覧表(あるいは、資産構成そのもの)をポートフォリオというようになった。さらに転じて、事業会社が保持している複数の事業や製品ライン、各種の経営資源、あるいはプロジェクトの集合をいう。

 投資・資産運用の世界でいうポートフォリオマネジメントとは、投資家のリスク選好度などに基づいて、分散投資(diversification)のために投資先・金融商品の組み合わせ=ポートフォリオを構築・メンテナンスすることをいう。特定の期待収益率/リスクと標準偏差(または分散)から数理的・統計的に最適ポートフォリオを導き出す、モダンポートフォリオ理論(MPT)を利用した手法を指すこともあるが、単に値動きの異なる資産を組み合わせること(例えば不動産・債券・株式、景気敏感株とディフェンシブ株など)をいう場合も多い。

 経営戦略の分野では、プロダクト・ポートフォリオマネジメント(PPM)、事業ポートフォリオマネジメントが知られる。米国では1960年代から企業のコングロマリット化が進んだが、その多角化(diversification)戦略を支援するために登場した経営分析手法である。1980年代になると米国では経営者主権から株主(機関投資家やファンド)主権に移行したこともあってPPMは下火になったが、以後も各種の無形資産(技術、人材、サービス、パテント、ブランド、知的財産)をポートフォリオの考え方で管理するアプローチが多数提案されている。

 プロジェクトマネジメントの世界では、複数の個別プロジェクトの状況や特性(進ちょく、リソース、将来性、技術リスクなど)を横断的に把握することで、プロジェクトの選定・着手順序・追加投資・改善・中止などの意思決定を行う「プロジェクト・ポートフォリオマネジメント」が叫ばれるようになっている。英国・プロジェクトマネジメント協会(APM)のPM知識体系「APMBoK」がトピックの1つに取り上げており、米国・プロジェクトマネジメント協会(PMI)も2006年に、「The Standard for Portfolio Management」(ポートフォリオマネジメント標準)をリリースしている。このPMI標準ではポートフォリオマネジメントを「特定の戦略的ビジネス目標を達成するために、1つまたは複数のポートフォリオを集中してマネジメントすること」としている。

 ITマネジメントにおいても、IT資産/ITプロジェクトにポートフォリオ・アプローチを適用する「ITポートフォリオマネジメント」「アプリケーション・ポートフォリオマネジメント」が提唱されている。これは目的や性格、特性が異なるIT資産/ITプロジェクトを、経営戦略との整合性、事業への貢献度、ROI、自社の適応能力、技術的実用性といった複数の評価軸を組み合わせて評価を行い、IT予算の最適配分を行うもの。経済産業省は2005年3月に「業績評価参照モデル(PRM)を用いたITポートフォリオモデル活用ガイド」を公表している。また、米国・ITガバナンス協会(ITGI)が2006年に出版したVAL ITフレームワークでは、IT投資をポートフォリオ(プログラム、プロジェクト、サービス、資産のグループ)としてマネジメントすることを推奨している。

参考文献

▼『新版 P2Mプロジェクト&プログラムマネジメント標準ガイドブック』 日本プロジェクトマネジメント協会=著・編/日本能率協会マネジメントセンター/2007年11月

▼『P2Mプロジェクト&プログラムマネジメント標準ガイドブック〈上巻〉プログラムマネジメント編』 小原重信、プロジェクトマネジメント資格認定センター=著/PHP研究所/2003年4月

▼『P2Mプロジェクト&プログラムマネジメント標準ガイドブック〈下巻〉個別マネジメント編』 小原重信、プロジェクトマネジメント資格認定センター=著/PHP研究所/2003年4月

▼『プロジェクトマネジメント標準の進展とOPM3』 瀬尾惠=著/PROVISION Winter 2005 No.44/日本IBM/2005年

▼『組織的プロジェクトマネジメント成熟度モデル(OPM3)の概要と適用上の留意点』 平石謙治=著/SEC journal No.8/IPA/SEC/2006年11月


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