RUP(らっぷ)情報システム用語事典

Rational Unified Process / ラショナル統一プロセス

» 2008年06月25日 00時00分 公開

 米国ラショナルソフトウェア社(現在はIBMの1部門)が、初期のオブジェクト指向(注1)をベースとしたソフトウェア開発に携ってきた企業・人々のさまざまな経験、専門知識、プラクティスを取り入れて、包括的な体系としてまとめたソフトウェア開発プロセス・フレームワーク、またはそれをサポートするプロセス製品。

 RUPの特徴はユースケース(注2)を開発の基点とし(ユースケース駆動)、開発するソフトウェアの基本構造を早期に設定する(アーキテクチャ中心)が、ウォーターフォール(注3)のように始めから完全な形の完成品を想定するのではなく、重要な機能やリスクの大きな機能をユースケース単位にイテレーションを繰り返しながら構築する(反復型開発)ことなどである。また、RUPのプロセスは組織やプロジェクトごとにカスタマイズして利用する(カスタマイズ可能)ものとして構成されており、1つのプロセスではないので「プロセス・フレームワーク」とも呼ばれる。

 1990年代初頭、さまざまなオブジェクト指向開発方法論が乱立、混乱していた。そこで、これら方法論の中で有力であったBooch法のグラディ・ブーチ(Grady Booch)は1994年、自身が在籍する米国ラショナルソフトウェア社(現IBM)にOMT法の提唱者の1人であるジェームズ・ランボー(James E. Rumbaugh)を呼び、お互いの方法論を統一する作業を開始した。翌年には統一方法論の草案となる「Unified Method V0.8」をまとめ、オブジェクト指向に関する国際会議OOPSLA '95で発表した。

 同じ年、ラショナル社はイヴァー・ヤコブソン(Ivar Jacobson)のオブジェクトリーAB社を買収、その開発方法論であるObjectoryの手法を取り入れて統一作業を進め、1996年に「Rational Objectory Process 4.0」を発表した。この間、プロセスと表記法の分離が行われ(表記法はUMLとなる)、その後プロセスには要求管理、設計、テスト、プロジェクト管理などの専門知識が組み込まれて、ソフトウェア開発のライフサイクル全体をサポートするプロセスへと拡張された結果、1998年にラショナル社から「Rational Unified Process 5.0」として発表された。

 RUPは現在もバージョンアップが進められており、Web、J2EE、.NETへの対応などのほか、各種アジャイルソフトウェア開発のスーパーセット化による小規模開発への適応といった拡張が行われている。

参考文献

▼『オブジェクト指向方法論OMT――モデル化と設計』 ジェームズ・ランボー、ウィリアム・プレメラニ、ウィリアム・ローレンセン、マイケル・プラハ、フレデリック・エディ=著/羽生田栄一=監訳/トッパン/1992年7月(『Object-Oriented Modeling and Design』の邦訳)

▼『Booch法――オブジェクト指向分析と設計』 グラディ・ブーチ=著/山城明宏、井上勝博、田中博明、入江豊、清水洋子、小尾俊之=訳/アジソン・ウェスレイ・パブリッシャーズ・ジャパン/1995年10月(『Object-Oriented Analysis and Design with Applications. 2nd ed.』の邦訳)

▼『オブジェクト指向ソフトウェア工学OOSE――use-caseによるアプローチ』 I・ヤコブソン、M・クリスターソン、P・ジョンソン、、G・ウーバガード=著/西岡利博、渡邊克宏、梶原清彦=監訳/トッパン/1995年9月(『0bject-Oriented Software Engineering: A Use Case Driven Approach』の邦訳)

▼『ラショナル統一プロセス入門〈第3版〉』 フィリップ・クルーシュテン=著/藤井拓=監訳/アスキー/2004年12月(『The Rational Unified Process. 3rd ed.』の邦訳)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ