システム原型(しすてむげんけい)情報システム用語事典

systems archetype

» 2009年04月07日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 システムシンキングの思考ツールの1つで、組織や人間行動が引き起こす“システム”の挙動に共通して見られるパターンと構造を類型化したもの。表面的な事象や状況、規模が異なる問題を同型のものとして把握することで、各分野における先行事例を目の前の問題解決に活用しやすくなる。

 システムシンキングでは具体的な出来事からパターンを抽出し、それらの具体事象を生み出している“構造”を拡張ループと平衡ループを組み合わせた因果ループ図に表現していくが、さまざまな状況を描いていくと拡張プロセスと平衡プロセスの特定の組み合わせが繰り返し出現する。これを典型的なシステム構造の型としてまとめたものが、システム原型である。

 システム原型の数は論者によって異なるが、以下のものがよく知られている。

  • 応急措置の失敗(fix that fail)
  • 問題の転嫁(shifting the burden)
  • 成功を呼ぶ成功(success to the successful)
  • エスカレーション(escalation)
  • 成功の限界(limits to success)
  • 漂流する目標(drafting goals)
  • 共有地の悲劇(tragedy of the commons)
  • 成長と投資不足(growth and underinvestment)
  • 予期せぬ敵対者(accidental adversaries)
  • 遅れのある平衡ループ(balanceing loop with delay)
ALT 因果ループ図で表記した「共有地の悲劇」

 システム原型は、工業製品における小さな部品と最終製品の中間にある基本モジュールのようなものであり、複雑な事象/システムを考えるときも、このような基本単位=ビルディングブロックの組み合わせと見なすことで、その理解や構築が容易になる。また、システム原型には対処法やレバレッジポイント(システム構造を変える作用点)が知られているため、問題解決のヒントを得ることができる。ただし、システム原型に頼り過ぎると、自由な発想によるモデリングが阻害されるといった弊害も指摘されている。

参考文献

▼『システム・シンキング トレーニングブック――持続的成長を可能にする組織変革のための8つの問題解決思考法』 ダニエル・H・キム、バージニア・アンダーソン=著/ニューチャーネットワークス、宮川雅明、川瀬誠、伊藤武志、辻倉直子、坂本裕司=訳/日本能率協会マネジメントセンター/2002年8月(『Systems Archetype Basics Workbook』の訳)

▼『フィールドブック 学習する組織「5つの能力」――企業変革をチームで進める最強ツール』 ピーター・M・センゲ、アート・クライナー、シャーロット・ロバーツ、リック・ロス、ブライアン・スミス=著/柴田昌治、スコラ・コンサルト=監訳/牧野元三=訳/日本経済新聞社/2003年9月(『The Fifth Discipline Fieldbook』の邦訳)

▼『システム・シンキング入門』 西村行功=著/日本経済新聞社(日経文庫)/2004年10月

▼『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?――小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方』 枝廣淳子、小田理一郎=著/東洋経済新報社/2007年3月

▼『最強組織の法則――新時代のチームワークとは何か』 ピーター・M・センゲ=著/守部信之、飯岡美紀、石岡公夫、内田恭子、河江裕子、関根一彦、草野哲也、山岡万里子=訳/徳間書店/1995年6月(『The Fifth Discipline』の邦訳)


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