タクソノミ(たくそのみ)情報システム用語事典

taxonomy / タクソノミ

» 2010年04月20日 00時00分 公開

 対象領域に含まれる事物について、その性質や特性の違いによって異同を定め、領域全体を体系的に分類・秩序立てていくこと。あるいはそのような分類を行う方法や規準を考察する研究分野、ないし結果として得られる分類体系をいう。

 通例は生物学の一分野としての生物分類学(植物分類学、動物分類学など)を指す。注目する生物について形質や生態などから共通の特徴を見出し、既存の分類体系に位置付けていく活動である。得られたデータと既存の分類体系が整合的でなくなったときには、新たな分類体系を再構築する。

 生物分類学では伝統的に界・門・綱・目・科・属・種といった階層分類が採用されているが、情報科学の分野ではこれを一般化して、概念やデータなどを上位?下位の関係に整理した階層構造を「タクソノミ」と呼ぶ。分野によっては「類概念?種概念による階層」と限定的に定義する場合もあるが、XBRL(注1)では語彙の階層に加えてルールや規約を含めたものをタクソノミと呼んでいる。

 近代的な分類法を確立し、“分類学の父”と呼ばれるのがスウェーデンの医師・博物学者 カール・フォン・リンネ(Carl von Linne)である。彼は自然物を鉱物界・植物界・動物界に分け、それをさらに網・目・属・種の5階級に細分化する方法を『Systema Naturae』(1735年)で発表した。階層分類(hierarchic classification)のアイデアはリンネが初めてではないが、後に提唱する二名法(学名表記法)と併せて、新種が既知の分類体系のどこに属するのかを容易に判定できるようになったために広く普及し、現在の生物分類と学名表記の原形となった。

 なお、taxonomieという言葉が登場するのは生物分類の主流がリンネ派からフランス派に移行した後で、スイス生まれの植物学者 アウグスティン・ド・カンドル(Augustin Pyrame de Candolle)の『Theorie elementaire de la botanique』(1813年)が初出という。

 生物分類学は生物そのものが持つ特徴に注目して分類を行う自然分類を指向するが、分類一般についていえば人間や社会の便宜のために行われる人為分類が多い。動物の分類でいえば「家畜/野生動物」「益獣/害獣」といった分け方である。広義のタクソノミは分かりやすい分類規準の下、目的に合った分類体系を構築し、諸概念に秩序を与えて立てていく活動だといえる。

(注1)XBRL

参考文献

▼『分類の発想??思考のルールをつくる』 中尾佐助=著/朝日新聞社/1990年9月

▼『博物学の欲望??リンネと時代精神』 松永俊男=著/講談社/1992年8月

▼『分類という思想』 池田清彦=著/新潮社/1992年11月

▼『江戸の植物学』 大場秀章=著/東京大学出版会/1997年10月

▼『意味とメッセージ??博物館展示の言語ガイドライン』リンダ・ファーガソン、キャロリン・マックルーリック、ルイース・ラバリー=著/塚田浩恭、井山哲也=訳/リーベル出版/2002年11月(『Meanings and Messages : Language Guidelines for Museum Exhibitions』の邦訳)

▼『アンビエント・ファインダビリティ??ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅』 ピーター・モービル=著/浅野紀予=訳/オライリー・ジャパン/2006年4月(『Ambient Findability: What We Find Changes Who We Become』の邦訳)

▼『「分ける」こと「わかる」こと』 坂本賢三=著/講談社/2006年6月

▼『植物の学名を読み解く??リンネの「二名法」』 田中學=著/朝日新聞出版/2007年6月

▼『リンネと博物学??自然誌科学の源流〈増補改訂〉』 千葉県立中央博物館=編/文一総合出版/2008年2月


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