testing maturity model integration / テスト成熟度モデル統合
テストプロセス改善のためのガイドラインとリファレンスをまとめたフレームワークである。CMMIを補足するものと位置付けられており、CMMIベースでソフトウェアプロセス改善活動に取り組む一環としてテスト改善活動を行う場合に適している。テストプロセスの外部アセスメントを前提とした改善活動にも利用できる。
TMMiモデルはCMMI(段階表現)と同様の構造になっており、5段階のプロセス成熟度で表現されている。各成熟度レベルには複数のプロセスエリアが置かれ、各プロセスエリアにはスペシフィック(固有)ゴールとジェネリック(共通)ゴールがある。スペシフィックゴールにはスペシフィックプラクティスが、ジェネリックゴールにはジェネリックプラクティスが設定されている。テストプロセス改善を目指す組織は成熟度レベルに応じて、各ゴールを満たすようにコンポーネント(テストプロセスの構成要素)を整備・構築することが推奨される。
TMMiの推進はCMMIの導入が前提となっており、TMMiの多くのプロセスエリアで、対応するCMMIのプロセスエリア(一部は異なる成熟度レベルのプロセスエリア)のサポートを必要としている。
5.1 欠陥防止 |
SG1 欠陥に共通する原因の特定 |
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SG2 根本原因となる欠陥を体系的に除去する行動の優先順位付けと定義 |
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5.2 品質管理 |
SG1 統計的にコントロールされたテストプロセスの確立 |
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SG2 統計的手法を使ったテストの実施 |
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5.3 テストプロセス最適化 |
SG1 テストプロセス改善の選択 |
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SG2 テストプロセスへの影響を確定するための新しいテスト技術の評価 |
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SG3 テスト改善の展開 |
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SG4 高品質テストアセット再利用の確立 |
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4.1 テスト測定 |
SG1 テストメジャメントと分析活動の結合 |
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SG2 テストメジャメント結果の提供 |
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4.2 製品品質評価 |
SG1 製品品質と優先事項のためのプロジェクトゴールの確立 |
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SG2 プロジェクトにおけるプロダクト品質目標の達成に向けた進捗の定量化と管理 |
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4.3 高度なピアレビュー |
SG1 ピアレビュー手法と動的テスト手法の調和 |
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SG2 ピアレビューによる開発ライフサイクル早期からのプロダクト品質の測定 |
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SG3 開発ライフサイクル早期のレビュー結果に基づくテストの調整 |
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3.1 テスト組織 |
SG1 テスト組織の確立 |
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SG2 テストスペシャリストのためのテスト機能の確立 |
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SG3 テストキャリアパスの確立 |
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SG4 テストプロセス改善の決定・計画・実施 |
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SG5 組織的テストプロセスの展開および教訓の取り込み |
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3.2 テスト教育プログラム |
SG1 組織的テストトレーニング機能の確立 |
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SG2 必要なテストトレーニングの提供 |
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3.3 テストライフサイクルと統合 |
SG1 組織的テストプロセスアセットの確立 |
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SG2 テストライフサイクルモデルと開発モデルの統合 |
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SG3 マスタテスト計画を確立 |
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3.4 非機能テスト |
SG1 非機能プロダクト・リスクアセスメントの実施 |
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SG2 非機能テストアプローチの確立 |
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SG3 非機能テスト分析と設計の実施 |
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SG4 非機能テストインプリメンテーションの実施 |
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SG5 非機能テストの実行 |
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3.5 ピアレビュー |
SG1 ピアレビューアプローチの確立 |
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SG2 ピアレビューの実施 |
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2.1 テスト方針と戦略 |
SG1 テスト方針の確立 |
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SG2 テスト戦略の確立 |
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SG3 テスト性能インジケータの確立 |
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2.2 テスト計画 |
SG1 プロダクト・リスクアセスメントの実施 |
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SG2 テストアプローチの確立 |
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SG3 テスト見積もりの確立 |
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SG4 テスト計画の開発 |
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SG5 テスト計画へのコミットメント獲得 |
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2.3 テスト監視とコントロール |
SG1 計画に対するテスト進捗の監視 |
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SG2 計画と予想に対するプロダクト品質の監視 |
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SG3 終了のための是正措置の管理 |
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2.4 テスト設計と実行 |
SG1 テスト設計技法によるテスト分析と設計の実施 |
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SG2 テストインプリメンテーションの実施 |
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SG3 テストの実行 |
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SG4 終了のためのテストインシデントの管理 |
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2.5 テスト環境 |
SG1 テスト環境要件の開発 |
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SG2 テスト環境インプリメンテーションの実施 |
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SG3 テスト環境の管理とコントロール |
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なし | なし |
TMMiにおける成熟度レベルは、概ね以下のように説明される。レベル1はプロセス改善に取り組む以前の段階を指し、テストプロセスは無秩序かつ不確定で、テストとデバッグが区別できない状態である。レベル2ではテスト方針とゴールが設定され、テスト計画も作成されているがコーディングが終わってからテストに着手するような状態をいう。
レベル3はテストプロセスがSLCPに統合され、テストが文書化されてコントロールとモニタリングできる状態を指し、レベル4はテストプロセスが定量的に測定・評価できる状態をいう。レベル5はテストプロセスが最適化され、欠陥防止や品質管理による改善活動が実施可能な状態にあることを示す。
TMMiを開発・提供するのは、アイルランド・ダブリンに本拠を置く非営利団体のTMMiファウンデーションである。TMMiの開発や普及を目的としてブライアン・ウェルズ(Brian Wells)らによって2005年に設立された。2008年の「Version 1.0」以後、2009年に「Version 2.0」、2010年に「Version 3.1」がリリースされている。
TMMiの開発に当たっては複数のソースが利用された。主要な前身の1つが、SW-TMM(ソフトウェア・テスト成熟度モデル)である。これはSW-CMMを補完するテスト成熟度モデルで、米国イリノイ工科大学のアイリーン・バーンスタイン(Ilene Burnstein)、ロバート・カールソン(Robert Carlson)らが1996年に提案した。
このほか、デイビッド・ゲルペリン(David Gelperin)とウィリアム・ヘッツェル(William C. Hetzel)が『The Growth of Software Testing』(1988年)で述べたテストの歴史的進化過程論、ボーリス・バイザー(Boris Beizer)の心理的成熟度モデル、オランダのアイントホーフェン工科大学を中心に開発が進められたMB-TMM(Metric Based Testing Maturity Model)、テスト文書化に関する標準であるIEEE Std 829などが参照されている。
なお、Testing Maturity ModelとTMMはイリノイ工科大学の商標、TMMiはTMMiファウンデーションの登録商標である。
▼『ソフトウェア品質知識体系ガイド——SQuBOK Guide』 SQuBOK策定部会=編/オーム社/2007年11月
▼『Practical Software Testing: A Process-Oriented Approach』 Ilene Burnstein=著/Springer/2003年6月
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