ウッフィー

whuffie


 オンラインコミュニティにおいて人々から受ける評判・信頼・共感・称賛などを、通貨をメタファーにして定量的で流通する存在ととらえる概念のこと。カナダ出身のWebマーケティング専門家であるタラ・ハント(Tara Hunt)が提唱した。

 ソーシャルメディアを介して形成されるネット社会では、質問に対して親切に答えたり、みんなが喜ぶ情報やアイデアを提供したりすると、それを受け取った人々は提供者に恩義を感じ、「彼/彼女の言うことなら」とその願いや提案を受け入れやすくなる。逆にウソの発表を行ったり、自分勝手な行為を行うと評価が下がり、人々の協力は得にくくなる。それが企業であるならばリアル世界を含めて、ブランド価値が毀損(きそん)されるかもしれない。

 ハントはネット社会ではこのような「貢献と評判の交換」が連鎖的に行われており、その評判はネットに参加する人(あるいは企業や組織)の属性として増減するとし、そのような“流通する評判”を米国人作家のコリィ・ドクトロウ(Cory Doctorow)のSF小説『Down and Out in the Magic Kingdom』に登場する価値単位に名前を借りて「ウッフィー」と呼んだ。

 ドクトロウの作品世界ではエネルギー問題は解決され、モノは無料で手に入るために貨幣はなくなっており、それに代わって貢献度の指標として使われているのがウッフィーである。人がウッフィーをどれくらい持っているかは、ヘッドアップディスプレイを使って確かめることができる。

 ハントのいうウッフィーは、ドクトロウのウッフィーのように目に見えるものではなく、定量的というのも感覚的な表現にすぎない。ハントのウッフィーはネット上でどのような振る舞いをすべきかを考える基礎となるもので、「役立つ」「貢献する」「評価される」「信頼される」「感謝される」「喜んでもらう」「感動してもらう」といった利他的な行動がウッフィーを増やすと考えられる。ウッフィーが蓄積されることによって、自身の意見や行動が受け入れられたり、より良い提案が受けられるようになる。

 ウッフィーは文化人類学でいう「反対給付」「互酬性」、心理学でいう「心理的報酬」「好意の返報性、好意の互恵性」、社会学や進化生物学でいう「間接互恵性」として説明できよう。「損して得とれ/損して徳とれ」「情けは人のためならず」の米国流表現といえるかもしれない。

参考文献

  • 『ツイッターノミクス』 タラ・ハント=著/村井章子=訳/文藝春秋/2010年3月(『The Whuffie Factor: Using the Power of Social Networks to Build Your Business』の邦訳)
  • 『フリー ――〈無料〉からお金を生みだす新戦略』 クリス・アンダーソン=著/高橋則明=訳/小林弘人=監修・解説/日本放送出版協会/2009年11月(『Free: The Future of a Radical Price』の邦訳)
  • 『マジック・キングダムで落ちぶれて』 コリィ・ドクトロウ=著/川副智子=訳/早川書房/2005年8月(『Down and Out in the Magic Kingdom』の邦訳)
  • 『ぼくたちの洗脳社会』 岡田斗司夫=著/朝日新聞社/1995年12月
 
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