ワークアウト(わーくあうと)情報システム用語事典

work-out

» 2006年02月25日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 GE(ゼネラル・エレクトリック)が、1980年代末から全社規模で導入・実施した業務改善プログラム。同社の官僚的社風を打破するのに大きな力となったと評価される。

 もともとGEは社員研修に熱心な会社だったが、研修所の自由な雰囲気が全社に行きわたらないことに不満をもった同社会長兼CEO(当時)のジャック・ウェルチ(John F. Welch, Jr.)が、ニューイングランドの伝統的なタウンミーティングに習ってざっくばらんに話し合われた改善策を、具体的な行動・実践に結び付けるよう制度化したもの。

 一般的なワークアウトは、社内のさまざまな階層から40〜100人ほどの従業員が集まって、2〜3日にわたって行われる。

 最初に、マネージャが大まかに事業内容を説明し、その部門が抱える課題や目標を呈示する。それが終わるとマネージャは退席し、話し合いには参加しない。参加者はいくつかのグループに分かれ、ファシリテーターと呼ばれる進行役(外部のコンサルタントやビジネススクールの教授など)の助言を受けながら、提起された課題について議論を行う。

 一定の解決策が出たら、マネージャを呼んでその説明を行う。参加者がまとめた提案を聞いたマネージャは、その場で採用するか、却下するかを即答しなければならない。その場で結論を出せない場合も、決断を下すべき期限を設定する。提案が承認されたら、“オーナー”と呼ばれる実行リーダー(通常は提案者などの改革に積極的な社員)に権限が委譲され、実現に向けて具体的な活動が行われる。

 それまでは意図的ではないにしろ、マネジメント・ヒエラルキーのどこかで葬り去られていた“現場の声”が即座に実行されるようになり、現場で会社を支える従業員に積極的な発言と事業への主体的な参画を促すことにつながった。

 現場参画型改善活動という意味では、日本で広く展開されたQC活動に似ているが、QCサークルは基本的に職場内グループであり、マネージャも参加しないことが多いのに対し、ワークアウトはバウンダリレスな営みであって所属や役職にとらわれない点が異なる

 ワークアウトの語源は「文字どおり、不必要な仕事を取り除くという意味だ」(ウェルチ)とされるが、ウェルチが大規模な人員整理(ピープルアウト)を実施した後、「仕事の整理はいつになるのか?」と皮肉られたことに由来とする説もある。

参考文献

▼『ジャック・ウェルチ わが経営〈上〉』 ジャック・ウェルチ、ジョン・A・バーン=著/宮本喜一=訳/日本経済新聞社(日経ビジネス人文庫)/2005年5月(『Jack: Straight from the Gut』の邦訳新訳版)

▼『ジャック・ウェルチ わが経営〈下〉』 ジャック・ウェルチ、ジョン・A・バーン=著/宮本喜一=訳/日本経済新聞社(日経ビジネス人文庫)/2005年5月(『Jack: Straight from the Gut』の邦訳新訳版)

▼『GE式ワークアウト――General Electric method』 デーブ・ウルリヒ、スティーブ・カー、ロン・アシュケナス=著/高橋透、伊藤武志=訳/日経BP社/2003年4月(『The GE work-out』の邦訳)


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