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» 2003年12月11日 00時00分 UPDATE

転職を阻む意外な落とし穴(5):引っ越しを伴う転職のメリット、デメリット

転職する際に重視することは何か。給料、希望職種、経営者のビジョンや方針、スキルアップ支援など。しかし、いざ転職する場合に、そんなこととは関係なく、思いもよらぬことで転職を断念しなければならないことがある。そんな例を、毎回キャリアデザインセンターのキャリアコンサルタントが紹介する。

[鈴木敦子,キャリアデザインセンター]

引っ越しの思い出

 いきなりですが、幼少のころに引っ越しを経験されたことはありますか。もしそんな経験のおありの方は、当時大変な思いをしませんでしたか?

 私は小学校3年生のときに引っ越しを経験しました。とはいえ、すぐ近くへの引っ越しだったため、学校は変わりませんでした。ただ、それまで自宅から歩いて5分だった学校が、次の日から片道50分の道のりへと変わったのです。その学校では、自転車通学は認められておらず、結局小学校を卒業するまで歩き続けました。足腰は鍛えられたかもしれませんが、正直あまりいい思い出ではありません。

 それでも私はいい方だったかもしれません。転校ともなるといきなり見ず知らずの子どもと一緒になります。新たな人間関係を構築するのは、いくら柔軟な年ごろの子どもでも、想像以上に大変なものだと思います。もしかしたらイジメに遭った方もいらっしゃるかもしれません。もちろんそれとは逆に、以前よりも環境もよくなったという人がいらっしゃるかもしれません。

 転職理由を聞くと大半の方は「キャリアアップのため」と答えます。確かに転職はキャリアアップに非常に有効な手法です。ただし、当然転職をすれば勤務地は変わります。その勤務地が変わったことにより転居を余儀なくされる場合は、自分自身はもちろんですが、それ以上に家族の生活に大きな影響をもたらします。そこまでしてキャリアアップをするべきなのでしょうか。

 では、転職によるキャリアアップを考えている皆さんに、それが転居を伴う場合、どんなメリットやデメリットをもたらすのでしょうか。今回は、それを検証してみましょう。

家族にとって転居とは

 家庭がある方にとっては、転居は簡単なことではありません。最も大きな問題が子どもの転校です。転校により、仲の良かった友達が急にいなくなることで、孤独感や疎外感を感じたりすることがあります。子どもの行動範囲は狭いので、見知らぬ土地での生活に感じる不安は大人とは比べものにならないほど大きいのです。特に人間関係の構築に関しては、子どもは大人ほどその技術に長けているわけではありませんので、新たな環境で相当な苦労をするはずです。もちろん、そのほかにも進学なども大きな問題になることはあるでしょう。

 子どもの人間関係上で成り立っている保護者間の人間関係も、一から作り直す必要があります。恐らく多くの場合は、転職を考えている人の奥さまが影響を受けるのです。近所付き合いをはじめとする地域コミュニティとの関係構築は、ある一定の目的を持った会社組織での関係構築とはまったく異なります。細かい話になりますが、買い物や外食、病院なども含め、すべて新しく見つけなければならないのです。こうしたことは、ささいなことかもしれませんが、家族にとってはストレスに感じやすいものです。

 このような理由から転居は家族に非常に大きなストレスを与えます。あなた自身も働く環境が変わって大変かもしれませんが、家族のストレスを感じ取り、それを解消することができるか。それがあなたにとって会社の外での大きな仕事になるでしょう。

家族にもメリットが

 ただし、転居にはメリットもあります。逆の発想ですが、環境が変わることにより、これまでの人間関係をクリアすることができます。さらに、新たな人間関係の構築は、家族の人脈が広がることにもなります。これは転職と同様に生活環境を変えないとなかなか構築できないものです。そして人間関係だけでなく、その土地での新たな発見は楽しい面も多いのは事実です。子どもや女性はこうしたことに長けている方が多いので、それまでの生活以上に楽しい家庭環境を作るきっかけになるかもしれません。

 いずれにせよ転居が決まった際、もしくは転職によって転居が必要になる可能性が出てきた場合は、必ず家族に事前に相談をしておくべきです。反対されることが圧倒的に多いのですが、事前にデメリットを解決しておくこと、転居によるメリットがたくさんあることを家族に伝えること、そしてメリットを自ら生み出す努力、これらは最低限やっておかなければいけないことだと思います。

単身赴任

 家族の同意が得られなかった場合は、転職をあきらめるか、単身赴任をしてでも転職をするかの選択を迫られると思います。こうした場合、私は単身赴任をお勧めしています。家族と離れるのはあなたにとって決してよいことではありませんが、結果的にはこれが最も無難な選択になるはずです。

 1年ほど前、私の友人が転職で東京から鹿児島に転居しました。彼にとってはキャリアアップが可能なとてもよい転職で、それだけであれば何の問題もありませんでした。しかし、彼の奥さんは東京で生まれ育ち、東京からは旅行以外では出たことがない人でした。そのため、転居を伴う転職には大反対だったのです。彼は自分自身のキャリアアップを取るのか家族を取るのかで悩みました。

 その結果、彼はその両方を得ることが可能な単身赴任を選びました。家族と離れ離れになるのは寂しさでいっぱいだったようですが、1カ月に1度は東京に行くようにし、逆に2〜3カ月に1度は鹿児島に奥さんと子どもに来てもらい、鹿児島の良さをいろいろと話したようです。ようやく奥さんも決心し、子どもともども鹿児島に住まいを移したそうです。彼のキャリアアッププランも今回の転職によって大成功しました。

 単身赴任は決して楽なものではありませんが、自分自身のキャリアと家族関係を考えると決して悪い手法ではないと考えられます。

転職者だけでない転居

 IT業界はプロジェクトによって勤務地が変わることが多い業界です。転居の可能性は転職する際だけに限らず、エンジニアにいつ訪れてもおかしくないことなのです。そして転居をきっかけとしてキャリアアップが成功したり、家族の結束が高まったりすることがあることを忘れないでいただきたいと思います。

著者紹介

鈴木敦子

青山学院大学教育学科を卒業後、キャリアデザインセンターへ入社。転職誌『type』の広告営業、人材紹介営業を経てマーケティング課へ異動、現在に至る。中途採用人材による企業の活性化を願い、転職希望者の心理を考え続ける日々を送っている。



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