書類選考で落ちた企業に再挑戦して大逆転転職失敗・成功の分かれ道(2)

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

» 2004年11月26日 00時00分 公開
[イムカキャリアコンサルタント]

ボストンレッドソックスの大逆転

 今年は大リーグファン、野球ファンにとって、話題豊富な1年となりました。例えば米国のメジャーリーグで活躍するイチロー選手のシーズン最多安打記録やヤンキースの松井秀喜選手の活躍は、日本国内でも大きな話題となりました。

 しかし、米国での今年一番のニュースは、なんといってもボストンレッドソックスの大逆転でのワールドシリーズ進出とその制覇でしょうか。ヤンキースとのワールドシリーズ進出をかけたリーグチャンピオンシップで、いきなり3連敗を喫し、誰もがヤンキースの勝利を疑わなかった状況から、奇跡的な4連勝を果たし、見事逆転でワールドシリーズ進出を果たしました。3連敗から4連勝というのは、100年以上ある大リーグ史上初めての快挙だそうです。彼らのあきらめることなく勝利へまい進した努力のたまものといえそうです。

 今回はそれにちなみ、「転職活動における大逆転」というテーマで話したいと思います。

 普通ならばあきらめるような状況に追い込まれたのに、そこから見事逆転、希望の企業の内定を勝ち取ったケースなどを見てきました。そこで、今回は、まれなケースですが、いくつかの実例を紹介したいと思います。

企業が行う経験者採用イベントの活用で大逆転

 100名規模のシステム開発会社に勤務していたA氏(32歳)。大手システムインテグレータ(SI)の下請け/孫請けの業務が中心だったため、上流工程を手掛けたいという気持ちがあり、以前からあこがれていた某大手総合SIへのチャレンジを決意。職務経歴書を作成し、その企業のWebページから直接応募するものの、1週間後にあえなく書類選考不合格の通知が届きました。企業から届いたそのメールには理由は明記されていませんでした。

 その後、A氏より転職のご相談を受け、面会致しました。第一印象は非常に誠実でかつ、リーダーシップの強い優秀な方との好印象を受けました。A氏がその意中の企業の書類選考を不通過になった旨をお聞きしたとき、なぜ不合格になったのだろうと疑問を感じました。その企業が求めている経験や人物に近いのではないか、と思ったからです。すでにご自分で作成されていた職務経歴書を拝見させていただくと、下請け企業だった故の、リーダー経験の少なさ・管理人数の少なさなどが、マイナスポイントとなったのではと推測されました。

書類選考を飛び越し面接する算段

 本人にそのことを指摘すると、実際に企業との面談の場さえ与えてくれたら、職務経歴書で表現している以上に、自分がリーダーとしてやっていくことが可能なことをアピールできるのにとおっしゃられました。

 そこで一計を案じて、1カ月後に弊社とその企業が共催で「中途採用イベント」を実施するので、そこに参加してみてはどうかと提案しました。そのイベントは直接応募して書類選考で不合格となった方でも参加できるものだったのです。

 結局、A氏はイベントに参加、企業側と面接し、たまっていた思いをぶつけ、アピールしたところ、職務経歴書には表現されていない、プラスアルファの人物面の強さ、将来リーダーになり得る資質などが評価され、見事内定、入社できたのです。

 これは採用イベントという形での、直接自己PRの機会を得て見事内定を獲得したケースです。

 職務経歴書上では、過去のプロジェクト/経験した言語やOSなどは表現できても、「リーダーとして資質」などは、書類上ではうまく表現できない場合があります。面接の場が得られれば自信はあるのに、という方は多いのではないでしょうか。

 ちなみに弊社では某大手総合SIの経験者採用イベントを年に数回実施しておりますが、このような機会をうまく活用するのもチャンスを得るうえで重要だと思います。

企業の現場担当者に候補者をアピールして大逆転

 15名規模のソフトウェアハウスに勤務していたB氏(29歳)は、Java、UML、フレームワークといった技術分野をマスターし、システム開発に従事していましたが、上昇志向が強く、いまの企業ではこれ以上のスキルアップは望めないのではということで転職を決意。有用な資格を保有し、経験も申し分ありませんでした。しかし、転職歴が29歳で4社と多く、1、2年ごとに転職を繰り返している状態でした(しかも1社はIT業界外)。

 近年、外資系企業やベンチャー企業など、実力を重視し、転職歴を気にしない企業も増えていますが、大手企業などでは依然、年齢に応じた転職回数を選考の判断材料としているところもあるようです。

 そのため、B氏の場合も前述のA氏同様、意中の企業(某大手総合SI)があり、やはり企業のWebページから応募したものの書類選考で不合格となっていた。

転職回数がネックになっていたが……

 B氏から相談を受けた際によく聞いたところ、確かに転職歴は多いが、1社ごとの転職理由を聞くと、筋の通った理由であり、決していいかげんな理由で転職していたわけではないことが分かりました。

 確かに職務経歴書を企業に送って見てもらうだけでは、転職回数の多さというマイナスイメージが先行し、プラスアルファの面が見えないので、人材紹介会社から直接、企業に口頭で転職理由やアピールポイントなどを説明してみようと考え、B氏の意中の企業を訪問し、候補者の経歴書を見せながら、転職理由を丁寧に説明し、決して安易に転職する方ではないこと、いかに上昇志向を持っている人物かを話し、かつ技術面が企業の採用条件と合致していることを説明し、何とか面接の機会をいただくようにお願いしました。

 その場では渋々ではありましたが、何とか企業の現場担当者に了承していただき、B氏の面接が実現しました。

 B氏本人も最初はあきらめ気味で、半信半疑ではありましたが、面接の場では気持ちを奮い立たせ、せいいっぱいのアピールを行いました。会って話したことで、企業の担当者もその方がしっかりした人物で、技術的にも優れていることを認め、その後見事内定、入社できました。

重要なのは信頼関係

 以上、2つの大逆転を紹介しました。確かに珍しいケースではありますが、共通しているのは、転職者と人材紹介会社との間に信頼関係があったことです。

 インターネットや電子メールがコミュニケーション形態に変化を及ぼし、応募行為や企業の採用活動を飛躍的に効率化させましたが、最終的には人と人とのコミュニケーションが重要なことに変わりはありません。お互いに顔を合わすことで初めて分かる「アナログ的なこと」があるのは事実です。

 私も過去の経験で、この人のために何とか成功を導きたいとの強い意識と執念を持つことにより、成功率が上がったことは幾度もあります。その際に求職者からいただいた感謝の言葉があるからこそ、誇りと自信を持って仕事ができます。求職者と企業、そして人材紹介会社との信頼関係があって、成功への近道となるのです。ぜひ、人材紹介会社をうまく活用して、自分にあるプラスアルファの部分を引き出していただけたらと思います。

大逆転可能な人材紹介会社を選ぶポイント

 さて、最後に大逆転を演出するための人材紹介会社を選ぶ基準です。参考してください。

(1)求人企業との信頼関係がしっかりしていること

  これは客観的な判断と確認が難しいですが、過去の入社人数の実績や取引年数を聞くとよいでしょう。歴史のある人材紹介会社は、1つの企業の経験者採用に多大な貢献をし、実績の大多数を占めることがあります。

(2)適切な企業を提案する力があること

  転職の動機や目的をしっかりと理解し、なぜその企業を提案するのかを明確に説明してくれることが大切です。意向を無視してゴリ押しをする人材紹介会社は避けた方が賢明でしょう。スポーツの世界同様に、優秀な人材には良き人材紹介会社が必要です。単に企業のリストを提供するだけでは人材紹介会社を利用するメリットがありません。

(3)企業ごとに面接内容をきちんとアドバイスできること

  企業との信頼関係があれば面接の立会い経験は無論、面接官の質問の傾向など、通常では得られない情報を持っているものです。

(4)直接企業へ足を運んで推薦してくれること

  通常は人事部門で終了してしまう選考も、現場部門の責任者へ直接PRができれば面接の可能性も高くなるものです。


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