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» 2004年12月01日 10時00分 UPDATE

Security&Trust ウォッチ(30):魔法の鍵と最後の鍵

[上野宣,@IT]

 皆さんはドラクエなどのロールプレイングゲーム(RPG)をプレイしたことがあるだろうか? 物語の世界でアイテムを集め魔物などを倒していくアレである。

 その世界には鍵がないと入れない部屋や開かない宝箱がある。開けるためには鍵を手に入れるのだ。鍵は店で売っていたり拾ったりで、盗賊の鍵や魔法の鍵、最後の鍵なんてものもあったりする。しかし、RPG世界の鍵は種類が少ない。たかだか数種類の鍵で世界中のほとんどの鍵が開いてしまう。

 これはゲームの話なので何の問題もない。しかし、現実世界で考えてみよう。ご存じのとおりマスターキーを使うと、同じマスターキーシステムを使った鍵(多くは同じ建物のほとんどの鍵)をすべて開けることができる。万が一、マスターキーを盗まれてしまうようならば、その鍵で守っているもののセキュリティが脅かされるということにつながるのだ。

コンピュータ世界のマスターキー

 いい切る根拠はないのだが、自分が管理しているアカウントに共通のIDやパスワードを使っている方は多く存在するだろう。さらにこれは個人だけではなく企業内でも同様に行われていることだと感じる。

 OSのログインに始まり、Webメールにポータルサイト、BlogやISPなどログイン時にアカウント、いわゆる鍵を必要とする場面は非常に多くなっている。少ない人でもざっと10アカウントぐらいはあるのではないだろうか?多い人になると100アカウント以上管理していることも珍しくないと思う。

 ちなみに筆者も数えてみたら100アカウント以上あった。もしアカウントすべてがマスターキーのように同じIDとパスワードで管理されているとして、「そのマスターキーを誰かに渡せますか?」と聞かれれば、筆者は間違いなくノーと答える。

 マスターキーを渡したからといって、管理しているすべてのセキュリティが破られるとは思わない。それは何を管理している鍵なのかが分からないからだ。しかし、その人のメールアカウントなどは容易に想像がついてしまうため危険の度合いは高い。

マスターキーよりキーボックス利用を提案

 マスターキーのようなパスワードで多くのアカウントを管理していると、あるマスターキーが漏えいした場合に被害が他所に及ぶ可能性がある。かといって、100以上もあるアカウントすべてに異なるIDとパスワードを使って、それを私の頭で記憶できるわけがない。

 そこで筆者はキーボックスを使うことにした。100のアカウントに異なる鍵を割り当て、そのキーボックスの鍵1本を管理することにしたのだ。マスターキーではなく、キーボックスの鍵である。キーボックスというのは、パスワード管理ツールと呼ばれているたぐいのソフトウェアのことを指す。

 頻繁にネットワークを通過するマスターキーを使うぐらいなら、自己責任の範囲内で使えるデスクトップPCにパスワード管理ツールを導入して管理した方が安全に違いないという結論からである。

パスワード管理ツールの利点

 一般的なパスワード管理ツールの最大の利点は、アカウント別に異なるパスワードを付けて管理できることである。しかも、ツールのパスワード自動生成機能を活用すれば複雑なパスワードを利用できる。さらに、IDとパスワード以外にも補足情報を記録できる。登録日やURL、メールアドレスなどを記録できるツールもあるので、付加的な情報や自分が登録したアプリケーションのシリアルナンバーの管理ツールとしても使うことができる。

 もちろん、ツール内で管理しているこれらのパスワードなどの情報は暗号化されている。キーボックスの鍵がない限りは秘密にしたい情報が漏えいする確率は低いだろう。

 さらにツールとして便利な機能を備えていることが多い。記録した情報をショートカットキーを使うことでクリップボード経由で貼り付けたり、必要な情報をフォルダ分けしたり検索したりすることもできる。

 パスワード管理ツールは、その利便性と安全性が向上する効果から一度使うと手放すことができないたぐいのツールである。

パスワード管理ツールいろいろ

 パスワード管理ツールの利用が1つの解決法だと感じた方のために、パスワード管理ツールをいくつか紹介しておこう。

●ID Manager

 必要な機能はそろっていて無償で利用することができる。アカウント数が増えてもフォルダ分けで管理できるなど見やすい構成となっている。また、FTP経由でデータを管理することもできるので、2台以上のコンピュータを使っている方には便利である。ちなみに筆者はこのツールを使っている。

パスワード管理ソフト ID Manager

http://www.woodensoldier.info/soft/idm.htm


●パスワード総合管理

 秀丸を提供しているところが作っているシェアウェア(1050円)で、こちらも必要な機能は一通りそろっている。機能も操作もシンプルでパスワード管理に特化したツールである。

秀まるおのホームページ−ソフトウェア−パスワード総合管理

http://hide.maruo.co.jp/software/pwinte.html


●Norton password Manager

 Nortonシリーズでおなじみのシマンテック社の製品である。一通りのパスワード管理の機能に加え、パスワード強度メーターという機能なども備わっている。業務としてパスワード管理を行う必要がある場合に向いている。

●認術修業

 ほかのパスワード管理ツールとは一線を画す製品である。Windowsが記憶しているパスワードを復元したり、ハッカー由来のパスワード推測アルゴリズムでパスワードの強度診断を行うことができる。パスワードを安全にメモするためのツールはあるが、記録してクリップボード経由で貼り付けるなどの機能は備わっていない。楽をするためのツールではなく、使う人間のセキュリティ意識を向上させるツールである。


Profile

上野 宣(うえの せん)

1975年京都生まれ。情報セキュリティを世に広げるべく、講演や執筆活動とさまざまな方面で活動中。近著に「今夜わかるメールプロトコル」、「今夜わかるTCP/IP」、「今夜わかるHTTP」(共に翔泳社)がある。


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