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» 2005年02月17日 00時00分 UPDATE

転職を阻む意外な落とし穴(14):やる気とスキルだけでは転職できない

転職する際に重視することは何か。給料、希望職種、経営者のビジョンや方針、スキルアップ支援など。しかし、いざ転職する場合に、そんなこととは関係なく、思いもよらぬことで転職を断念しなければならないことがある。そんな例を、毎回キャリアデザインセンターのキャリアコンサルタントが紹介する。

[後藤和弥,キャリアデザインセンター]

やってみたいと感じた、その次は?

 スキルが高く経験が豊富でも、やる気に満ちていても、職務経歴書が分かりやすく美しく書けていても、転職活動がうまくいくとは限りません。では、足りないものは何でしょうか。

 独立系システムインテグレータで3年の経験を積んだAさんは、主に現職への不満から、転職を考え始めました。Aさんは大学卒業後すぐに現在の会社に入社し、金融システムの開発を担当してきました。彼はWeb系の開発を得意とし、現職で得た専門的な業務知識もあります。しかし、どうしても金融の世界に興味が持てず、今後長く続けていく気になれないというのです。社内では金融担当でない部署に異動するケースはほとんどないため、転職を決意。弊社に相談にみえました。

 ところがAさんは、次にどんな仕事をしたいのか、まったく考えていなかったのです。

 そこで、彼の強みであるJavaのスキルが生かせる求人を十数件用意し、プロジェクトの内容、得られる経験について1つひとつ説明しました。

 その中でAさんの興味を引いたのは、あるエンターテインメント企業のオンラインサービス部門の求人でした。Aさんは以前から、通販やゲームのほか、自分でもコミュニティサイトを開設するなど、インターネット上のサービスをよく利用していました。それらをバックグラウンドで支える仕事に興味を持ち、やってみたいと応募を希望されたのです。

 ですが私は、応募の前に志望動機をじっくり考えるようにAさんにお願いしました。彼はそのことに少し驚いたようです。

スキルとやる気だけでは不十分。志望動機を明確に

 Aさんとしては、やっと興味の持てる求人を見つけたところ。やってみたいという気持ちさえあればいいのでは、と思うのも無理はありません。

 しかし、彼が経験した金融システムとインターネットサービスとでは、世界が異なります。共通しているのはベースとなる技術だけ。若手とはいえ、やる気だけでは採用されないのです。

 かかわる業界や分野、求められる役割が違う仕事へ転職する場合、特に志望動機が重要になります。それまでの経験が通用しないため、仕事を正しくイメージできているか、真剣に取り組む気があるのか、単なる興味や憧れだけで志望しているのではないかなど、厳しく問われるのです。

 Aさんは1週間かけて応募企業への志望動機を練りに練りました。企業が運営するサイトの会員になり、サービスの研究もしたようです。

 すると、自分が携わりたいこと、企業に貢献できそうなことがより明確に、具体的になってきたのです。サービス向上のために自分の技術力を生かすことが、大きなモチベーションになることにも気付きました。そして、いずれは技術者の代表として、企画段階からサービスにかかわりたい、という将来像も描くことができました。

 その甲斐あって、彼は面接で技術力だけでなく、意欲と企画業務へのポテンシャルを高く評価され、無事志望企業に入社を果たしました。

必要なのは「考え抜く」こと

 転職活動において面接の前にしておくべきこととは何でしょうか。

 面接対策として、志望理由や経歴や自分の強みをまとめておくことが必要だと思う方が多いようです。もちろんまとめるのも重要ではありますが、それだけの準備ではとても十分とはいえません。

 確かに、上記のようなことは面接で多く聞かれる点です。しかし、面接官がどんなコミュニケーションを取る人間で、志望者のどこを見ようとしているか、どんな質問をするかは分からないのです。私たちのような転職アドバイザーでも、正確に予知することは不可能です。

 こう聞かれたらこう答えよう。そのように考えて面接に臨んだのでは、予想外の質問や、自分の返答に突っ込んだ質問をされたとき、慌ててしまうかも知れません。面接官に気に入られようと、心にもないことをいってしまう可能性もあります。転職の経験がなくても、就職するときや学生時代にそんな経験をした方は少なくないはずです。

 面接の前にしなければならないことは、考え抜くことです。

 なぜ転職するのか? 次はどんな仕事をしたいのか? いままでの仕事でどういう経験をし、どんな役割を果たしてきたのか? なぜその会社を希望するのか? 入社したら自分はどんな成果を出せるのか? 将来の目標は? それぞれの項目について、自問自答を繰り返し、掘り下げて考えてみてください。

 具体的に、多面的に、徹底的に、考えるのです。

 そうしておけば、面接でどんな質問をされても、自然に本当の思いを話せるはずです。

数々の決断にも役立つ

 考え抜く作業は、転職活動には欠かせないことです。いままでとこれからをじっくり考えることで生まれる、自分の経験への自信や、将来像の具体的なイメージが、転職活動のモチベーションを支えます。

 応募企業を選ぶとき、複数の内定を出されたとき、現在の会社から引き止められたときなど、転職活動中には決断を求められる数々の場面があります。

 考え抜く作業をしておけば、そんなときにも迷うことなく、納得して転職ができるはずです。

著者紹介

後藤和弥(ごとうかずや)

静岡県出身。大学卒業後、求人情報誌出版の営業、人事・人材紹介事業・人材派遣事業と、人材ビジネスを14年経験した後、キャリアデザインセンターへ転職。数多くの転職希望者・派遣スタッフの相談を受けた経験から、事例に基づき相談者に納得してもらえるキャリアカウンセリングを心掛けているという。



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