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» 2005年04月29日 00時00分 UPDATE

キャリアビジョンづくりから始めよう(2):自分の価値観は何だったのか

キャリアビジョンを「かたち」にする「行動」の第一歩として、今回は“自分情報を集め整理する”ということをしてみる。そしてそれを“今”にどのように生かすのか。キャリアビジョン実現へのルートを短距離にするための活用方法をご案内しよう。

[関口みゆき,特定非営利活動法人 キャリアカウンセリング協会]

自分情報を整理する

 「自分のことは自分が一番よく知っている」。本当でしょうか?

 最近、就職活動に際しては、“自分を知る”ということの大切さが語られ、就職本や情報誌でこの言葉を目にすることも多く、実際、就職活動のサポートでもこのことに多くの時間がかけられています。しかしいまの自分・過去の自分にかかわらず、自分自身と向き合い、それを掘り起こしていく過程は思いのほかつらいことであったり、なかなかハードルの高い作業だと思います。

 自分探しとは、

  • 自分の性格や人柄・コミュニケーションの特性。それらの強みと弱み
  • 自分は何に関心や興味があるのか。好きなことややってみたいことは何か
  • 毎日の生活では何に価値を感じているのか。かけがえのないものと感じるものはなにか
  • どんな得意なことや才能・能力があって、知識として何を学んできたのか
  • 何が身に付いているのか
  • いまの環境はどうで、自分の市場価値をどう見ているのか、どう計るのか

 こうしたことを切り口として、そのそれぞれを自分情報として整理していくことなのですが、この過程が皆さんの戦力となるようなステップをご紹介したいと思っています。客観的なアセスメントや他者からの視点、また作業の過程で見えてきたものやその結果で、どこの誰とも同じではない“自分”が見えてくるでしょう。

過去の中に“宝さがし”

 前回「キャリアとキャリアビジョンを考える」は、過去に心が動いたシーンに基づいて、自分の大切なもの、こだわり、捨てることのできないものを掘り出してみることをお勧めしました。これまで進んできた道にこそ、その過程でつかんできたたくさんのものが詰まっています。その過去の経験の中に宝さがしをしてみましょう。

 以下のようなシートを用意しました。できるだけ多くの過去の自分に目を向けていただければと思います。何枚も書いてみましょう。

「経験の棚卸しシート」
(1)印象に残る過去の出来事を思い出してください
自分がやってきたことで
・ 大変だったこと、頑張ったこと、うまくいったこと、うまく進まなかったこと
・ 思い出として大切にしていることなど






(2)そのときの問題や課題がありましたか。それはどんなものでしたか









(3)その取り組みや、問題解決などのためにどんな工夫をしましたか









(4)そのときどんな気持ちを感じましたか









(5)そのときできたことやできるようになったこと、そこで学んだことなどがあったら書きましょう









 このシートを何枚も集めていくと、そこに共通しているものが見えてきます。例えば、あなたは「何にこだわって」「何を基準に」物事を判断しているのでしょうか。お金、人とのかかわり、人からの期待、自分自身の望み……。その「基準」がはっきりすれば、「何が」満たされれば満足感が得られるかが分かります。何を大切にし、仕事を通して何を求めているのか。それはあなたの「価値観」にほかなりません。

自分の価値観は何だったのか

 自分が夢中になったこと、やっていて楽しいこと、多くの時間を割いて取り組んだり、苦しいことも苦労と感じずに臨めること。それは何だったでしょうか。

 数字やデータを扱うこと、何かを生み出すこと、新しい発見、人との折衝、コツコツと自分が納得いくまで取り組む過程、誰かのために役立つこと。何がやりたくて、何をやりがいと感じていたのでしょうか。

 自分の「興味」があることには、時間もお金もかけられるし、充実した気持ちで向き合うことができるものです。結果その能力も伸ばされ磨かれるということもあるでしょう。皆さんが過去の出来事の中で行っていたものとは何だったでしょうか。

 そんな、できたこと、得意だったことは、自分の中に身に付いた「能力」です。少し視点を変えてみれば、それはいろいろな場面で使うことができるのではないでしょうか。

 問題にぶつかったときにどんな対処をし、どのように乗り越えるのかとか、やりがいのあることに対してはどのような結果を生み出すことができるのか。いい換えれば、問題解決能力、企画力、プレゼンテーション力、コミュニケーション力、人を動かす魅力やリーダーシップなど。あなたの「転移可能な能力」となっているはずです。

 いまこの時点でどんなことが経験として語れて、その経験を通して何が身に付いているのか。知識や技術としてはどんなものを得ているのか。

 発想の生まれ方や物事への見方・取り組み方。組織や仕事・人へのかかわり方・距離感。やりがい・ストレスなどを感じる場面などをぜひ整理してみましょう。自分の興味・価値観・能力とはどんなもの? 誰でもないいまの自分と出会いが待っています。

 ここまでで、キャリアビジョンによって行き先やいま目指すもの・求めるものが見えてきて、自分情報の整理によって自分の持ち物、戦略的にいえば武器がどんなものかが分かってきたというところです。それはもちろん自分のお宝ですし、将来や転機に当たってのよりどころともいえます。それをどのように展開していくか。その使い方は1つではないはずです。

 もちろん将来や転機にのみでなく“いま(今)”に活用することも大切です。ではここで、それをいまにどのように戦略的に活用することができるのかを考えてみたいと思います。

自らの行動でいまの組織での役割を動かす

 人は自分らしさを発揮できる環境を求め、さらに自分の納得いく役割を与えてくれる環境を望むでしょう。下記の図はご覧になったことがある方も多いとは思いますが、企業や組織の中での働き方について示した図です。

r5cvision02_01.gif WILL :やりたいこと、ビジョンと照らしてやろうとしていること
CAN :できること
MUST : 企業や組織からの期待・要望の変化

 過去において個人は、組織の「MUST」とどのように折り合いをつけていくかや、それにどのように応えていくかが問われていました。そのMUSTに応えることが安定をもたらしたり、実質的には報酬・給与につながっていたのです。

 しかしいま時代は「個」に移り、個人がその組織・企業の中で、どのように利益を生み出していくのかが問われるこのときにあっては、自らの「WILL」に向かって「CAN」を拡大していくことが、欲求としても実利的なことでもあったりします。個人のCANを広げていくという活動がすなわちやりたいことができるようになるという発想です。やれることが増えればやりたいこともできるようになる、というわけです。

 それは新たにMUSTと重なり合う領域が増えることでもあり、企業や組織の要望を自らのやりたいことへと呼び寄せることにもつながります。またMUSTとCANが重なる領域が増えることでその実績が表れれば、それを企業・組織にアピールしていくことで、個人の報酬に結び付くものとなるはずです。それは、いまの自分の組織内でできることでしょうか。

 以前にもお伝えしたように、キャリアの道程はその発達の過程にこそ意義があるといわれ、個人の側のニーズと組織のニーズがうまくマッチングされ、また相互に働き掛けることによってさらに発達していくといわれています。自分らしく働くためには自ら働き掛けていくことが重要です。

できること(CAN)が増えれば、やりたいこと(WILL)もできるようになる できること(CAN)が増えれば、やりたいこと(WILL)もできるようになる

自らの意思で環境を選択する

 しかし、やりたいことがその組織内にマッチしなかったり、存在しなかったりした場合には環境を変えざるを得ないということもあり得るでしょう。

 そこでの道筋はキャリアビションを基に何を目指していくのかということになるわけですが、行き先が決まっていればそこに至るための道筋は1つではないことが分かります。CANを広げるためにいまどのような環境が考えられるのか。

 またはそのCANを増やすことを望んでくれる環境(通常企業はMUSTを実現するためにしかCANを支援してくれません)がどこかにあるならば、そこをステップにWILLに向かっていくということも決して遠回りとはいえないかもしれません。新たな1つのCANを磨くために、まるで違う業界や職種を選ぶというのもありでしょう。自らのやりたいことをやるためには、なりたい自分になるためには自らが選択して、道程を描いていく、つくり上げていくという意識が必要かもしれません。

筆者紹介

特定非営利活動法人 キャリアカウンセリング協会

関口みゆき

ホテル業の人事・労務・能力開発・退職転進援助制度事務局に勤務。その後リクルートにて就職支援プログラム・カウンセリング・企業開拓などを行いながらGCDF-JAPANキャリアカウンセラー資格を取得。現在特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会にてカウンセラーの育成にかかわるともに大学・自治体・団体などで活動中。



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