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» 2005年09月07日 00時00分 公開

転職失敗・成功の分かれ道(10):転職は最後が肝心――内定後のポイント

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

[イムカ,キャリアコンサルタント]

入社前と実際の業務が違う

 入社前と入社後の仕事内容や条件が食い違っていたため、前職を短期間で辞めた方が相談に来られるケースがあります。皆さんの周りでも、そんな話を聞いたことはないでしょうか。

 企業側が正しく仕事内容・条件を伝えていなかったということが、食い違いの要因の多くを占めています。その一方で、転職者側がきっちりとどういう仕事内容・条件なのかを聞いていなかったということも多いのです。

安部氏の例から学べること

 弊社に転職相談にこられた安部氏(仮名、29歳)ですが、そのときには3カ月勤めた会社を退職していました。安部氏はバリバリのJavaエンジニアで、退職理由を本人に聞いたところ、面接の過程でJavaでの開発を希望していると伝え、その後内定、入社と至りました。が、実際の入社後の業務は開発どころかテスト工程(テストパターン作成、バグ出し)中心の業務だったそうです。安部氏は入社早々会社に業務が希望と異なると伝えたのですが、その会社はテスト工程を中心に、エンジニアを派遣する形態に事業をシフトしている段階でした。そのため、今後もそのような業務が続くという話でした。これでは当初の転職の目的(開発者としてのスキルアップ)が果たせないと判断し、安部氏は早々に退職の道を選んだそうです。

 このケースは、当然企業が正しく業務内容を伝えなかったことに原因があります。しかし、安部氏にも詰めの甘さがあったのです。

 面接の過程で、自分をアピールすることに集中したあまり、仕事の内容の詳細を十分聞くことなく入社を決めてしまいました。それは、いくつかの企業での面接で不合格が続いたため、焦りがあり、内定を取ったうれしさで入社を決めてしまったというのです。

転職活動のゴールは内定を得ることではない

 この事例のように、皆さんは「転職活動のゴール=内定を得ること」と考えていないでしょうか。転職活動においていろいろと勝負どころがありますが、その中でついつい甘くなりがちなのが、内定を勝ち取った後の、企業や仕事内容に対する最終チェックです。

 応募前の企業調査や面接進行中の各社の比較などは一生懸命行うのですが、内定が出た瞬間に、うれしくなってしまうと、いままでの緊張が解けるためか、ついつい最後の最後で入社するべきかどうかという判断が甘くなりがちのようです。

 人によっては、まだ応募中/面接中の企業があるのに、内定が1社出ると、「もうここでいいか」という気分になってしまい、入社を決めてしまうこともあります。

 安部さんの例以外でも、以下のような話を聞くことがあります。

 Javaの開発を行うという話を聞いていたのに、実際に入社してみると、アサインされたのはほかの言語だったり(業務内容/使用するテクノロジの食い違い)、面接時には非常に親切な対応を受けたのに、実際の職場は非常に殺伐としていたり(職場の雰囲気が想定と異なった)、人事の説明では残業はほとんどないという話だったのに、実際の現場は毎日終電帰りだった(労働環境の違い)などです。

 現状を打破するために思い切って転職したのに、前職よりもむしろ状況が悪化してしまい、最悪の場合短期間で次の転職を、ということは結構あることです。

実は私も経験者

 恥ずかしながら、かつて(10年ほど前ですが)、筆者も1年に満たない短い期間で、会社を辞めた経験があります。いろいろと理由はあったのですが、主な原因の1つとして、自分のキャラクターと会社の風土や文化が合わなかったということがありました。大手金融系企業の情報システム部門に配属されたのですが、保守的で封建的な風土がありました。転職前の会社は自由に自分の意思でやりたいことをやれる環境だったので、そのギャップに苦しみました。

 当時は、その企業が自分に合っているかどうかを見極めるすべも分からなかったため、表面的な知名度や待遇などだけで入社してしまって、結果的には失敗となりました。いまにして思えば、もっとしっかりと話を聞いておくべきだったなんて思うことがあります(いい人生経験にはなりましたが)。

面接だけではすべては分からない

 このような失敗を防ぐために認識してほしい一番のポイントは、あくまで面接の場は「企業があなたを見ている」場であるということです。企業の面接の進め方により異なりますが、基本的には皆さんが内定を得るために企業に対してアピールを行う場です。

 一方企業からは、面接ステップの段階では「あなたに入社してほしい」ということをあまりアピールしません。よって、内定が出た時点では、まだあなたが入社を決断するに当たって情報が不十分かもしれません。

 そこで、皆さんに徹底していただきたいのは、内定後必ずもう一度、企業とのテーブルに着いていただきたいということです。面接時のスタンスと違う、「内定が出た状態」を利用して企業にいろいろと遠慮なく聞いてみるのです。

 面接時にも仕事内容のある程度の情報は得られますが、「自分をアピールしなければならない」ということがついつい前面に出てしまうので、「こんなことを聞いたら、企業は自分のことをどう思うだろうか」などの遠慮が出てきます。そのためにどうしても聞きたいことが十分に聞けないかもしれません。また緊張してしまって何を聞いていいのかも整理がつかないこともあります。

 企業側も面接という緊張した場ということから、構えていることも多く、本来の様子はうかがえないことが多いようです。

 また、テーブルに着く場合は必ず、企業側に「入社するかどうか私は検討中である」という前提を伝えてください。なぜなら企業は多くの場合なにもいわずもう一度訪問された場合、入社の意思を固められたのだな、と思いがちです。その場合は後々のトラブルの原因となります。必ず、どういう状態・気持ちであるかを正確に伝えください。

 良い条件であればこれから入社するかもしれない企業です。聞くべきことはしっかり聞くとしても、礼節をわきまえて言葉遣いや表現に気を付けて、それまでの印象を壊さないようにすることも重要です。同じ質問でもいい方によっては相手の気に障る内容になることもありますので……。

 こういう話のテーブルに着くというのは、なかなか企業側に伝えづらいかと思います。その点、そういう場の設定については、私どものような人材紹介会社を経由した場合の方が、スムーズに話が進むかと思います。仲介者として企業に対していいづらい点などを代わってお話しします。

その場で何を聞くのか

 内定後、企業とのテーブルに着いた場合、最終的に主にチェックすることは、次の4つだと思います。

会社/職場の雰囲気
自分が入社した場合の配属先、仕事内容
実際の労働状況(休み/残業時間)
給与

 具体的なポイントは、次のようなことだと思います。

部門のこと:配属予定部門、部門全体の業務内容全般について(対象の業界、顧客企業、進行中プロジェクトなど)

自分の仕事のこと:自分が加わることとなるプロジェクト内容、そこで使用される技術領域(OS、言語など)、担当するフェイズ、自分のポジション(リーダーかメンバーか)など

プロジェクト形態のこと:客先常駐か社内での開発か、プロジェクトマネージャ、プロジェクトリーダーを立て、チームとして請け負うのか、それとも派遣形態かなど

労働環境のこと:残業時間の実態は、出張はあるのか、フレックスであれば実際の運用状況は

自分の将来のこと:今後どういうキャリアパスが想定されるか(リーダー、上流、スペシャリストなど)

昇進・昇給の仕組み、評価制度について:実際には誰がどういう観点で評価するのか、何をクリアすれば上に上がれるのか

職場の雰囲気:チームワークは出来上がっているのか、雰囲気が自分の感覚と合うかどうかなど。英語を使用する環境を期待する場合は、実際の英語使用頻度

給与のこと:残業時間/残業手当の上限、賞与の算定法など

 実際に企業に確認する前に、まずは、一度冷静になり、上記のような内容について、ご自身で知りたいこと、それまでに十分聞けなかったことを整理しましょう。

 確認したいことを整理しながら、ご自分の希望条件の優先順位付けをしてください。そもそもなぜ転職したかったのか、ということからいま一度立ち返ってもよいかと思います。

企業側の回答の誠実さを感じ取ることも重要

 企業の人と話を再度するといっても、相手が誰なのかも重要です。人事の方は実際の業務内容は分からないことが多いでしょうし、現場の方に給与のことを聞いても明確な回答は得られないかもしれません。

 自分の確認したいことを整理したうえで、誰と話がしたい、ということを企業に(または人材紹介会社に)相談するとよいと思います。通常の場合、部門長の方やリーダークラスの方が対応し、制度的なことは人事が説明という対応を取ることが多いようです。

 また話の場を設定したとしても、聞き切れないこともあります。例えば職場の雰囲気です。「どんな雰囲気ですか」と聞いてみてもなかなか客観的には答えられないものですので、これはお会いした方の雰囲気や職場の見学などをさせてもらって、ご自身で感じ取ることも必要です。

 そして、相手が答えている「誠実さ」を感じ取ることも重要です。現実的には、ソフトウェア開発の現場で、残業/休日出勤のことや、プロジェクト形態のことなど、必ずしも転職者の方にとって心地よい答えがすべて並ぶはずはありません。

 ソフトウェア開発の現場ですから、必ず大変なことはあります。プロジェクトの局面によっては残業時間が増える、仕事によっては少人数で客先常駐になるなど、そういったネガティブな面、話にくいこともあるでしょう。こうした回答では、重要なのは回答の内容よりも、むしろそれを誠実に話され、かつそれに対してはどういうスタンスで対処しているかということをきっちり話をされるかどうか、ということかもしれません。そうした誠実さも入社の是非の見極めの材料になるかもしれないからです。

 私も転職活動のお手伝いをさせていただく場合は、必ず内定後のテーブルにつくというステップを踏んでもらっていますが、最終的な入社を決めた理由として多いのが、「雰囲気が良かったから」「一緒に仕事をしていけそうな人たちだったから」という点です。ほかの内定企業よりも年収など待遇面は劣るのに、この点を重視して決断される方も多いのです。やはり最終的には「人と人のつながり・縁」というものが大きな要素になっていると思います。

最後で印象が逆転した事例

 番場氏(仮名)はネットワーク制御関連のソフトウェアを開発していたエンジニアで、より上流での仕事を目指して転職活動を行いました。その結果、2社より内定が出たものの、会社の規模・安定感など甲乙付けがたく最終判断に迷い、両社と最終の話のテーブルに着くこととなりました。1社目の企業は仕事内容がネットワーク制御系とまさに自分の経験がぴったり生かせる領域で、かつ先方も大きな期待をよせていたため、番場氏は最後のテーブルに着く直前までは、どちらかというとその企業に対して好印象を持っていたが、2社目の企業の話を聞いて印象が逆転したそうです。

 仕事内容はまったく経験外の業務アプリケーションだったため、どちらかというとネガティブな印象だったのですが、SEの残業時間をどうコントロールしていくかといった会社としての考え方、将来SEがリーダーとして自立していくための教育・バックアップの考え方、などを聞いて、自分が常日ごろシステムインテグレータはこうあるべきだというイメージに近いことが分かり、入社を決断したそうです。

 表面的には分かり得ない情報でしたが、じっくり話し込むことによって会社の誠実さや本来のスタンスなどが見えてきて、印象が最後に逆転したそうです。

自分の目、耳で確かめて決断する

 自分自身も失敗を経験し、またいろんな方の失敗談を聞いてきましたが、肝心なことは、自分のスタンスを失わず、ご自分の目で、耳で、確かめて決断することです。

 インターネットなどでいろいろな外部情報を得られるようになりましたが(当然そういった情報も重要ですが)、最終的には自分の肌で感じとって、判断していくことが重要だと思います。

 皆さんも最後まで気を緩めず、よい企業に巡り合っていただければ幸いです。


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