辞めるのやめていいですか?退職活動やってはいけないこんなこと(2)(1/2 ページ)

転職を志し、選考過程を経て内定を獲得した後は、現在勤めている会社を円満に退職しなければならない。それが「退職活動」だ。本連載では、毎回退職活動にまつわる危険な事例を取り上げて解説する。連載内容を活用してトラブルを回避し、円満退社を目指してほしい。転職に対する不安を少しでも減らすことができればと思う。

» 2005年12月23日 00時00分 公開
[福間啓文アデコ]

 転職活動をするに当たって、大事なポイントはいろいろあります。なぜ転職をするのかという「動機」、今後どうなりたいのかという「キャリアプラン」、適切な情報収集を行うという「行動」……。しかし、ある意味一番慎重に、的確に行わなければならないのが、現在勤めている会社をスムーズに退職するという「退職活動」です。

 前回「その『内定』、本当に有効ですか」では、口頭での内定の危険性を紹介しました。今回は私が担当した2人の転職者を例として、退職活動に必須な考え方と心構えについてお話しします。

「明日になったら伝えよう……」

 高村(仮名)さんは32歳、ソフトウェアベンダの開発リーダーとして活躍していました。個人業績も順調に伸びており、後輩指導の経験やマネジメントの経験もあります。しかし高村さんには、会社から適切な評価をされていないとの思いがあったのです。

 そこで高村さんは年収アップを目標として転職することを決意し、弊社でキャリアカウンセリングを受け、転職活動を開始しました。

 転職活動は順調に進み、紹介した複数の企業のうちの1社から内定が出ました。高村さんも提示された年収と今後のキャリアビジョンに納得し、1カ月後には転職をすると決意し、先方企業にもそのように伝えました。

 ここまでは非常にスムーズに進みました。ところが、内定が出てから1週間後、高村さんから電話があったのです。「すみません……。転職時期がずれ込みそうです。どうしたらいいのでしょうか」と、非常にあわてた様子でした。

 状況をお聞きすると、次のようなことでした。高村さんは転職活動をしながら、現在抱えているプロジェクトでも多忙を極めていました。内定後もついついプロジェクトの業務が優先となり、上司に退職意思をはっきりと伝えていなかったらしいのです。

 内定を取ったという安心感とプロジェクトの忙しさから、高村さんは「明日にでもいおう。伝えさえすれば大丈夫だろう」と思っていました。あっという間に1週間がたち、やっと上司に「相談がございまして……。実は今月で退職したいのですが」と話を切り出したのです。

 上司はかなり驚いたようです。「どうしたんだ急に!? それも今月で退職したいというのか!? そんなことすぐに認めることはできないし、いま忙しいので後日、話をしよう」と取り合ってくれませんでした。ここで初めて高村さんは焦りと不安を感じ、私に連絡をしたとのことでした。

高村さんのケースの問題点

 退職活動につまずき、自分で決めた入社日を延期せざるを得ない状況になってしまった高村さん。この例を読んで、皆さんは何が問題だったと思いますか。

1.強い退職意思を持っていたのか?

 高村さんには、上司に話さえすれば何とかなるだろうという安易な気持ちがありました。それが表れている例として、上司に話を切り出したときに「相談がございまして」といっていますね。これでは強い退職意思を持っているとは思われず、逆に「退職するかどうか悩んでいるので相談に乗ってほしい」と受け取られかねません。実際、上司には本気にされず、「忙しいので後日、話をしよう」と先送りされています。

2.退職の具体的なプラン(イメージ)を持って話をしたのか?

 忙しいのは分かりますが、退職という大事な話にもかかわらず、仕事の合間に話をしていますね。内容に関しても、いつまでに引き継ぎを終え、いつ退職するかという日程を伝えていません。具体的な日程を伴った退職の計画を立て、それをはっきり伝えることが必要でした。

3.内定先に対する配慮はあったのか?

 高村さんの意識に大きく欠けていたものとして、内定先企業への配慮があります。1カ月後に入社すると約束したにもかかわらず、高村さんには、入社日は延期できるだろうという勝手な甘い考えがありました。忙しいことを理由にすれば、内定先企業は分かってくれるのではと思っていたのです。これは大きな誤解であり、大変危険なことです。

 企業は採用計画に基づいて採用活動を行い、内定を出し、入社日を確認して受け入れ態勢を整えますので、よほどの理由がない限り延期に応じることはありません。引き継ぎ業務はどの転職者も行うことであり、ただ忙しいので延期してほしいといったのでは、入社前からマイナスのイメージを持たれてしまいます。最悪、内定を取り消される場合もあります。

 私はこれら3つの問題点を高村さんに指摘しました。高村さんも自分の思い込みと判断の甘さに気付き、入社日に向けて退職の計画を立てる必要性を痛感したようです。何よりも自分で決めた「転職するぞ!」という信念を再確認し、翌日あらためて上司に明確に意思表示をし、無事に新しいスタートを切ることができました。

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