通話網を脅かすSkypeの仕組み、分かりやすく解剖!5分でネットがわかるシリーズ(5)(2/5 ページ)

» 2006年10月19日 00時00分 公開
[江原顕雄@IT]

2. Skypeの接続形態の秘密

●「クライアント・サーバ型」

 SkypeはPtoPを使ったシステムなのですが、なんでPtoPを使っているのか? その利点と仕組みについて解説をします。

 まず、PtoPを理解するためには、「クライアント・サーバ」型のネットワークシステムを知る必要があります。クライアント・サーバ型のネットワークは、インターネットでは非常によく使われる形態で、サービスを提供する「サーバ」とサービスを受ける「クライアント」という親と子のような関係があります。例えばWebチャットの例で考えると、チャットサービスを提供するサーバと、そのサーバにアクセスをしてチャット(サービス)を楽しむクライアントという構図になっています。

 Webチャットだけでなく、HTMLファイルや画像を提供するWebサーバ、ファイルを配信するFTPサーバ、メールデータの送受信をするメールサーバなどなどネット上には多くの「クライアント・サーバ型」のネットワークが稼働しています。このタイプの長所は、データの管理が一元的にできることです。しかし、アクセスが集中して負荷が掛かると不安定になったり、最悪サーバがダウンし、サービスが全面的に停止してしまったりする可能性があります。

図2-1 クライアント・サーバ型 図2-1 クライアント・サーバ型

 PtoPもネットワーク形態の一種で、サーバを必要としないかサーバの役割がとても軽いシステムとなっています。各クライアントが1対1で接続し、サービスを展開していきます。障害に対して非常に強いのがPtoPの特徴です。サーバがダウンをすればサービスも停止してしまうクライアント・サーバ型と違い、PtoPではサーバが存在しない(もしくは役割が軽い)ため、PtoPネットワークに参加しているクライアントの一部がダウンしたり、ネットワークに障害が発生したりしてもサービスがすべて停止することがありません。

図2-2 PtoP型の解説&障害 図2-2 PtoP型の解説&障害

●スーパーノードを使って効率管理

 では、SkypeのPtoPシステムの特徴について解説をしていきましょう。

 SkypeのIDを登録する際に、Skype社のデータベースサーバを利用します。Skypeでサーバが重要な役割を果たすのはこの場面のみで、同じIDを登録したら混乱してしまうため一元管理が必要なのです。ここでIDとIPの対比をした電話帳のようなデータが作成されるのですが、このデータはサーバが保持しません。スカイプに登録されるユーザーは何百万という莫大な数なので、サーバで管理するにはデータが大き過ぎるからです。この電話帳データは分割されて、Skypeのクライアントが分散して保持していくのです。

 しかし、すべてのクライアントマシンにデータを細かく刻んで分散させると効率が悪くなるので、「スーパーノード」といわれるクライアントマシンのリーダー格を作ります。この複数の「スーパーノード」に電話帳のデータを分散させて、ほかのクライアントマシンがそのデータを参照して、Skype上でチャットや音声通信などはPtoPで接続を行うのです。

図2-3 スーパーノードを使って分散管理&通話をするときの仕組み 図2-3 スーパーノードを使って分散管理&通話をするときの仕組み

 クライアント・サーバ型とPtoP型の違いと、Skypeについて解説をしてきました。外部ネットワークになかなか接続ができない、厳しい社内のネットワークからもでもSkypeは簡単に接続ができます。いったいなぜか? 次ページではその秘密に迫りたいと思います。

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