PLCでケーブルだらけのLANにさようなら5分でネットがわかるシリーズ(8)(3/5 ページ)

» 2007年01月16日 00時00分 公開
[江原顕雄@IT]

3. つなげなかったラストワンマイル

 現在発売されているPLCは、家庭内LANがメインの利用方法となっていますが、PLCは当初別の目的で開発が考えられていました。「復活した技術」ともいわれるPLCの歴史について、ここでは紹介しましょう。

 電力線を通じてデータを送受信するという考えは昔からありました。

 例えば、電力線や無線を利用して、家庭内の機器をコントロールする「エコーネット(ECHONET)」という規格が、日本の電気メーカーや電力会社によって提唱されました。しかし500kHz以下の周波数帯を使うこの規格は、通信速度がたった9600bpsしか出ませんでした。家電の故障チェックや電源のオンオフなどの制御には利用可能ですが、大量のデータをやりとりするインターネット通信には向いていません。

 また2000〜2001年にかけては、ラストワンマイルの問題を改善するためにPLCの技術が注目されました。当時はADSL技術によって、家庭内に高速なネットワークの導入が行われていました。そこでADSLに対して後れを取っていた光ファイバー接続を、住宅・事務所に導入するためにPLCに期待の目が向けられたのです。

 当時は電波法による規制があり、10〜450kHzの帯域しか使えませんでした。周波数が低いのでデータをたくさん載せることは難しく(=接続スピードが遅い)、しかもこの帯域はとてもノイズを受けやすいのも事実でした。

 さらに、PLCモデムも大きくコストも掛かるため、実用化には「数年後の2002〜2003年ごろになるのでは?」といわれつつも、表舞台から姿をいったん消したのでした(参照記事:電力線というありモノでLAN構築!の現在過去未来)。

●総務省の法改正で一気にブレイク!

 人々の記憶から消えかけたPLCですが、2005年から総務省がPLCに関する研究会を開催し、2006年には電波法施行規則の一部を改正。結果、PLCでは10kHzから450kHzしか利用できなかった帯域を、屋内に限り2MHzから30MHzの帯域で利用できるようにしました。

 この法改正によって、大量のデータが載せられない・ノイズに弱いといったPLCの帯域問題が、メーカー側にとっては解決したことになります。

 当時はラストワンマイル問題を解決する手段と考えられたPLCは、家庭・事務所内のLANを構築するための方法として開発され、2006年12月9日に松下電器産業から、日本初の家庭用向けのPLCモデムが発売されました。

 非常に簡単にLANが構築できると話題のPLCですが、さまざまなトラブルや問題点でも注目されています。次ページでは、それらについて紹介します。

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