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» 2007年03月20日 00時00分 UPDATE

転職失敗・成功の分かれ道(28):これが資格の意外な活用法

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

[深野誠之,テクノブレーン]

 テクノブレーンのキャリアコンサルタントの深野です。今回は、資格の効果についてお伝えしたいと思います。

 3月は年度末の企業が多く、個人として新年度に向けた目標設定を考えている方も多いのではないでしょうか。

 ここ数年、ITエンジニアの転職市場は活況が続いています。ここは自身のキャリアを視覚化する意味合いでも、資格取得を目標に加えてみてはいかがでしょうか。

3次請けのSIerでAさんが苦しんだこと

 Aさんは、ある3次請けのシステムインテグレータ(SIer)に勤めていました。希望を持ってIT業界に入り、最先端の技術を身に付けていきたいと思っていたAさんですが、配属された先は客先に常駐する形での業務で、研修だけでなくOJT(On the Job Training)も不十分な環境でエンジニア人生がスタートしたのです。

 何よりもAさんを苦しめたのは、周囲の人のモチベーションの低さでした。「いわれたことをやっていればいい」「別に新しいことにチャレンジしなくても、給与は変わらないのだからいまのままでいい」「資格は簡単に取れるものだけ取ればいい」と、残念なことに技術力の向上やスキルアップに消極的な同僚が多かったのです。

データベースの勉強を独学で開始

 配属されたプロジェクトでのAさんの中心的な業務は、Javaの業務アプリケーションのプログラミングを行うことでした。Aさんはメキメキとプログラミングスキルを上げ、プロジェクト内でも一目置かれる存在となっていきました。しかし、Aさんはずっと考えていました。「このままで社外に通用するのだろうか?」。そこで、Aさんは「データベースはITスキルの基礎である」という思いから、データベースの勉強を始めました。

 業務でかかわっていない分野について勉強し、マスターすることはとても大変なことです。「まずは、データベースに実際に触ってみよう」と考えて、サーバ用のコンピュータ、アプリケーション、Oracle DBまで自費で購入したのです。

 そして書籍やさまざまなWebサイトを見ながら、見よう見まねでデータベースをインストールしたり、サンプルアプリケーションを作ったりと、業務で疲れて帰ってきても欠かさずに勉強を続けました。しばらくしてORACLE MASTERを受験し、一発で合格しました。

UNIXやUMLなどのスキルも身に付け転職

 Aさんの勉強は、データベースにとどまらず、UNIXやUMLなど、Javaをコアにしつつ、そこに関連するスキルを学び、関連する資格を取得していったのです。

 私がAさんにお会いしたのは、そんなときでした。転職を希望されたのです。はっきりというと業務知識はさほどではありませんでした。しかし、群を抜く開発技術力と素直な人柄、何よりも向上心の強さが評価され、希望の元請けのSIerへの入社が決まりました。

 入社後、しばらくしてからAさんにお会いしました。入社直後から残業続きのハードなプロジェクトに配属されたとのことでした。いままでが生ぬるい環境だっただけに、「大変だけどとても勉強になり、いい経験ができました」とのコメントをいただきました。「社内には以前のプロジェクトではいなかったような『ものすごい人』が何人かいて、そのテクニックやスキルなどを盗みながら頑張っています」と笑顔で話してくれました。

何でもこなしていたBさん

 BさんはWebサイトの構築やデータ配信をしている企業に勤めています。ネットワーク運用や新規サービス立ち上げに伴うサーバ構築を担当しています。Bさんが入社したときに同じ業務を担当していた先輩は2年前に退職し、以来Bさん1人がその会社のインフラのほぼすべてを管理してきました。

 Bさんは新サービス導入に伴う機器やソフトウェアの選定からインストール、設定、事前検証、運用後のトラブルシューティングまで行っていましたが、業務が忙しかったこともあり、資格は1つも取っていませんでした。業務上で発生した問題は、Webの検索などを駆使して解決方法を見つけて対応してきました。そして、自社のシステム環境をよく把握できるようになってきて、Bさんは大規模なシステム構築に挑戦したいと思うようになりました。

転職活動開始。だが……

 転職活動を始めたBさん。マネジメント経験こそなかったものの、書類審査の通過率は決して悪くありません。しかし、面接以降、なかなか内定まで行き着けませんでした。「何が問題なのか……」。面接でNGとなった理由を人事の方に伺うと、「技術力が足りない」ということでした。キーワードだけを見ていると、Bさんのスキルは魅力的なのですが、具体的なケースについて質問をすると局所的な知識しかなく、スキルが足りないと判断されてしまうのでした。

 Bさんのような方に、資格の勉強はとても効果的です。業務だけでは偏りがちな知識も、資格の勉強をすることで全体的な知識や仕組みの理解を深めることができます。概論が分かってくると応用力が付いてきます。実際、勉強を進めていく中で「なるほど、そうだったのか」と気付くことも多く、業務にも自信が持てるようになりました。一度は転職に失敗したBさんですが、リベンジに向けて現在着々と準備中です。

資格は役に立たない、ではない

 資格は技術を証明するだけのものではないことがお分かりいただけたでしょうか。多くのITエンジニアにお会いしていると、「資格を持っていても役に立たない」とおっしゃる方が少なからずいらっしゃいます。

 果たしてそうでしょうか。資格取得に向け勉強することで、その技術の全体像の理解を深めると同時に、技術に関する応用力も養うことができます。また、資格は営業力にもつながります。ITエンジニアだと実感することが少ないかもしれませんが、ITの専門家ではない顧客にとっては、資格もベンダ選定の大きな判断基準となります。

 確かに資格は転職の決め手にはなりません。しかし、ほかの候補者と比べられるときにはアドバンテージになります。資格といってバカにせず、余裕があるうちに前向きにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

著者紹介

深野誠之(テクノブレーン

1975年生まれ。システムインテグレータに入社し、金融系のシステムエンジニアを5年経験。その後カナダにて英語学校のカウンセラーとなる。帰国後にテクノブレーンへ入社してキャリアカウンセラーへ。自身の経験を強みに、エンジニアの夢と苦悩を共有し合えるキャリアカウンセラーを目指しているという。



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